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RECIPE

味噌で自炊はもっと楽になる。「てのしま」林亮平さんが手ほどきする味噌使いのコツ

2024.09.17

【PROMOTION】
text by Noriko Horikoshi / photographs by Hide Urabe

「現代の民藝」をテーマにどこかにありそうで、どこにもない日本料理の新しいかたちを探求する「てのしま」林亮平さん。食生活が多様化した現代、和食を超えて役立つ味噌使いのコツを教わります。

目次






林亮平(はやし・りょうへい) 香川県丸亀市生まれ、岡山県玉野市育ち。大学卒業と同時に料理の道を志し、京都の料亭「菊乃井」で修業。本店副料理長や渉外料理長の要職を務めた後、独立。2018年3月に東京・青山に「てのしま」をオープン。自身のルーツである瀬戸内海の手島(香川県丸亀市)に店を開く近未来のビジョンを見据え、いりこをベースとした本質的な和食文化の伝承にも力を注ぐ。
「てのしま」のシグネチャーのひとつ、「いりこだしのにゅう麺」。小豆島の半生そうめん、香川県観音寺市の老舗いりこ専門店「やまくに」のいりこを使用。いりこ文化圏の瀬戸内に育った林さんの食のDNAを体現する椀物だ。

白味噌は和洋を問わず展開できる万能選手

「味噌は我らが誇る発酵調味文化の代表選手。オールスターで言ったらスタメンの先発投手みたいなもの。日本人にとって大いなる武器です!」
日本料理店「てのしま」の店主、林亮平さんの味噌使い指南は、こんな熱い口上から始まった。実家ではお母さんが毎年手製の米味噌や豆味噌を仕込み、「具だくさんの味噌汁をホットサラダと同じ感覚で食べて育った」というほど味噌は身近な食材だったという。

発酵食ならではのアミノ酸やビタミン類、たんぱく質や食物繊維など、昔から「味噌は医者いらず」と言われてきた栄養面の無双ぶりも、体感として心得ている。
「実際のところ、体は丈夫で風邪知らず。過酷な飲食の仕事を一日も休まずに続けてこられたのも、子ども時代から積み上げた味噌のバックボーンがあるからこそ。本気でそう思っています」

だから、子ども世代に味噌食文化を継承していくことが、料理人の自分に課された究極のミッションだと考えている、とも。
「そのためには味噌が気負わずに使われるものでないと。自分で服を選ぶように、好みの味噌を選ぶ好奇心をもつ。そして、“味噌=和の調味料”の枠に捉われず、よりシンプルで手のかからない料理に展開させていくこと。それができたら楽しいし、家庭の味にも広がりが生まれると思いませんか?」

とはいうものの、原料別、産地別に色合い、味や香りの濃淡を掛け合わせた味噌のバリエーションは星の数ほど。より自由で汎用性の高い味噌使いを楽しむには、どんなタイプを選べばよいのだろうか? 林さんが薦めるのは“白味噌”である。

生まれ育った瀬戸内が白甘味噌の食文化圏であり、修業した京都で使い馴らした背景もあるが、「味わいの特性が他の味噌より料理に展開しやすい」というのがその理由だ。要約すれば、
「麹が多くて旨味が強いこと」
「熟成期間が短くフレッシュ感があること」
「塩分が控えめで甘味があること」
が三大ポイント。

林さんにとって、もっともなじみ深く、使い方のツボを心得ているのが京の白甘味噌。ほどよい塩分と甘味のバランス、素直な旨味が「入門編にもおすすめ」と話す。

それぞれの特徴を有効かつ十全に生かす方法は、「味噌という食材の本質を理解すれば見えてくる」と林さん。どういうことだろうか? 実際の展開例を紹介しながら、本質に迫る味噌使いの極意を紐解いていただこう。

生クリームと合わせて万能ソースに

一品目に登場したのは、一見洋風のポテトサラダに見えなくもない「蛸とじゃがいものバジル大葉味噌和え」。白味噌をベースに青味を練り込んだ仕立てが木の芽和えを連想させるが、実は和え衣に生クリームを加えているところが文字どおりの“ミソ”である。

日本料理の木の芽味噌や酢味噌は、本来であれば白味噌と酒をじっくり煮詰める“炊き味噌”が土台にある。長時間にわたる加熱によってメイラード反応を起こし、熟成期間の短い白味噌にコクと風味の奥行をプラスするための手法と考えられるが、仕込みにかかる手間と時間は容易ならざるもの。

「5㎏の炊き味噌をつくるのに最低でも1時間半は力を入れて練り続けないと」と、林さんは修業時代の苦労を振り返る。より短時間で味わいのバランスを取る方法として、思いついたのが生クリームだった、というわけだ。

「生麹っぽさも残る白味噌の軽めのニュアンスを生クリームのコクが補い、少し火を入れるだけでまろやかな万能ソースベースが出来上がる。白味噌のほのかな発酵感がチーズのように効いてくるよさも。店では、揚げたマナガツオにかけるソースの隠し味に使ったりもします」

白味噌と酒と生クリームを火にかけて5分ほど混ぜ合わせれば出来上がり。冷凍保存しても凍らないから、使いたい時にすぐ使える。

作ったソースは冷凍保存がきき、プラス材料で希釈すれば、和洋かかわらずアレンジできるところが“万能”たるゆえん。だしや豆乳でのばすのもありだし、酢の代わりにレモンやパッションフルーツでゆるめれば、ドレッシング風の簡単酢味噌に一変。バリエーションは無限大だ。

みじん切りにした大葉とバジルを加え、木の芽味噌風の和え衣に。
レモンを搾ればモダンな酢味噌に。いりこの粉末(袋の底にたまる粉状のいりこでOK)を足してコクと旨味をプラスしても、とまさに“万能”。和え衣のほか、パスタソースやドレッシングにもアレンジがきく。

「味噌は塩分濃度を薄めて使うのが基本ですが、何で希釈するかは、さして重要ではありません。滑らかに仕上げたければ、生の卵黄を溶き混ぜてもOK。こんな自由がききやすいのも、塩味、甘味、発酵感のほどよいバランスがとれた白味噌の強みだと思います」


白味噌+植物性食材だけでリッチなスープに

林さんが用意した今回の味噌レシピには、現代の食生活では忘れられがちな“本質”への回帰も示されている。「味噌はだしの素」という原則論だ。

曰く、本来の味噌はそれ自体が旨味の塊であり、野菜を煮た汁に溶き込むだけで味が完成するもの、のはず。

「だし要らずの実力派。まさに、スーパーレトルト食品です(笑)」
それを証明してみせてくれたのが、2品目の「人参と押し麦の白味噌スープ」だった。

ニンジンとタマネギを蒸し煮し、柔らかく煮えたところで白味噌を溶き、ガーッと攪拌してピュレ状に。いくら目をこすっても基本工程はそれだけなのに、温めて出されるスープは魔法のように味わい深い。知らずに飲めば、「だしは何を使っていますか?」と問わずにいられない旨味が五臓に沁みていき、“だし要らず”とはこのことかと腑に落ちる。味噌っぽさは意外と少なく、上質なポタージュのようにクリーミーで抑制のきいた味わいだ。

具材はニンジンとタマネギ、押し麦のみのシンプルな仕立て。とは信じられないほど、完成された旨味が一皿に凝縮。植物性のみの素材をまとめあげる味噌の実力に脱帽する。

「それも白味噌の持ち味ですね。長熟の豆味噌をベテランとするなら、白味噌はフレッシュな若手組。色にたとえればパステルカラー。塩分が少なく、熟成期間も短いから、味噌の発酵感やアミノ酸由来の旨味が控えめで、淡色野菜と合わせても素材感を損なわない。個性の強い豆味噌だとこうはいきません」

物足りなさに着地させないためのコツもある。この白味噌スープで言えば、野菜を煮る前にごく少量の油で炒めている点に注目を。

「ニンジンは白味噌と相性がよいのですが、生のまま使うと土臭さが残りやすく、いわゆる子どもの嫌いな香りが出てしまう。ほんの少量の油をちょろっと足すことで香りのクセがマスキングされ、コクも生まれる。油が繊細な白味噌と野菜の個性のつなぎ役になってくれるのです」

ゴボウやレンコンなど、一段アクが強めの根菜にも応用できる味噌使い。ぜひ参考にしたい。


果汁と合わせて肉魚のマリネに

白味噌は、食材を柔らかくする酵素をたっぷり含む麹の歩合が高く、風味を引き立てる力をもつ。塩分濃度が低いため、長時間漬けても塩辛くなりすぎないところも好ましい。魚や肉の漬け地として理想的な条件を備えているわけだが、「味噌床に大量の味噌を使わないといけないところが悩ましいですよね」と林さん。そこで生まれたのが、りんごジュースを白味噌と合わせ、マリネベースにする発想である。

豚肉は厚み1.5㎝ほどの肩ロースを使用。ともすると、こってり、濃厚になりがちな肉の味噌漬けが、りんご+白味噌のマリネ効果でマイルドに変身。市販のジュースで作れる手軽さもうれしい。

「りんごジュースはみりんに似た甘味があって、豚肉との相性が抜群。熱を加えると、酸味の角がとれてやさしい甘さに変わり、りんごの香りがよい感じで残ります」
味噌とりんごジュースの割合は2:1。普通の味噌床より水分比率が高く、のびがよいため、ポリ袋に少量の漬け地と肉を合わせてもみ込むだけで、しっかり味がしみる。保存容器不要で手軽に仕込みやすく、そのまま冷凍保存もできるとよいことずくめ。

保存袋に白味噌と果汁を合わせ、使い切りの味噌床に。豚肉が安くなっていたら、さっと仕込んで冷凍庫にストックしておきたい。

焼き上がった豚肉は、弾力を保ちながらもさくっと噛み切れる感動の柔らかさ。麹と焼きりんごが混ざった甘やかな香りが、口の中でふわりと膨らむ。
「白味噌はフルーツ全般となじみがいい。『てのしま』ではブリの味噌柚庵焼きの柑橘にオレンジジュースを使うこともあります」と林さん。
果汁の種類やマリネする素材の組み合わせを変えながら、無数の使い方が楽しめるということ。普段から口にするジュースを仲間に加えることで、味噌との距離も一段と縮まりそうだ。


「蛸とじゃがいものバジル大葉味噌和え」の材料と作り方

生クリームと白味噌が調和したまろやかな和え衣に、バジルと大葉の爽やかな香味のアクセントが効いている。チーズを思わせる乳酸系の酸味もほんのり。キンと冷えた白ワインがほしくなる。

[材料]
A(万能白味噌ソース)
白味噌・・・50g
生クリーム・・・10ml
酒・・・10ml
大葉・・・3枚
バジル・・・3枚
タコ(足)・・・1本(30g)
ジャガイモ(中)・・・1個

[作り方]
[1] 白味噌、生クリーム、酒を中弱火にかける

Aを鍋に入れて弱めの中火にかけ、混ぜながら温める。
POINT:味噌と生クリームを焦がさないよう樹脂加工の鍋がおすすめ。

[2] 5分ほど混ぜ合わせる

水分が飛んで元の白味噌と同じくらいの硬さになったら火を止め、冷ましておく。

[3]大葉とバジルをみじんに刻む

大葉とバジルを包丁で細かく刻み、に混ぜ込む。

[4]ジャガイモを蒸し、タコを一口大に切る
ジャガイモは皮をむいて一口大に切り、柔らかくなるまで7~8分蒸し、軽く塩(分量外)をふる。タコも一口大に切る。

[5]食べる直前に和える
のタコとジャガイモに、のバジル大葉味噌を加え、ヘラでさっくり和える。器に盛りつけて完成。


「人参と押し麦の白味噌スープ」の材料と作り方

ニンジンの赤味をほんのり映した色合い、とろみのあるポタージュ風の飲み口にそそられる。疲れた時、体の内側からやさしく温めてくれそうな滋養に富んだ味わい。

[材料]
ニンジン・・・70g
タマネギ・・・20g
水・・・200~400ml
米油・・・小さじ1/2
白味噌・・・35g
押し麦・・・10g
塩・・・少量
黒コショウ・・・少量

[作り方]
[1]ニンジン、タマネギを薄くスライスする

[2]少量の米油で炒める

樹脂加工の鍋、または深さのあるフライパンに米油を熱し、を中火で炒める。
POINT:焦げ付かないよう少量の水(分量外)を加えながら蒸し煮する。

[3] 水を加えて煮る

全体がしんなりしたら水200mlを加え、蓋をして野菜が柔らかくなるまで煮る。

[4] 味噌を溶かす。別鍋で押し麦を茹でる

白味噌を溶かし込む。別の鍋に湯を沸かし、押し麦を10分茹でてザルに上げ、軽く塩(分量外)をふっておく。

[5]ミキサーでピュレ状にする

ハンドミキサーで攪拌し、水を足して濃度を調整。温めて塩で味を調える。の押し麦を加えてひと混ぜし、器に盛って黒コショウを挽く。


「豚のりんご白味噌漬け」の材料と作り方

りんごと麹の混じった甘い香りがふわり。濃色の味噌床に比べて焦げ付きが少なく、肉の色味も生かしたおいしそうな焼き上がりに。

[材料]
豚肩ロース肉(120g)・・・2枚
A(漬け地)
白味噌・・・100g
りんごジュース・・・50ml
塩・・・3g
ニンニク(すりおろし)・・・1片
ショウガ(すりおろし)・・・1片
油・・・小さじ1

[作り方]
[1]豚肉の筋切りをして下味をつける
豚肩ロース肉は筋切りをし、軽く塩(分量外)をふっておく。

[2]白味噌とりんごジュースを合わせ、豚肉を一晩漬ける
ポリ袋にAの材料を入れ、よくもみ混ぜて漬け地をつくる。を加え、冷蔵庫で一晩寝かせる。

[3]中弱火で焼き、余熱で火を通す
肉を焼く1時間前に冷蔵庫から取り出し、常温に戻しておく。豚肉の表面の味噌を洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き、油を引いた樹脂加工のフライパンに置いて火にかける。冷たいところから中弱火で焼き、両面にこんがりと焼き目がついたら火を止め、5分置いて余熱で火を通す。

[4]カットして盛り付ける
を食べやすい厚さに切り、付け合わせの野菜(分量外)とともに器に盛る。


てのしま
東京都港区南青山1-3-21 1-55ビル2階
☎03-6316-2150
昼:水~土曜 12:00~
夜:月~土曜 18:00~20:00最終入店
東京メトロ青山一丁目駅より徒歩5分
https://www.tenoshima.com/
Instagram:@tenoshima884

みそ健康づくり委員会
▼公式インスタグラムでも味噌レシピを配信中!
Instagram:@misokenkozukuriiinkai

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