古澤千恵さん(ふるさわ・ちえ) アンティークコーディネーター
第1話「表現する仕事」(全5話)
2016.02.01
どこへでも、どこにでも。
「OVUNQUE」は、イタリアのアンティークを販売するオンラインショップです。
1800年代のキャンドルホルダーや、ころんとした手吹きのグラス、とことん肌馴染みの良さそうなリネンカバー、使い込まれた木製の靴型……。
錆びていたり、欠けていたり、ほつれがあったり、色褪せていたり。
その「枯れ」には、長い時を越えてきた物、暮らしの中で日々使われ続けてきた物だけが湛える、力強い美しさがあります。
すべて、古澤千恵さん自らイタリアの骨董市を巡って買い付けてきたものです。
OVUNQUE(オヴンクエ)――どこへでも、どこにでも。
そこには2つの意味を込めています。
古物はどんなふうにでも使えるということ。
1800年代のキャンドルホルダーや、ころんとした手吹きのグラス、とことん肌馴染みの良さそうなリネンカバー、使い込まれた木製の靴型……。
錆びていたり、欠けていたり、ほつれがあったり、色褪せていたり。
その「枯れ」には、長い時を越えてきた物、暮らしの中で日々使われ続けてきた物だけが湛える、力強い美しさがあります。
すべて、古澤千恵さん自らイタリアの骨董市を巡って買い付けてきたものです。
OVUNQUE(オヴンクエ)――どこへでも、どこにでも。
そこには2つの意味を込めています。
古物はどんなふうにでも使えるということ。
そして、この古物たちは誰のもとへも行きますよ、という意味。
古澤さんは自身を、古物にとっての「通過点に過ぎない」と言いますが、単に、仕入れて売る、右から左に流していくわけではありません。
そこに古澤さんらしい「表現」を忍ばせます。
古澤さんは自身を、古物にとっての「通過点に過ぎない」と言いますが、単に、仕入れて売る、右から左に流していくわけではありません。
そこに古澤さんらしい「表現」を忍ばせます。
気配を伝える
「OVUNQUE」のサイトをのぞいてみてください。
商品を紹介する写真は、まるで映画のワンシーンのような、あるいは名画の一部を切り撮ったような佇まい。
静かだけれど、雄弁に伝えてくれるのです。
刻んできた時の長さを、使われていた食卓の風景を、かつての持ち主の体温や息づかいまでも。
だから、特別アンティーク好きでなくても、思わずうっとり眺めてしまう。
一つの商品を撮影するのに、古澤さんはただ漫然とその物だけを撮ることはありません。
空間を作り込み、その気配をシャッターに収めるのです。
「たとえばお皿一枚でも、大理石の上と、木のテーブルの上ではまるで表情が変わります。
そのお皿が一番魅力的に見えるセッティングを考えています」。
商品を紹介する写真は、まるで映画のワンシーンのような、あるいは名画の一部を切り撮ったような佇まい。
静かだけれど、雄弁に伝えてくれるのです。
刻んできた時の長さを、使われていた食卓の風景を、かつての持ち主の体温や息づかいまでも。
だから、特別アンティーク好きでなくても、思わずうっとり眺めてしまう。
一つの商品を撮影するのに、古澤さんはただ漫然とその物だけを撮ることはありません。
空間を作り込み、その気配をシャッターに収めるのです。
「たとえばお皿一枚でも、大理石の上と、木のテーブルの上ではまるで表情が変わります。
そのお皿が一番魅力的に見えるセッティングを考えています」。
実はその写真は、買い手に向けた「ヒント」でもあります。
「古物が好きな方は、“調和”を大切にされることが多いのです。
家の壁や照明、手持ちの家具や器、カトラリーとの相性はどうか。
商品を取り囲む周辺の物を一緒に撮影することで、
購入しても実際に違和感なく使えるか、飾れるかどうか判断していただけます。
逆に商品の全体が見えなくても、一部分にぐっと寄った写真だけの方が
その美しさが伝わる場合がある」。
「古物が好きな方は、“調和”を大切にされることが多いのです。
家の壁や照明、手持ちの家具や器、カトラリーとの相性はどうか。
商品を取り囲む周辺の物を一緒に撮影することで、
購入しても実際に違和感なく使えるか、飾れるかどうか判断していただけます。
逆に商品の全体が見えなくても、一部分にぐっと寄った写真だけの方が
その美しさが伝わる場合がある」。
そして”調和”の世界は、商品を梱包する際も作られます。
包み紙は、チーズやサラミなど本来食品を包むのに使われる紙ですが、ツルツルかザラザラか、商品に合わせて質感を変えています。
納品書は、特注のレターセットに、骨董市で買った古いインクでしたためます。
「ダンボールを開けた瞬間から、より良いイメージを伝えたい」。
包み紙は、チーズやサラミなど本来食品を包むのに使われる紙ですが、ツルツルかザラザラか、商品に合わせて質感を変えています。
納品書は、特注のレターセットに、骨董市で買った古いインクでしたためます。
「ダンボールを開けた瞬間から、より良いイメージを伝えたい」。
伝わる見せ方
古物商でもなく、アンティークショップ・オーナーでもない、“アンティークコーディネーター”という肩書き。
「コーディネートする、そこに自分の存在する価値があるのではないかと思います」と古澤さんは言います。
良い物を探してくる。
それをただ売るだけでなく、さらに魅力的に見せて、売る。
その眼とコーディネートのセンスには、有元葉子さんをはじめとした料理研究家や雑誌編集者のファンも多く、撮影用の貸し出しやスタイリングを行うこともあります。
料理人でありソムリエの夫、一記さんと共に開いたエノガストロノミア(レストラン兼食料品&ワインショップ)「オルトレヴィーノ」では、古澤さんが扱う古物を実際に使い、ショールームとしての役割を果たしています。
自分で店を開きたいという人が、内装の参考に「オルトレヴィーノ」を訪れたり、古澤さんに新たに現地からの調達を依頼することも。
初めからこの仕事を目指していたわけではない古澤さんを、今に導いたのは、いったい何だったのでしょう。
生来の、そして幼い頃から培われた感性を抜きにすることはできないはずです。
しかしその感性の芽を花開かせたのは、10年間のイタリア暮らしでした。
「イタリアって、奥が深い」という発見。
古澤さんがイタリアで何を見て、感じてきたのか。
そしてアンティークコーディネーターという仕事を通じて、何を伝えようとしているのか。
お話を伺いました。
(次の記事へ)
「コーディネートする、そこに自分の存在する価値があるのではないかと思います」と古澤さんは言います。
良い物を探してくる。
それをただ売るだけでなく、さらに魅力的に見せて、売る。
その眼とコーディネートのセンスには、有元葉子さんをはじめとした料理研究家や雑誌編集者のファンも多く、撮影用の貸し出しやスタイリングを行うこともあります。
料理人でありソムリエの夫、一記さんと共に開いたエノガストロノミア(レストラン兼食料品&ワインショップ)「オルトレヴィーノ」では、古澤さんが扱う古物を実際に使い、ショールームとしての役割を果たしています。
自分で店を開きたいという人が、内装の参考に「オルトレヴィーノ」を訪れたり、古澤さんに新たに現地からの調達を依頼することも。
初めからこの仕事を目指していたわけではない古澤さんを、今に導いたのは、いったい何だったのでしょう。
生来の、そして幼い頃から培われた感性を抜きにすることはできないはずです。
しかしその感性の芽を花開かせたのは、10年間のイタリア暮らしでした。
「イタリアって、奥が深い」という発見。
古澤さんがイタリアで何を見て、感じてきたのか。
そしてアンティークコーディネーターという仕事を通じて、何を伝えようとしているのか。
お話を伺いました。
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