成功はよい働き方から。ストレスフリーの職場で競争に勝つ、新世代オーナーシェフの店
Italy [Roma]
2025.12.22
text by Mika Hisatani
イタリア最高のレストランの一つとなった「ズィア・レストラン」は、オーバーツーリズムに悩むローマのど真ん中に位置するトラステヴェレ地区に店を構える。ローマっ子たちやや足が遠のきがちなエリアだが、常連客を失うどころか、若い層の地元客が通う店としても特別な存在感を放っている。
2025年10月にローマで行われた『ガンベロロッソイタリアレストランガイド2026』の授賞式。ひときわ注目を浴びたのがローマの「ズィア・レストラン(Zia Restaurant)」だ。最高評価となる3本のフォークマーク「トレ・フォルケッテ」を初めて獲得し、イタリアを代表する巨匠シェフたちと共に壇上で肩を並べたのは、彼らより二回りも若いシェフ、アントニオ・ズィアントーニ。その快挙は、驚きとともにSNSを瞬く間に駆け巡り、イタリアの美食シーンに新たな風を吹き込んだ。
アントニオ・ズィアントーニはフランスの三ツ星「ジョルジュ・ブラン」をはじめ、ロンドンの「ゴードン・ラムゼイ」など、様々な高級レストランで下積みを重ね、中国やオーストラリアといった海外での経験も積んできた。帰国後、ローマの二ツ星「イル・パリアッチョ」で働いた後、独立。2018年にローマの中心地に自身のレストランをオープンした。
その後、パンデミックが到来し順風満帆とは言えない苦しい時期が続いたが、2020年『ミシュランガイド イタリア2021』で一ツ星を獲得。同時に全国最優秀若手シェフにも選ばれた。2021年には、OAD(Opinionated About Dining:世界の料理レビュアーによる評価を統合したレストランランキング)による「ヨーロッパ・レストラン・トップ150」に選出されるなど数々の賞を手にしてきた。
季節ごとに常連客を魅了するコンテンポラリーメニューに加え、この店の成功の秘訣は「自分たちなりに築き上げてきた持続可能な働き方」だという。ズィアでは週2日の完全休業日を設け、ランチ営業は土曜のみ。「精神的、肉体的、社会的に満たされていれば、お客様によい対応ができますし、そのことが組織にも利益をもたらします。何よりも働く人が人間らしく、よりよい人生が送れるということが大切」と語る。
優秀な人材の確保がますます難しくなり、従業員が高いモチベーションをもって働ける環境を整えることは、もはや避けて通れない最重要課題となっているイタリアの飲食業界。“おいしい料理を提供する店”だけでなく、“人が集い、人が育つレストラン”へのズィアの成功は、新たな強い店の指針となった。
「ストレスのある職場からは本当の競争力は生まれません。そのためにもストレスフリーな労働環境を心がけています。ストレスをためることなく競争に勝つことは可能なのです」
◎Zia Restaurant
Via Goffredo Mameli 45. 00153 Roma
https://ziarestaurant.com/it/