シェリーを飲み慣れたスペイン人の味覚に「古酒」で切り込む日本酒インポーター
Spain [Jerez de la Frontera]
2024.11.18
text by Yuki Kobayashi
(写真)日本酒をスペインに輸入するサルビオーニ・アロマール社CEOのパブロ・アロマール氏。
多様な日本酒がスペインに輸入されるようになってから、15年ほどの月日が経つ。それまではカップ酒やパック酒のようなレベルでしか知られておらず、日本酒には“まずい”というイメージすら付いていたが、フェラン・アドリアが日本の食材に注目し始めたのをきっかけに少しずつ銘柄酒の輸入が増え、「獺祭」や「真澄」の大ブレイクを経て、スペインでの日本酒の認知度は急激に高まっている。そして今、注目を集めているのが日本酒の“古酒”だ。
2024年5月、アンダルシア州カディス県ヘレス市で行われた「ビノブレ(VINOBLE:甘口ワインや酒精強化ワインに特化した国際的展示会)」で、シェリーと日本酒を同時にプロモーションするイベントが開催。その成功を担った日本酒輸入業サルビオーニ・アロマール(SALVIONI-Alomar)社のパブロ氏は言う。
「スペインでの獺祭ブームは、飲みやすさ、エレガントさ、価格帯もいくつか選べるのがポイントでした。私は常々、日本酒の古酒がシェリーに似ていると指摘してきましたが、大吟醸の味わいにまだ慣れていないスペイン人の味覚も、シェリーによく似た古酒ならいけると確信していた。5月のイベントは、シェリーとの類似性を知ってもらうことで、日本酒をより親しみ深く感じてもらう企画でした」
石川県・吉田酒造の「手取川」94年ものの古酒を、この数年で約1000本売り上げたパブロ氏。
「ワインのようにヴィンテージがあるのも古酒の魅力の一つです。古酒だからといって必ずしもおいしいわけではありませんが、ワイン同様、“何年物”という響きは西洋人には魅力的」と語る。
今やスペインの三ツ星店のペアリングコースに、日本酒の古酒はプレミアムなSAKEとして組み込まれることも。
「日本酒は素材と喧嘩しない飲み物」と彼は言うが、スペインで高い古酒が売れる背景には、コロナ以降スペインに移住してきた南米富裕層の増加もある。
テキーラやピスコサワーなどを飲み慣れた南米人の舌に、ワインのタンニンや酸味は苦手と感じられる。スムースな飲み口の日本酒は南米人の舌に親しみやすく、ベネズエラ移民の富裕層は値段が高いものほどいいという感覚で購入するのだとか。
日本酒を海外で販売するとなると、オーセンティックであることを打ち出す酒蔵も多い中、スペインマーケットの日本酒は、シェリーと共同プロモーションをすることで、さらなる活路を見出している。
◎Salvioni Alomar
https://www.salvioni-alomar.com/
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