大豆の旨味としっかり糸引く粘り「自家製納豆」
【DIYレシピ】「味酒 かむなび」伊戸川浩一さん
2023.12.04
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text by Hisayo Kisanuki / photographs by Jun Kozai
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回は納豆嫌いをも虜にする自家製納豆の作り方。
目次
- ■教えてくれたシェフ:「味酒 かむなび」伊戸川浩一さん
- ■大豆の旨味としっかり糸引く粘り
- ■失敗しない「自家製納豆」の極意
- ■材料と作り方
- ■自家製納豆の展開例「納豆の塩辛」
- ■大阪・谷町六丁目「味酒 かむなび」の店舗情報
教えてくれたシェフ:「味酒 かむなび」伊戸川浩一さん
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1970年神奈川県生まれ、進学をきっかけに大阪へ。2000年~地酒専門の酒販店「山中酒の店」直営の飲食店に勤務。2008年に独立して日本酒に特化した酒場「味酒 かむなび」をオープン。納豆料理は店の看板メニューで、納豆嫌いでも「かむなび」の納豆なら食べられるという客も。2021年に「らくだ坂納豆工房」をオープンし、納豆の製造販売をスタート。
大豆の旨味としっかり糸引く粘り
開店時から納豆やなれずし、三五八漬けや大根すしも作っています。土地ごとの歴史的な積み重ねがあるのが発酵食の魅力です。
おいしい納豆を作るためには、まず味のよい大豆を選ぶこと。今回は青大豆の一種「秘伝豆」ですが、「鶴の子大豆」などの旨味の素となるタンパク質・糖分が豊富な豆がよいでしょう。豆のサイズは、大豆の旨味と納豆の風味がバランスよく発酵しやすい中〜大粒の豆を選びます。大豆を茹でる水の量は、煮汁への味のロスが最小限になるように、茹で上がりのときに焦げつかない程度のギリギリの量にします。
発酵には藁に付着する納豆菌を使います。うちでは山田錦を有機栽培する農家さんの藁で。うまく納豆まで発酵させるためには道具、藁、大豆、この3つが熱々のまま、手早く作業することが肝心です。納豆菌を活性化させつつ、余計な菌は殺菌する。納豆菌は好気性の菌なので蓋は半開きのままで保温をします。
店の納豆は主に調味料的に使います。納豆を味噌と合わせてペーストにし、野菜の煮汁に溶かし入れる納豆汁はだしがなくても旨味がたっぷりです。また、納豆は肉々しい料理の匂いをマスキングします。フォワグラとパテにしたり、鴨ミンチと合わせて松風にもできる。
自家製納豆は日持ちしないので、すぐ食べない場合は冷凍するか、塩辛にして保存を。納豆って個性が強いと思われがちですが、実は旨味、香り、粘りと、素材としては多彩で優秀。多くの食材とも、仲良くしてくれますよ。
失敗しない「自家製納豆」の極意
1. 大豆は指で簡単に潰れるまで柔らかく炊く。
2. 大豆の炊きあがりと藁、容器の煮沸のタイミングを合わせて、温度を下げない。
3. 発酵中は、蓋を半開きにして納豆に呼吸をさせる。
材料と作り方
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[材料] 〈容器(約15㎝×15㎝×5㎝)4個分〉
大豆(秘伝豆)・・・1㎏
藁(15㎝・タッパーに入る長さ)・・・24本
水・・・2.5ℓ
※下準備:洗った大豆を常温で24時間水に浸け、大豆がぷっくりと戻り、表面に張りがでればOK。
[道具のポイント]保温バッグの作り方
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超ミニホットカーペットと保温バッグを組み合わせる
納豆の発酵に活用する伊戸川さん自作の保温バッグ。50㎝×50㎝の小型の電気カーペットを「弱」に設定し、保温バッグに入れれば40℃前後に保つことができるという。
[作り方]
[1]大豆を圧力鍋で炊く
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大豆と水を圧力鍋に入れて強火にかけてアクを除く。蓋をして圧力をかけ、圧がかかったら極弱火で30分間煮る。
[2] 炊きあがりの状態
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指で押すと簡単に潰れる位まで柔らかく炊けたら、ザルに上げる。
[3]容器・藁を煮沸する
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2の炊きあがりに合わせて、タッパー、竹串6本、ザル、おたま、菜箸を煮沸し、その後藁を入れて25分間加熱する。納豆菌を活性化させ、雑菌を殺菌する。
[4]藁を挟み、大豆を詰める
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タッパーの底に藁を2本×印に敷き、その上に2を詰める。容器の半量入れたら再び藁を同様に敷き、大豆を詰める。最後に上に藁をのせる。
[5]蓋は半開きのまま
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竹串を容器の端から飛び出るように斜めに2本差し込み、半開きのまま蓋をしてゴムで止める。
[6]40℃で48時間保温する
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小型電気カーペット(50㎝角)を入れた保温バックに5を入れ、40℃前後に保ち、48時間発酵させる。
発酵温度/時間:40℃で48時間
保存方法:冷蔵で約2週間
自家製納豆の展開例「納豆の塩辛」
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納豆に麹と塩を混ぜた秋田県横手市の郷土料理をヒントに。濃厚な旨味と塩味はつまみやご飯、豆腐のお供にもぴったり。割干大根の食感がアクセント。
[材料](作りやすい分量)
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麹・・・500g
納豆・・・800g
割り干し大根(刻んで水に戻す)・・・160g(戻すと400g)
塩・・・全体の9.5%量
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[1]大きなボウルにすべての材料を入れ、ゴムベラで均一になるまで混ぜ合わせる。
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[2]煮沸消毒した瓶に1を入れ、上からすりこぎで押し込み隙間なく詰める。空気に触れないように表面にラップをし、蓋をする。常温で2カ月置く。
POINT:2カ月以上経ち、発酵が好みの状態になったら冷蔵庫へ。
大阪・谷町六丁目「味酒 かむなび」の店舗情報
◎酒味 かむなび
大阪府大阪市中央区内久宝寺町2-7-12
☎06-6765-0930
18:00~23:00
月曜休
地下鉄各線谷町四丁目駅より徒歩5分
Facebook:@umazakekamunabi
(雑誌『料理通信』2019年5月号掲載)
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