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JOURNAL / 世界の食トレンド

将来のキャビアの価格に影響が?養殖コスト削減につながるチョウザメ雌雄判別技術

Spain [Basque]

2025.09.25

将来のキャビアの価格に影響が?養殖コスト削減につながるチョウザメ雌雄判別技術

text by Yuki Kobayashi
17世紀のセルバンテス著『ドン・キホーテ』でも記されるほど、昔から希少な食材として認識されているキャビア。スペイン国内ではリオフリオ社を始め、国内の養殖業数社が年間2~3トンの生産量を誇る。

魚類では、生まれた時から雌雄が別れているものが大半だが、メスからオスに性転換する雌性先熟や、その逆でオスからメスに性転換する雄性先熟、果ては雌雄同体の類もいる。チョウザメの場合は、生まれた時から雌雄が別れているものの、見分けるのは至難の技。すべての個体はそれぞれに特徴があり、幼魚では色や形、性器の識別すらも困難だ。

これまでチョウザメの養殖では、生れてから8~9年経ってから、エコーで卵巣の有無を確かめていたが、2025年、バスク州の海洋研究機構であるアスティ(AZTI)が、チョウザメの雌雄を2〜3年で判別する方法を開発した。この技術では、チョウザメの小さな組織または血を採取し、PCR法を用いて特定の性別関連遺伝子マーカーを解析する。グラナダの清流を利用して、90年代からチョウザメのエコロジー養殖をしているリオフリオ(Riofrio)社の協力の下、判別技術の実用化に向けての実験・調査が進められている。

飼育期間が半分以下になれば、養殖コストは大幅に削減できるとあって、業界は期待感に満ちている。今後、この技術の応用で、高級食材の王者でもあるキャビアの値段が下がるかどうか見極めたい。

技術センター
アスティはバスク州の海洋・食品関連の研究開発を専門にする技術センター。国内外の企業や機関との共同開発や商品開発で先端技術を作り出している。

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