Spain [Madrid]
ハモン切りもエンターテインメントに。コルタドール界に風雲児登場
2022.07.14
text by Yuki Kobayashi / photograph by Santi Veiga
おいしい刺身に必要なのはよく研いだ刃物だけではない。魚を熟知した職人が切る刺身には、歴然とした違いがある。それはハモン(生ハム)も同様だ。今やイベントや結婚式には欠かせないハモン切り職人“コルタドール”が、独立した職業になってきたのはつい最近のこと。なんでもビジュアル優先の昨今、コルタドール業界も大きく変わろうとしている。
最近メディアを賑わせているのが、コルタドールのエミリオ・ガルシア・オルティゴサ(Emilio J. García Ortigosa)だ。彼の最強の武器は、日本の職人の手によるナイフ「アメツバメ(AMETSUBAME)」。両親が経営するハモン店やバルで、若い頃からハモンを「毎日3〜4本、年間1300本は切っていた」という彼は、研鑽を重ね、筋肉の流れを理解し、肉質に合わせて30種類もの切り方を編み出した。
その技を伝えるべく、今では自らのスクールも開催。鋭く研いだ刃で、厚みの違いはもちろんのこと、刃を入れる断面の見極め、脂を行き渡らせるための刃の動き、筋肉の筋や質を計算に入れて切り出すので、テクスチャーも思いのままだ。
様々な武道の経験、刀への強い愛着、独自のハモン美学を築き上げた今、彼のハモン切りはひとつの儀式、ハモン・エクスペリエンスに昇華した。2022年秋には著書『ハモン解剖学』を上梓予定。欧州、ドバイ、メキシコ、中国などをイベントで歴訪し、次の目標は刀の国、日本だと、エンターテインメントに変容したハモン切り職人の夢は大きい。
(トップ写真)主にVIPや有名ブランドなどのイベントで活躍するエミリオ。彼のハモンに対する知識とこだわりと美学が、コルタドールという職業の認識を高めている。
◎Emilio J. García Ortigosa
https://garciaortigosa.es/