ベトナムの新潮流。プラントベースの鍋料理を分かち合うレストラン
Vietnam [Ho Chi Minh City]
2023.10.12
text by Rie Suzuki
(写真トップ)「パッションフルーツ鍋」(470,000ドン)。パッションフルーツやアーティチョークを煮込んだだしを使った色鮮やかな鍋。
経済発展を続けるベトナムでは、コロナ禍を経て多くの人が外食を楽しむようになった。2023年夏にはベトナム初のミシュランガイドが発行され、ホーチミンとハノイの両都市を合わせて、一ツ星4軒、ミシュランセレクト70軒、ビブグルマン29軒が誕生した。中でも人気は、地元の新鮮な野菜や果物を使用したベジタリアンレストラン。マインドフルネスにフォーカスを当て、上質な食材を身体に摂り入れ、心身の健康を育むことを提案した店作りだ。
南部ホーチミン市中心部の喧騒を抜け、欧米人が多数暮らすエリアに立地する「フム(Hum)」では、宗教的な目的で精進料理を提供するのではなく、野菜、豆類、穀物、果物などのナチュラルなおいしさを伝えることを第一義に、失われつつある伝統食材にも光を当てる。
一年を通して気温と湿度が高い土地ながら、多くの地元客がオーダーするのは鍋料理だ。
「鍋は、ベトナム文化に広く浸透している“分かち合いの精神”を体現しています。様々な食材を、時間をかけて煮込んだ鍋は、滋養強壮に役立つ栄養満点の一品。緑黄色野菜を豊富に摂取し、健康を促進するでしょう」とHumチームは言う。
ベトナム料理の鍋は、野菜やハーブ、果物からだしを取り、甘味、酸味、苦味、辛味、爽やかな香りを楽しむ。例えば、「グリーンゼリーとレモンバジルの葉の鍋 Humスタイル」では、グリーンゼリー*、レモンバジル、ハヤト瓜を煮込んだだしで、ピンク平茸など多種のキノコを味わい、米粉の麺にだしをかけて〆る。
伝統の食材や食文化を、各自が思い思いに楽しむことが、ベトナムの新潮流と言えるかもしれない。
*スオンサムという植物から作る緑色のゼリー。一般的にはデザートとして提供される。
◎Hum, Garden & Restaurant
32, St.D10, W.Thao Dien, D.2, HCMC
☎+89-899-189-229
10:00~22:00 無休
この他、ホーチミンの街の中心地に「Café & Restaurant」や「Lounge & Restaurant」がある。
https://la-hum.vn
*1000ドン=6円(2023年9月時点)