1日で漬かる発酵食品。スープのように食べられる「水キムチ」
パワーオフ・レシピ
2024.09.30
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photographs by Hide Urabe
連載:パワーオフ・レシピ
エアコンの使用などで家庭での電気使用量が急増する夏。一人ひとりがエネルギー消費の節約に取り組むことが気候変動抑制につながることから、電気やガスを使わなくてもおいしく作ることができる「パワーオフ・レシピ」をシェフに教わります。暑い日に台所で火を使いたくないときはもちろん、知っておくとガスや電気が止まった災害時やアウトドアでも役立ちます。電気・ガス代が過去最高水準になっている今、家計防衛術としてもレパートリーに取り入れたいレシピです。
(2023年7月に掲出した記事の再掲載です)
教えてくれた人
東京・清澄白河「酒と肴 ぼたん」金岡由美さん
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日本酒を気軽に楽しめる酒場「酒と魚 ぼたん」女将の金岡由美さん。千葉県香取市出身。和食、蕎麦、居酒屋など様々な業態の飲食店で経験を積んだのち、35歳で独立して現店をオープン。実家の焼き肉店で母が漬けるキムチを食べて育ち、店でも甘酒やコチュジャンなど発酵食品を自家製している。
自然な酸味で夏野菜を爽やかに
実家が焼肉店で、母が漬ける自家製キムチを食べて育ったので、水キムチも日常的に食卓に上るものとして親しんできました。
水キムチは唐辛子の辛味がほとんどない、赤くないキムチです。野菜やリンゴ、梨などを米のとぎ汁に漬けて発酵させたもの。ほのかな酸味とあっさりした味わいで塩気もきつくないので、漬物としてつまむより、汁ごとスープのように食べることが多いです。
韓国ではもともと白菜やダイコンを使い、暖房の効いた部屋で身体を冷ます冬の食べ物だそうですが、夏場にキュウリやパプリカ、水ナスなどの旬の野菜で作るのが気に入っています。夏バテ気味の時でもさらさらと食べやすい。そのままで楽しむのはもちろん、実家では残った汁にワカメやゴマ、ネギと氷を足して冷たいワカメスープに仕立てたものを朝ごはんに食べていました。
野菜やリンゴについている乳酸菌がとぎ汁を栄養にして乳酸発酵します。とぎ汁は、とぎはじめの一番濃いものを使って。沈殿しやすいので、キムチに入れる前によく混ぜてください。夏の暑い時期は半日、秋〜春なら1日ほど置いて味を見て、酸味が出てきたら完成です。塩分はお好みで、野菜の重量の2〜3%加えますが、夏場は腐敗防止のため、しっかり3%入れたほうがいいと思います。
店では甘酒やキムチなどの発酵食品も自家製しています。既製品は添加物など余計なものがたくさん入っているのが気になります。自分で仕込めば最小限の材料でシンプルに作れるし、既製品より安くなる。しかも自分で作った方がおいしいです。
残り野菜をキムチにしたり、営業で余ったご飯を使って甘酒を作ったりと、食材を使い切る手段としても発酵を取り入れています。
「水キムチ」材料と作り方
[材料](作りやすい分量)
キュウリ・・・2本
パプリカ・・・1個分
セロリ・・・1本
リンゴ(あれば和梨)・・・1/2個
ショウガ(あれば新ショウガ)・・・1片
ニンニク……2片
唐辛子(あれば青)・・・3本
塩・・・野菜重量の2~3%
米のとぎ汁・・・適量
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[作り方]
[1] 具材を切る
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キュウリとパプリカは乱切り、セロリは筋を引いてから1㎝厚の斜め切りに。リンゴは8等分にして5㎜厚に切る
[2] 香味野菜を切る
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ニンニクは2~4等分に切る。あまり小さくしないこと。ショウガは繊維を裁つようにスライスする。
[3] 計量する
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ボウルに切った野菜を全て入れて計量する。
[4] 塩をまぶす
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野菜の重量の2~3%の塩を加え、全体にまぶす。
POINT:暑い時期は腐敗防止に必ず3%加えること。
[5] 米のとぎ汁を加える
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米のとぎ汁は沈殿しないように、軽く混ぜてから具材全体が浸かる量を加える。
[6] 発酵させる
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唐辛子を入れラップをかけ、夏場は室温で半日、冬場は暖房の効いた部屋で1日置き、酸味が出たら冷蔵庫に移す。
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◎酒と肴 botan
東京都江東区白河2-9-2
☎070-6474-4139
平日:18:00~22:00
土曜、日曜:①16:00~19:00、②19:15~22:00
月曜休、不定休(営業カレンダーをご確認ください)
東京メトロ清澄白河駅より徒歩2分
Instagram:@yumikaneoka
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2018年8月号掲載)
いつもの生活で、エネルギー消費量を減らしてみる
今日からできる気候変動へのアクション
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国連広報センターが「SDGメディア・コンパクト」に加盟する日本のメディア有志とともに、気候変動対策のアクションを呼び掛けるキャンペーン「1.5℃の約束 – いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を実施しています。料理通信はこのキャンペーンに参加し、食にかかわる気候変動への取り組みを国内外から紹介しています。
●ActNow! 今すぐできる『10の行動』
「ActNow」は、個人レベルでの気候アクションをグローバルに呼びかける国連のキャンペーン。どんなことが気候変動の抑制に役立つのか、身近な行動を10項目挙げています。「家庭で節電する」では、家庭で毎日の生活のなかのエネルギー消費量を減らすことが気候変動の防止に役立つとされています。
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家庭で節電する
私たちが使用する電力や熱の大部分は、石炭や石油、ガスを燃料としています。冷暖房の使用を控え、LED電球や省エネタイプの電化製品に取り替え、冷水で洗濯し、乾燥機を使わずに干して乾燥させてエネルギー消費量を減らしましょう。
(国連・ActNowキャンペーン:気候変動の抑制に対して個人でできる『10の行動』より)
イラスト:Niccolo Canova
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