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JOURNAL / 世界の食トレンド

美食の聖地サン・セバスチャンに誕生する、ガストロノミーの未来を担う新拠点

Spain [San Sebastián]

2023.12.04

text by Yuki Kobayashi
(写真トップ)新施設「ガストロノミー・オープン・エコシステム(GOe)」は、北欧を始めアメリカ、シンガポールなどに国際的プロジェクトを展開してきたビャルケ・インゲレス率いるBIG建築事務所が手掛ける設計。自然環境との共存関係を探る好例で、海岸から200mほどの位置になる。

2020年、パンデミックで美食の街サン・セバスチャンにあれほど走った震撼も不安も、今となっては嘘のようだ。観光客は増加し、市はホテル建設ライセンス発行を中止してオーバーツーリズム対策に出る一方で、街はさらなる変化を遂げようとしている。


現在サン・セバスチャンでは、街のガストロノミーの新たな拠点となる「バスク・キュリナリー・センター(BCC)」の新施設、「ガストロノミー・オープン・エコシステム(GOe)」の建設準備が着々と進んでいる。2023年11月施工のこの施設は、BCCが「知見と科学を集約したガストロノミーの未来を担う」スペースになると、意気揚々だ。

現在BCCが運営する市内施設は2拠点。市内南東部アイエテ・ミラモン地区にある、教育施設としてのBCCと、最も古い地区の一つエヒア地区にある旧タバコ工場を改築した、ガストロノミーの専門技術研究機関BCC Innovationが主導するスペース「ラべ(LABe)」だ。

BCCのテクノロジーセンターの役割を果たすLABeでは、セクターのDXを加速させるべく研究を進めているが、建物内で運営するレストランのビックデータを基に、食まわりのデジタル関連研究の実装・研究もしている。

3つ目の拠点となるGOeは、料理人、研究者、専門家、スタートアップを準備する起業家など食関連のプレイヤー達が集まり、食が直面する課題解決のためのエコシステムとなる施設を目指す。2030年までに170の企業や研究者、起業家、専門家を集めて、少なくとも30の食関連のスタートアップをここから起業させるだけでなく、食関連の修士課程学生も、世界中から300名ほど迎える計画だ。

(写真)建築材やエネルギー効率など全てにおいてサステナビリティを求めたデザイン。

GOeの完成は2025年4月予定で、市の建設許可はすでに出ているが、建設予定地のグロス地区、ウリア地区はこれまで観光客の喧騒から比較的守られてきたこともあり、近隣住民から、地区に唯一ある緑地帯を潰すことになると反対意見が挙がっている。設計はNYの都市計画などの参加経験があるデンマーク出身のビャルケ・インゲレス。完成すれば、サン・セバスチャンの街の風景が、またひとつ変わることになる。

(写真)建設にあたり周囲の街路樹の一部が伐採されるともいわれるが、完成後は緑地スペースも含む。



◎BASQUE CULINARY CENTER
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