代用品を超えた?マメ科植物キャロブで作るチョコでカカオ危機を乗り越える!
Italy[Bari]
2024.06.17
text by Sayaka Miyamoto / photographs by Freecao
(写真)スタートしたばかりのフォーエバーランドでは、試験的に様々な商品にトライしている。写真はクリスマス限定で提案したプラリネ、タブレットなど。価格は1個1ユーロ程度。
世界的なカカオの高騰がイタリアのチョコレート業界を震撼させている。イタリアの製菓業界専門ウェブサイト「ドルチェサラート(DOLCESALATO)」によれば、2024年、イタリアで販売されたイースターエッグは、昨年比24%も値上がりした*。世界のカカオ生産量の約75%を占める西アフリカ地域で起きた大雨などの異常気象と、それに伴う農地のダメージや病気の発生などによる収穫量の激減が影響しているという。
そんな中、プーリア州バーリのスタートアップ「フォーエバーランド(FOREVERLAND)」社が、従来のチョコレートの品質に劣ることなく、かつ持続可能性の高い「フリーカオ(Freecao)」を発表した。
原材料は地中海原産のマメ科植物キャロブ。昔から南イタリアで大量に生産されてきたキャロブは、風味が似ているところからチョコレートの代用品として使われてきた歴史も持つ。とはいえキャロブのほとんどは、その種からローカストビーンガム(食品増粘剤やゲル化剤)が生産され、果実の90%は廃棄されてきたというのが現実だ。そんなキャロブの果実を活用して、フォーエバーランド独自の技術を加えて作られたフリーカオ。チョコレートの代用品という位置づけを超えたそのクオリティは、従来のチョコレートと置き換えも可能であると、ネスレなどチョコレートを扱う世界的大企業やショコラティエたちからお墨付きも得た。
しかもキャロブは、その持続可能性の高さからも注目を浴びている。旱魃にも強く、灌漑の必要がないから、環境に与える負荷をとても小さくできるのだ。カカオに比べ、生産過程で排出されるCO2は80%、水の使用は90%削減が可能だ。その上、キャロブ自体が糖分を多く含んでいるため、フリーカオは一般的なチョコレートに比べて砂糖の使用を50%まで抑えることができ、へルシーという点でも可能性を秘めている。
カカオの生産を巡っては、環境に与える影響や持続可能性の低さ、森林破壊などの問題がかつてから議論されてきた。児童労働の問題も未だ解決しない。フリーカオは、チョコレートに関わる様々な問題をクリアし、新しいスイーツの世界を開いてくれそうだ。
*「DOLCESALATO」2024年3月22日公開より
CRISI DEL CIOCCOLATO: L’AUMENTO DEI PREZZI RENDE LA PASQUA PIÙ AMARA
◎FOREVERLAND
https://foreverland.it/it
*1ユーロ=170円(2024年6月時点)