薄衣と高温で作る食感のコントラスト 「茄子のフリットス」
プラントベースの始め方21
2022.09.12
photographs by Masahiro Goda
連載:プラントベースの始め方
健康や環境への配慮から、植物性の食材を主体とする“プラントベース(Plant Based)”な食事法が注目されています。肉や魚や乳製品に頼らずとも「おいしい」料理を作る知恵は、世界各地に存在します。身近なレシピからおいしくプラントベースを始めるヒントを紹介します。
教えてくれたシェフ
「ランブロア」磯部美木子さん(左)、北澤信子さん(右)
薄衣で外はサクッと中はとろとろに
日本人なら誰もが最初驚くだろう。揚げナスに黒蜜。意外な組み合わせだが、スペイン・アンダルシア地方では、地元名産のシェリーなどに合わせるおつまみとして、広く楽しまれている。
「ランブロア」の磯部美木子さんが初めてホームステイしたのはアンダルシアのバルだった。「これはその店で出していたメニューの一つ。ナスを薄くスライスして、パリパリのチップス状に揚げる店もありますが、私はとろっとしたナスが好きなので、太く切って揚げています」
表面をカリッと揚げたナスは、齧ると中はとろとろ。香ばしいナスに強めの塩味を効かせれば、黒蜜のコクやほのかな酸味とのコントラストで、ナスのみずみずしさが一層引き立つ。甘くてしょっぱくて、つい手が伸びるおいしさだ。
ナスを揚げる際のコツは2つ。1つは薄く粉をまぶすこと。「ナスを素揚げにすると、中の水分が抜けて油っこくなりやすいんです。断面を粉でコーティングするだけで、ジュワッとジューシーに揚がります」
2つめは、高めの温度でカラッと揚げることだ。ナスは火が通りやすいので、180℃で揚げてきれいな揚げ色がつけば、中身も充分揚げ上がっている。油の温度を下げないよう、ナスは少しずつ油に入れると鍋でも安定して揚げやすい。
薄衣なぶん、カリッとした食感は儚い。揚げたてをすぐにいただこう。
<植物性食材だけでおいしくなるコツ>
1 粉を薄くまぶす
2 高めの温度でカラッと揚げる
「茄子のフリットス」の作り方
[材 料(1皿分)]
ナス・・・4本
塩(ゲランドの塩)、薄力粉・・・各適量
キャノーラ油・・・適量
黒蜜、パセリ(ドライ)・・・各適量
[材料のポイント]
スペイン産の黒蜜「ミエル・デ・カーニャ」
スペインの黒蜜も、日本同様サトウキビの搾り汁を煮詰めて作る。焦がしたような香ばしい香りと、ほのかな酸味が感じられる。日本の黒蜜でもよいが、黒蜜代わりに甘口シェリー酒のペドロヒメネスを煮詰めたソースをかけても。
[1]太めカットでジューシーに
ナスは洗ってヘタを取り、縦に4等分する。太い場合は6等分に。
[2]塩で下味をつける
ボウルに入れて塩2~3つまみを振り、塩が全体にいきわたるよう軽く混ぜる。
POINT:塩を振ったらすぐに次の工程へ
[3]薄力粉をまぶす
別のボウルに薄力粉を入れて2を数本ずつ入れ、全体に粉をまぶし付ける。
[4]できるだけ薄付きに
余分な粉をはたいて落とし、できるだけ薄付きにする。厚いと衣が重たくなる上、揚げ油が汚れる。
POINT:ナスの断面が直接油に触れないよう、粉を薄くまぶすことで外はさくっと、中はジューシーなとろける食感に。ナスは火が通りやすいので、高めの温度で一気に揚げると油っこくならず、仕上がりがべたつかない。
[5]高温の油に少しずつ入れる
油を185℃に熱し、4を入れる。一度に入れず、粉を付けたものから順次入れると温度が下がりにくい。
[6]混ぜながら揚げる
ムラなく火が入るよう、こまめに網でナスの上下を返し混ぜながら高温のまま勢いよく揚げていく。
[7]泡が少なくなってくる
3分ほど経つと気泡が大きくなり、果肉が茶色く色づいてくる。引き続き混ぜながら揚げる。
[7]黄金色になったら揚げ上がり
果肉全体が黄金色に色づいたら網ですくい、クッキングペーパーを敷いたボウルに取る。
[8]仕上げにも塩
すぐに塩適量を振って、皿に盛る。黒蜜とパセリを散らす。
POINT:強めの塩味で蜜とバランスを取る
[相性のよいお酒]
アンダルシアの地酒、シェリー酒を合わせたい。エミリオ・ルスタウ「アルマセニスタ アモンティリャード・デル・プエルト」なら、その熟成香やほどよい酸が黒蜜のコクとナスの塩気と引き立てあい、セクシーなペアリングに。
◎ランブロア
東京都世田谷区用賀3-11-15
☎03-6432-7017
18:00~22:00LO
(土曜、日曜、祝日は~21:30LO)
月曜休
東急線用賀駅より徒歩4分
Facebook: Lanbroa ランブロア
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。
(雑誌『料理通信』2019年11月号掲載)
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