気鋭の料理人と日本人ソムリエがタッグを組む自然派ワインビストロ「ルア」に注目!
Vietnam [Ho Chi Minh City]
2024.09.02
text by Rie Suzuki
(写真)見事な風味や香り、色彩、食感があるベトナム食材を驚きのあるメニューに。「グァバのグリル ストラッチャテッラ、アンチョビー、カシューナッツ、グリーンサラダ添え」(35万ベトナムドン)。
「ルア(Lửa)」は、まるで南仏の街の一角に佇むようなビストロ。日本人のルーツを持つオーナーシェフ、マーク・シンモリ氏と日本人ソムリエ山本遊氏がタッグを組み、2022年にオープンした。ホーチミン市内の喧騒を抜け、ブーゲンビリアが色鮮やかに咲き誇る欧米人が多く暮らすエリア、タオディエンに立地し、元は麺料理店だったという瀟洒な洋館は、店内をキッチンに改装し、客席はすべて屋外に設えた。開放的な空間で柔らかな照明と心地よい熱風に包まれ、ディナーを楽しむことができる。
京都で経験を積んだマーク・シンモリ氏は、地元の食材を丁寧な仕事で驚きのあるメニューに仕立てる。ベトナム食材は伝統的なレシピで食べるのが一般的だが、「食材に新たな価値を見出し発信していきたい」とシェフ。たとえば、店の庭で採れるジャックフルーツは、ベニエにして甘く滑らかな食感に。一般にはフルーツとしてそのまま食すグァバは、グリルして爽やかな甘酸っぱさを際立たせる。
スペシャリテは豚肉料理。北部の契約農家で育てられた140㎏の豚を、毎月2匹取り寄せ、頭から尻尾まで余すことなく使い切る。シャルキュトリーも自家製で、2階に設えた熟成室で、長いものは6カ月間熟成させる。
ワインの品揃えにも定評がある。2023年版『ミシュランガイド ハノイ・ホーチミン』でベトナム初の「ソムリエアワード」を受賞した山本氏。日本ではグランメゾンをはじめ15年ほどソムリエとしての経験を重ねながら、旅で訪れた英国などで知見を深め、ワイン業界が飽和状態の日本から海外へ出ることを考えるようになった。昨今ベトナムでワインブームが沸き起こる中、ポジティブにワインを楽しむお客で日々賑わう光景にやりがいを感じるという。
フランスを旧宗主国にもつベトナムには、多くのフォーマルなフランス料理店がある。一方で、ベトナム文化の“分かち合いの精神”は、ルアのビストロスタイルにマッチ。お客は料理をシェアしながらワインと食事を楽しんでいる。
「お客と地元の生産者やインポーターなどと共に、ダイナミックに変貌するベトナムで私たちも試行錯誤しながら成長したい」と話す山本氏。手頃ながらベトナムでも稀少なワインを取り揃え、料理との新たなマリアージュを提案するほか、近々、市内近郊に養豚場を作る予定だという。今後もルアの発信に目が離せない。
◎Lửa
2 Street No.11, Thao Dien Ward, Ho Chi Minh City
☎+84-93-222-9324
18:00〜23:00 日曜、祝日休
https://luawinebarvn.com/
*1ベトナムドン=0.0062円(2024年8月時点)
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