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RECIPE

2つの食感が楽しめる!宝石のように輝く甘酸っぱい「プラムの氷菓」

フルーツを生かす、パティシエの仕事

2024.09.17

photographs by Hiroaki Ishii

連載:フルーツを生かす、パティシエの仕事

コンポート、コンフィチュール、ソテー・・・生以上においしく。旬以外もおいしく。
先人の知恵が生み出した、様々なフルーツ加工術のポイントは、「糖」と「火」です。
フルーツ使いに優れたパティシエに、「糖」と「火」で引き出された果実の持ち味を生かすテクニックを教わります。今回は、グラニータの作り方。

教えてくれた人
東京・祐天寺「ジェラテリア アクオリーナ」茂垣綾介さん

2004年に料理人として渡伊。各地で修業する中でジェラートと出会い、帰国。2012年に東京・祐天寺でジェラート専門店「アクオリーナ」をオープン。旬を大切に、素材の個性を引き出すジェラート作りに情熱を注ぐ。


甘味だけではない、香りと酸味が個性を作る

イタリア版かき氷、グラニータ。果物、水、グラニュー糖。材料は基本、これだけ。

シンプルだからこそ「いい材料を使うことがおいしさに直結する。果物選びにつきます」と「アクオリーナ」のオーナーシェフ、茂垣綾介さん。旬の果物を使ったジェラートやシャーベットが多い時には7〜8種類も並ぶ。

茂垣さんが言う“いい果物”とは、そのまま食べておいしい果物とは少し違う。「甘味は足せるんです。でも果物が持つ香り、酸味など個性は足せない」。熟した果物は確かに甘くておいしいが、種類によっては香りや酸味が抜けてしまうことがあり、加工すると風味を十分に出せないという。逆にプラムのように酸味が強くて好みが分かれる果物でも、砂糖を加えることで生のままで食べるよりおいしさが増すものも。まずは果物を味見して、「その果物を使う意味を考えます」。

グラニータ作りは簡単に見えるが、「果物100%のジュースを水と砂糖で薄めていく作業」。果実感を損ねず、メリハリを出す工夫が細部に施されている。「河内ばんかんのグラニータ」ならゼストを加えて香りを強めるが、シロップの温度は低くしてえぐみは出さない。搾った果汁には果肉を残し、さっぱりした中に果実感を残す。「プラムの氷菓」は、果肉を凍らせて粒状にし、シャーベット状にした上にふりかけ、食感の違いを出す。果物の個性を理解するセンス、表現する展開力が生きている。

果物がおいしければ、A級品である必要はないと茂垣さんは強調する。加工するので見た目を問わないからだ。生産者との付き合いは、仕事の中で大きな位置を占める。産地を訪れ、生産状況を知るにつれ、生産者側に寄り添う取引を心がけるように。収穫過多などで行き場のない果物を引き取るような、農家の支援につながる取引もする。店のメニューを固定化しないのは、生産者との交流を通して偶然出会った果物をジェラートにして、さらにおいしくして食べてもらう、自由度を持つためでもあるのだ。

<“くだものスイーツ”バリエーション>

<シャンペルモ>淡いピンクが、はかなく美しい。グレープフルーツと白発泡ワイン、プロセッコで作る涼やかで、大人の味わいのシャーベット。  
<フルッティディボスコ>ブラックベリー、ラズベリー、ブルーベリー、カシスなど赤いフルーツをミックス。果物をそのまま食べているような濃厚な果実感
<レモンとバジルのシャーベット>レモンの酸味を爽やかなバジルの香りが包み込む。意外な組み合わせはまだまだ知らないジェラートの世界への扉を開けてくれる。

<果実を生かす、グラニータのコツ>


1 フルーツの個性を取り出して強調する
2  果肉はそのまま凍らせて食感に変化をつける
3  多種多様なフルーツで楽しむ


「プラムの氷菓」の作り方

[材 料](作りやすい分量)

プラム(種を取った状態)・・・250g
水(ミネラルウォーター)・・・180g
グラニュー糖・・・60g
ハチミツ・・・10g

プラム(スモモ)の代表的品種のひとつ、大石早生(おおいしわせ)。5月下旬頃から出始め、7月上旬頃に最盛期に。成熟するにつれ、果皮が赤くなる。果肉は淡黄色で果汁が多く、ほどよい酸味がある。

[1]プラムを4つに割る

洗ったプラムをナイフで半分に割り、さらに半分に切れ目を入れて種を取る。果肉は
4つ割になっている。

[2]シロップを作る

シロップを作る。鍋に水、グラニュー糖を入れて火にかける。砂糖が溶けたら火から下ろし、常温に冷ます。ハチミツを加える。

[3]プラムを凍らせる

バットにオーブンシートなどを敷き、の半量(125g)を並べ、ラップをして冷凍庫
で完全に凍らせる。

[4]残りのプラムをミキサーで撹拌する


残りのプラム(125g)とを容器に入れてミキサーにかけ、ジュース状にする。

[5]凍らせる

バットに広げ、ラップをして冷凍庫で完全に凍らせる。POINTここまでは作り置きしておける。

[6]フードプロフェッサーにかける

を粗く割り、フードプロセッサーにかけ、シェークの様なもったりした状態にする。バットに広げ、冷凍庫に入れる。

[7]凍ったプラムもフードプロフェッサーにかける


の凍ったプラムをフードプロセッサーで粉砕し、細かい粒状にする。

[8]果肉とジュースを合わせる

の上にをふりかける。POINT: 混ぜず、それぞれが凍った状態をキープ。

[9]凍らせて、完成

冷凍庫に入れて完成。ディッシャーなどで器に盛りつける。

ねっとり滑らかなシャーベット状の中に凍った果肉の粒が現れる。ピンクが愛らしい、甘酸っぱい氷菓はジューシーなプラムを皮ごと、2通りの状態に加工。シンプルでも、上品な香り、酸味、そして食感の違いを楽しむ趣向だ。



◎ジェラテリア アクオリーナ
東京都目黒区五本木1-11-10
☎03-5708-5787
水〜金13:00-22:00 (21:45 LO)
土日祝 13:00-20:00
月火休、不定休
http://www.acquolina.jp/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2016年8月号掲載)

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