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JOURNAL / 世界の食トレンド

物価高騰が後押しに?家庭菜園に取り組む若者が増加中

Norway [Oslo]

2023.07.13

物価高騰が後押しに?家庭菜園に取り組む若者が増加中

text & photographs by Asaki Abumi, Geitmyra Culinary Center for Children

自分で作物を育てることなど、ノルウェーでは20年前ならテーマにすらならなかっただろう。だが、物価高騰が市民の考え方を変えつつある。

ノルウェー公共局によると、コロナ禍で外出自粛など政府の行動規制が厳しくなってから、花などの種の売り上げは70%増加*。自分で栽培することを意味する言葉“ディルク・セルブ(dyrk selv)”は、今ではニュースの見出しでも頻繁に見かけるようになった。

子どもや若者を対象とした食育活動をする「ゲイトムラ食品文化センター」では、子どもがいる家族や保育園向けに自家栽培教室を開催している。ここ数年でノルウェー人のディルク・セルブ意識は明らかに高まっていると話すのは、同センターのモナ・エクさんだ。花からハーブ、野菜まで人々の関心は高い。
「パンデミックで時間ができた市民が家庭菜園に関心を持ち、栽培教室は大人気です。自分の手で、心を込めて育てるからこそ価値が生まれ、栽培することで自分のための時間も生まれます」


(写真)栽培教室の様子。若い世代は保育園や学校で環境の勉強をしてきたので、気候変動への意識が高く、家庭菜園に関心を持つのは自然な流れ。

(写真)栽培教室の様子。若い世代は保育園や学校で環境の勉強をしてきたので、気候変動への意識が高く、家庭菜園に関心を持つのは自然な流れ。

モナさんは、若い世代に“育て方を学びたい”という意識が高まっているとも語る。
「2023年5月には若者向けガーデナー(庭師)養成講座を12枠募集したのですが、100人以上の応募が殺到して驚きました」

首都オスロの住宅街を歩いていると、アパートや近所の若い住民が空き地で野菜を共同栽培する光景も見かけるようになった。
「物価が高騰している背景もあるのでしょうが、都市に住む若者の意識の変化には、環境保全に貢献したい、自分の健康のため、なにより食を楽しみたいという思いがあるからだと思います」
ディルク・セルブはトレンドからカルチャーへと変わりつつあるのかもしれない。

*ノルウェー公共局の記事より

(写真トップ)オスロの住宅街で急増しているのが、近所の住人たちで育てる共同菜園。木製プランターをカラフルに塗っていることもある。



◎Geitmyra Culinary Center for Children
https://www.geitmyra.no/

*1ノルウェー・クローネ=13.4円(2023年6月時点)

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