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RECIPE

芯まで味が染みて肉に負けない満足感「車麩のゴマ唐揚げ」

フェーズフリーな食材レシピ:車麩

2023.09.21

芯まで味が染みて肉に負けない満足感「車麩のゴマ唐揚げ」

text by Tami Ono / photographs by Makoto Tsuchiya

連載:フェーズフリーな食材レシピ

乾物や漬物など常温で長期保存でき、ビタミンやミネラルなど栄養価の高い食材は、買い物に行けない日に便利なだけでなく、備蓄食品としても優れもの。普段から使い慣れておくことで、災害時にも役立ちます。9月は防災月間。「いつも」と「もしも」をつなぐ“フェーズフリー”*な食材をおいしく活用するレシピをシェフに教わります。


常備したい食材:車麩
教えてくれたシェフ:
山梨・北杜市「DILL EAT, LIFE.」シェフ・料理研究家 山戸ユカさん

山戸ユカさん

八ヶ岳南麓のレストラン「DILL EAT, LIFE.」のオーナーシェフ。スキーやトレイルなどアウトドアが趣味で、八ヶ岳の旬の野菜を使った無添加トレイルフード「The Small Twist Trailfoods」も手掛ける。2023年夏、地域で「コンポストコミュニティ」活動をスタート。食べておいしいだけではない、その先の提案を常に行なっている。

戻しながら下味を入れる

「乾物だからと難しく考えず、生の素材と置き換えて気軽に使えばいい」と、山戸ユカさん。彼女にとっての乾物の位置付けは実に気軽なものだが、「戻し方」には工夫が光る。

「いくらしっかり絞っても、乾物の繊維に入り込んだ水分は残って水っぽい仕上がりになるから」と、車麩や高野豆腐は水で戻さず、下味をつけただしで戻す。

たとえば車麩の唐揚げなら、「肉に下味をつける感覚」でニンニクとショウガ醤油を加えただしを吸わせ、「すしを握るくらいの力加減」でやさしく絞る。「絞りすぎるとパサパサに、絞り足りないと油ハネの原因になります」。粉をまぶして衣にくぐらせ、カリッと揚げた車麩からは、肉汁ならぬ麩汁がジュワッと広がり、重層的な満足感。隅々までおいしさを行き渡らせた車麩は、主役級の一品だ。


「車麩のゴマ唐揚げ」材料と作り方

[材料](4人分)
車麩・・・6枚

<戻し汁>
だし・・・3カップ
ニンニク(すりおろす)・・・1片
ショウガ(すりおろす)・・・1片
醤油・・・大さじ3
甜菜糖・・・大さじ2

<衣>
薄力粉・・・1カップ
片栗粉・・・1/3カップ
黒ゴマ・・・大さじ1
醤油、甜菜糖・・・各適量

揚げ油・・・適量

「車麩のゴマ唐揚げ」材料

山戸さん流乾物使いのコツ:生野菜、肉と同じ感覚で使う
野菜や海草の乾物は生の素材をイメージして、大豆や麩などたんぱく質系の乾物は肉と同じと考えると、下拵えや料理の幅が広がる。

[作り方]
[1]材料を混ぜておく

材料を混ぜておく

戻し汁の材料をよく混ぜる。薄力粉と片栗粉もよく混ぜておく。

[2]車麩を戻す
車麩を1の戻し汁につけて10~20分置き、しっかりと戻す。

[3]車麩を絞る

車麩を絞る

車麩を4等分にし、軽くやさしく絞る。
POINT:すしを握るくらいの力加減で絞る。

すしを握るくらいの力加減で絞る。

上は絞る前、下は絞りすぎ、中央が丁度よい絞り加減。

[4]粉をまぶす

粉をまぶす

の粉をまぶす。水分を閉じ込め、味を絡みやすくする。

[5]衣を作る

衣を作る

残った粉に、残った戻し汁を加えてのばし、醤油や甜菜糖で味を調える(この時点で唐揚げの味になるように)。黒ゴマも加えて混ぜる。

衣の濃度はクレープ生地くらいが目安。

POINT:衣の濃度はクレープ生地くらいが目安。

【6】衣をつける
油を180℃に熱し、4の車麩を衣にくぐらせて静かに入れる。

【7】揚げる

揚げる

両面がきつね色になって、箸で叩くと表面がカリッと硬くなるまで揚げる。

黒ゴマ入りの衣は味がしっかりのってカリッとした食感で、噛むと肉汁ならぬ麩汁が口中に広がるインパクトある一品。

黒ゴマ入りの衣は味がしっかりのってカリッとした食感で、噛むと肉汁ならぬ麩汁が口中に広がるインパクトある一品。



◎DILL EAT, LIFE.
山梨県北杜市長坂町大井ヶ森984-6
☎ 0551-45-7512
金~日曜11:00~13:30LO、18:00~20:00LO(前日までの予約制)
月曜11:00~13:30LO
火~木曜休(不定休あり)
中央自動車道長坂ICより約15分、小淵沢ICより約10分
https://dilleatlife.com/

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

*フェーズフリー(Phase Free)は、防災の専門家として活動を続けてきた佐藤唯行氏が2014年に提唱した考え方。

(雑誌『料理通信』2018年5月号掲載)

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