マドリードから新星登場。伝統とフュージョンのバランスを探る新店「OSA」
Spain [Madrid]
2024.07.18
text by Yuki Kobayashi
(写真)シェフのサラ・ペラル(左)とホルヘ・ムニョス。「ムガリッツ」で出会った2人は、それぞれマドリードの「コケ」、「ディベルショ」、「タスキータ・デ・エンフレンテ」など、名店での経験を積んできた。コケモモと熊はマドリード州の紋章。地元へのオマージュと厨房の女性へのオマージュを含めて店名を「オサ(OSA:メス熊の意)」とした。
2024年1月に開かれた料理学会「マドリード・フュージョン」で、最優秀若手料理人賞に選ばれたサラ・ペラルとホルヘ・ムニョス。マドリード市内を巡るマンサナレス川沿いにある彼らのレストララン「オサ(OSA)」が話題だ。23年の開店前からフーディや業界通の間で期待感が高まっていたのは、2人のキャリアはもちろんのこと、SNSでの周到な展開方法にも秘密があったかもしれない。
メニューには「SUKIBIKI(梳き引き=鱗の取り方)」「TSUME(うなぎの詰め=タレ)」「SAKEKASU(酒粕)」などといった日本語がいくつも並ぶ。シェフ両者とも、訪日も、日本料理店での経験もないが、「日本料理のシンプルさ、エレガンス、ハーモニー」に傾倒しつつも、スペインの伝統料理とフュージョンさせることには戸惑いがない。
独自のスタイルを持ちつつも、伝統の“母の味”を求めていると言う2人。魚の鱗のような美しい羽毛を持つ赤シャコ、マス、イノシシをはじめとするジビエなど地元素材も豊富に扱う。レストランには熟成室も備え、黒い鶏のバロティーヌ(筒状の詰め物)、イノシシの頭を使ったハム、ピスタチオとハーブでマーブル模様にしたパンチェッタなど、シャルキュトリーの扱い方も若い世代とは思えないこだわり方だ。肉加工品はスペインの定番の前菜だが、デグスタシオンメニューはまず手の込んだシャルキュトリーをつまむことで、まるで誰かの家に呼ばれたような親近感を演出する。
レストランエリアとは言い難い、マンサナレス川沿いの一軒家に構えたレストランは最大で26名収容。果敢にも、週末は土曜から日曜終日、月曜昼まで休業する。長く良いチームを保つためには、個々人の生活との両立が必須でサステナビリティはそこからだとシェフは考える。
開店1年足らずでミシェラン一ツ星を獲得。独自のスタイルを醸し出す2人のシェフの今後が楽しみだ。
◎OSA
Calle de la Ribera del Manzanares, 123
28008, Madrid, Madrid
火曜〜金曜 昼13:45〜、14:30〜 夜20:45〜、21:30〜
月曜 20:45〜、21:30〜
土曜、日曜、月曜昼休
デグスタシオンメニュー 150ユーロ、180ユーロ
https://osarestaurante.com/
*1ユーロ=170円(2024年6月時点)