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PEOPLE / 食の世界のスペシャリスト

76歳。「釣れたばかりのビリビリのカツオを、ニンニクで食べるのは最高で」

生涯現役|「ど久礼もん企業組合」川島 昭代司

2023.11.24

text by Kasumi Matsuoka / photographs by Taisuke Tsurui

連載:生涯現役シリーズ

世間では定年と言われる年齢をゆうに過ぎても元気に仕事を続けている食のプロたちを、全国に追うシリーズ「生涯現役」。超高齢社会を豊かに生きるためのヒントを探ります。


川島 昭代司(かわしま・あきよし)
御歳76歳 1947年(昭和22年)2月22日生まれ

高知県中土佐町生まれ。中学卒業後、15歳で漁師の道に入り、カツオ一本釣りの船に乗る。25歳で結婚。28歳の時、釣り上げたマグロが目に直撃する事故を機に、漁師の道を断念。29歳で妻とともにスナックを開店し、地元に愛される店として今も続く。CDデビューした歌手としての活動歴もあり、青柳裕介作の漫画『土佐の一本釣り』が原作となった同名の映画の主題歌を歌った。60歳で「企画・ど久礼もん企業組合」を立ち上げ。組合の名称は、土佐弁の“どくれもん”(素直じゃない人の意味)に、町の名前である久礼(くれ)をかけたネーミング。会長として組合活動を牽引する。

(写真)ラー油を仕込む、川島昭代司さん。地元の味を全国に届けようと2007年に久礼大正町市場の商店主ら4人で企業組合を立ち上げた。組合では、カツオのたたきや加工品などをネットで販売するほか、食堂も切り盛りしている。これら加工品や食堂のメニューなどを考案し、組合の会長として引っ張るのが川島さん。加工品の仕込みは全て一人で行っている。


ラー油は“焦がしのマジック”がモノを言う。

よっしゃ、ここからがラー油作りの最後の工程で見せ場。グラグラに湧いた高温の油を、具材に一気に注ぐきね。油を沸かす鉄鍋は、ラー油作りを始めた16年前から使い続けゆうけんど、まだ現役で使えゆう。存外、底が抜けんもんやにゃあ。

この企業組合を立ち上げたのは、60歳の時。昔、カツオ一本釣りの船に乗りよった時から料理が好きで、コック長の代わりに船でよく食事を作りよった。カツオはだしがよく出るき、カレーとか八宝菜に、肉の代わりに入れてもうまい。そういうカツオの使い方が、組合の商品作りにもいきちゅう。

カツオの焼き節にいろんな味をミックスした「漁師のラー油かつお」は、うちの看板商品。ラー油は“焦がしのマジック”がモノを言う。材料は、カツオの焼き節、タマネギ、生姜、ニンニク、ネギ、これに調味料をいろいろミックスして。味をまろやかにするために甘めの赤ワインも入れるで。油味噌の応用でできた味ながやけど、ご飯はもちろん、豆腐やうどんのトッピングにしたり、鍋のつけダレにしたり、いろんな使い方ができる。

加工品の仕込みは、全部自分一人でやりゆう。組合のみんなは、みんな自分の仕事が他にあるき忙しいき。昼間に暇なのは俺だけよ。仕込みのペースはその時々の注文状況にもよるけんど、仕込むのは大体夜中の2時頃から朝7時半頃までが多いね。8時半頃に、瓶詰め担当のおばちゃんが来るき、その頃には粗熱が取れた状態にしちょきたい。となると必然的に、仕込みが夜中になるというわけ。昼間は存外寝れんき、1〜2時間ぐらい一眠りしたら起きちゅうね。

28歳で漁師をやめた後、妻と一緒に、“大酒飲み”という趣味と実益を兼ねて(笑)、スナックを始めたが。昔は客より早く酔っ払うばあ飲みよったけんど、4年前に股関節の手術をしてから、不思議と飲みたいと思わんなった。だから今は酒は休憩中やけど、タバコは1日2箱吸うで。スナックは夜7時頃から夜中12時頃まで開けちゅうけど、客の入りによっては10時半ばあで閉めることもある。

朝は近所に行きつけのモーニングの店がいくつかあって、外で食べることが多い。コーヒーとパンが定番やね。昼は家で食べたり、うどんとかラーメンを近くで食べたり。夜はスナックの営業前、5時頃に食べる。健康の秘訣?そりゃカツオとニンニクやろ。漁師の友達からもらう、ほんの2〜3時間前に釣れたばかりのビリビリのカツオをニンニクで食べるのは最高で。

元気でおるには、目的があるというのが大事やと思う。これをやらな、あれをやらなと予定や段取りを考えゆううちが華やね。定年もないき、それができる。貧乏性で、何かしよらんと落ち着かんがよ。ただ、果たして俺がやらんなったら、(加工品作りを)どうするかやにゃあ。プライベートブランドとして売りたいという引き合いもあるにはあるき、それもありかもしれんと思いゆう。まあけんど、死ぬまでは自分でやらないかんと思いゆうで。まだまだ道半ばで続けていきたいき、元気でおらないかんね。

看板商品の「漁師のラー油かつお」(¥700・税込)を乗せたご飯。ラー油は、ニンニクの利いた奥行きのある味わい。企業組合のある高知・久礼は、400年以上前から“カツオの一本釣り”が盛んな漁師町。港で水揚げされたばかりの新鮮な魚が並ぶ久礼大正町市場では、とれたての生カツオが食べられる。



毎日続けているもの「ラー油かつお」

◎企画・ど久礼もん組合
高知県高岡郡中土佐町久礼6530
☎088-952-3822
9:00〜17:00
日曜休
JR土讃線土佐久礼駅より徒歩5分

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