1人用の小さなグラタン皿で焼く
紅玉とベリーのパイ
レスキューレシピ【リンゴ編】
2022.02.17
photographs by Hide Urabe
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。なんと、もったいない! 生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための食材活用レシピをシェフに教わります。2月は、リンゴで作るスイーツレシピを4回に渡って紹介。“訳アリフルーツ”でもおいしく作れますよ!
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」
目次
- ■教えてくれたシェフ:神奈川・逗子「ベケット」芳須康(よしず・こう)さん
- ■保形性を気にせず、焼き立て、熱々を味わうアップルパイ
- ■「ベケット」のアップルパイの極意
- ■「紅玉とベリーのパイ」材料と作り方
- ■「Becquet」店舗情報
教えてくれたシェフ:神奈川・逗子「ベケット」芳須康(よしず・こう)さん
1980年生まれ。鎌倉のフレンチ「丸山亭」、ワインバー「ランデブー・デ・ザミ」等を経て独立。イギリスのガストロパブスタイルに魅せられ、2014年現店を開店。「青果店からB品やC品のお知らせをもらうようにしています。その時に必要がなくてもできるだけ購入して、調味料やペーストなど日持ちのするものに加工してストック。先日も太りすぎて割れたニンジンをチャツネにしました。もちろんおいしい!」
保形性を気にせず、焼き立て、熱々を味わうアップルパイ
逗子駅前の商店街を抜けた先に佇む「ベケット」は、イギリススタイルのカフェ&ガストロパブ。地元客を中心に賑わいを見せるこの店を営むのは、多国籍なエッセンスに満ちたロンドンの食シーンに刺激を受けた芳須康シェフだ。
モダンブルーに彩られたキッチンからは、ビストロ仕込みの、シンプルでいてアクセントの効いた皿の数々が繰り出される。ソーセージや鯖のスモーク、ピクルスをはじめ、ヨークシャープディングなど、店で出す料理の大半は手作りする。品数こそ多くはないが、お菓子もすべて自家製。パイ、ガトーショコラやショートブレットなど、作りたてが常に2〜3種、メニューオンする。
今回紹介するのは、1人用の小さなグラタン皿で焼くアップルパイ。「お菓子屋さんと違って、その場で作りたてを食べてもらえるので、液漏れや形崩れをそこまで気にする必要がないし、焼きたての熱々を出せる。それがレストランの良さですね」
リンゴはさっとソテーするだけにして、甘酸っぱい果汁がたっぷり染み出るジューシーな仕上がりに。パイ生地はフィリングの水分でしとらないよう、上から被せるだけにして焼成。カリッとしたパイの食感とジューシーなフィリングとのハーモニーが愉しめる、熱々のひと皿に。「パイ生地は、フードプロセッサーを活用して作ると簡単です」。
素朴で温かいイギリス菓子は、少しの材料と、シンプルなレシピで作れるのも魅力。お試しあれ。
「ベケット」のアップルパイの極意
・フルーツはさっと炒めてジューシーに
・パイ生地は上から被せて、湿らせない
・グラタン皿を使って焼き立てを楽しむ
「紅玉とベリーのパイ」材料と作り方
【材 料】(11㎝×14㎝のグラタン皿、3台分)
<ラフ・パフ・ペイストリー生地>
強力粉・・・100g
薄力粉・・・50g
マルドンの塩・・・1つまみ
バター・・・150g
冷水・・・55~75ml
レモン果汁・・・小さじ1 ※水に加えておく
<フィリング>
有塩バター・・・50g
ショウガ・・・1片(太めのせん切り)
シナモン・・・3つまみ
ナッツメグ・・・1つまみ
きび砂糖・・・50g
紅玉(皮をむいて8等分にくし切り)・・・3個
ブラックベリー・・・150g
ドリュール・・・適量
[1]パフ・ペイストリー生地を作る
粉類と塩をフードプロセッサーに入れ、2秒×2~3回混ぜる。バターを加え、そぼろ状になるまで2秒×10数回混ぜる。
POINT:くっつかないようにバターに粉をまぶす。
[2]そぼろ状にしてまとめる
レモン水を少しずつ加え混ぜ、しっとりしたそぼろ状になったら、手で握り押さえるようにひとまとまりにして、ラップで包み冷蔵庫で20分程度置く。
POINT:レモン汁を冷水に少量加えて使うことで、しなやかなグルテンが形成され、サク、ホロのラフな食感に。
[3]生地を折る
生地を5mm厚さ程度の長方形に伸ばし、3つ折りにする。再び長方形に伸ばして3つ折りに。これをあと1回繰り返したら(全3回)、ラップに包んで20分冷蔵庫で置く。
[4]フィリングを作る
フライパンにバターを中弱火で熱し、溶けたらショウガ、シナモン、ナッツメグを加え、香りが立ったら砂糖を加える。
[5]リンゴとベリーをさっと炒める
[4]にリンゴを加え、ソースを煮詰めて全体に絡める。絡まったらブラックベリーの半量を加え、写真のように赤い果汁がリンゴに絡むまで中火で加熱する。
POINT:さっと炒め絡める程度
[6]グラタン皿に盛りつける
[5]のフィリングを3等分してグラタン皿に入れ、残りのブラックベリーをのせる。パイ生地をくっつけるべく、グラタン皿の縁の内側に卵液を塗る。
[7]生地を薄く伸ばす
生地を冷蔵庫から取り出し、打ち粉をした台の上で3等分する。麺棒で薄く、11㎝×14㎝以上の四角形に伸ばす。
[8]生地を被せる
パイ生地を[6]に被せ、器の縁と生地をつまむようにおさえてくっつける。卵液を塗り、中央に十字に空気穴を開ける。
[9]オーブンで焼く
180℃に予熱したオーブンで40分焼く。焼き上がったら、バニラアイスとタイムをのせて供する。
POINT: 作り置きをする場合は、あと5分焼けば完璧、という手前でオーブンから出し、食べる前にオーブンで5分弱ほど焼き直す。
サクサクの生地にナイフを入れると、甘酸っぱいソースがたっぷりあふれ出る。
<シェフの道具>
STAUB社のレクタンギュラーディッシュ(11㎝×14㎝)
オーブンやレンジ等の高温加熱はもちろん、冷蔵、冷凍にも使えるセラミック製のグラタン皿。汚れも落ちやすく、お手入れも簡単。店では、1人分にちょうどよいサイズをチョイス。
「Becquet」店舗情報
◎Becquet(ベケット)
神奈川県逗子市逗子7-13-4
☎046-874-9089
18:00~22:00LO
火曜、水曜休
JR逗子駅より徒歩5分
http://www.becquet249.com/
Instagram:@becquet_zushi
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2019年2月号掲載)