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JOURNAL / 世界の食トレンド

売れ残った食材を集め、イベントを企画。女子大学生が始めた活動が週4000人分の食材を救う

Italy [Roma]

2024.09.12

売れ残った食材を集め、イベントを企画。女子大学生が始めた活動が週4000人分の食材を救う

text by Mika Hisatani
(写真)市場で売れ残った食材を集める参加者たち。パンデミック時期に大きく成長したRECUP協会は、スタッフにも参加者にも若者が多い。レクリエーションのように楽しみながら行う活動は出会いと交流の場でもある。

なんらかの理由で売れ残った食材を集め、フードロス対策と社会的排除の変革活動を行うRECUP協会。2016年に当時25歳の女子大学生がミラノで設立し、その後、ローマにも支部を開設した。両都市の公設市場から、商品価値のなくなった食材を300名近くの参加者と共に収集する。加盟マーケットはミラノで10軒、ローマで9軒。市場から、皮に傷が付いた野菜や熟しすぎた果実、硬くなったパンなど1週間で約11トンを回収する。毎週約4000人分の食料を確保できるという。


RECUPの活動には青果店も協力。「これを持って行きな!」とまだ販売できる野菜や果物を寄付してくれるという。
(写真)RECUPの活動には青果店も協力。「これを持って行きな!」とまだ販売できる野菜や果物を寄付してくれるという。

参加者数、収集食材数ともに成長し続けている同協会の人気の秘訣は、イベントプランナー的な視点でプロジェクトを展開しているところだ。社会課題に取り組む活動であっても、まずはエンターテインメント的に楽しめることにピントを当てている。

例えばスローフード協会と共に開催したイベント「ディスコ・スープ」では、みんなで集めた食材を使って料理し、クラブのような会場で、踊りながらわいわい食事を共にするというもの。2023年にはローマのFAO国際連合食糧農業機関本部で開催された「WFF世界食糧フォーラム」のイベントに招致され、DJブースを設置したホールで、世界中から集まった20代の参加者たちが廃棄食材で作った料理をティスティングした。

もうひとつのイベント「ジャンク・フード~これほどヘルシーなジャンク・フードはない」は、市場の非売食材を調理し、みんなで味わうソーシャルディナーパーティだ。参加者はSNSで募る。誰もがジョインでき、100人近くが集まる。

同協会と共に活動をする料理家アリス・アダムスさんのクッキングスタジオ
(写真)同協会と共に活動をする料理家アリス・アダムスさんのクッキングスタジオでは、みんなで収集した野菜が見事なタルトに変貌。本来なら廃棄されていたはずのブロッコリーやカーボロネロのおいしさに、取り合いになるほど。参加者たちはイベントを通じて、社会的価値が、この一品をおいしくさせていることを体感する。

同協会のコーディネーター、フェデリコ・ヴァレンティーニ氏は「金銭的な価値がなくなった食材でも、社会的な価値は残っている」と話す。
「社会課題の解決の糸口は、そこから新たな“ワクワク”を生み出すことができるかどうかに連動しています。まずは楽しめるかどうか。それが大事ですね」

フードロス対策を通じた社会的・環境的コミットメントを実現するためのプロジェクトは個人から企業へも広がり、CSRの取り組みとして50社がRECUPの食材収集にタイアップしている。


街路樹の果物を収穫するワークショップ「アーバン・フルーツ(FRUTTA URBANA)」
(写真)最近では公設市場から町へと活動範囲を広げ、レモンやオレンジなど、放置されている街路樹の果物を収穫するワークショップ「アーバン・フルーツ(FRUTTA URBANA)」も始めた。photographs by RECUP

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