スペイン式味づくりのコツ!
目玉焼きは、たっぷりのオリーブ油で“揚げ焼き”
レスキューレシピ【卵編】
2022.04.07
photographs by Masahiro Goda
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための食材活用レシピをシェフに教わります。今回のテーマは、卵。定番の卵料理にひねりを加えた秀逸レシピをお届けします。賞味期限が迫っても焦らず、卵料理を楽しみましょう。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」
目次
教えてくれたシェフ:東京・用賀「ランブロア」磯部美木子さん
1974年、愛知県出身。大学在学中にスペインへ2年間、語学留学。2001年、サン・セバスティアンの「ルイス・イリサール」料理学校に入学。卒業後1年半、カタルーニャとパンプローナで働き帰国。2016年8月現在の店をオープン。「フードロス対策は日々の大きな課題。小さなお店なので仕込み過ぎない様に心がけています。お客様の食べ残した料理は保存袋をお渡しして持ち帰っていただくこともありますが、梅雨時など慎重に対応しなくてはと思います」
揚げるように、泳がすように
磯部美木子さんがスペイン料理の特徴だと感じるポイントのひとつが、オリーブ油を惜しげなく使うこと。目玉焼き「ウエボ・フリト」も、オリーブ油で「揚げるように、泳がすように」焼き上げる。
「揚げる」と聞くと日本人は深鍋にたっぷりの油を用意するが、フライパンにたっぷりの油で「揚げ焼き」するイメージ。といっても、そこは賢く、小さめのフライパンを手前に傾けて油の池を作り、白身は完全に沈んで、黄身が少し頭を出すくらいの量があればよく、惜しげなくといっても、上手に節約できる。
火が入って白身の透明感が消え、周りが反り返るころには卵もフライパンから剥がれやすくなっているので、中央に移動させて、卵の表面に油をかけながら火を入れる。普通の目玉焼きほどラフではなく、火加減を含め、かなり繊細に対応する。
油をたっぷり使うことに抵抗がある人もいるかもしれない。でも、一度、揚げ焼きを試してほしい。ニンニクの香りを移した目玉焼きが旨味を含むことがわかるはずだ。卵だけ、そのまま食べても十分においしい。そして、残ったニンニクはホクホクしたイモのような食感になり、ニンニクの香りがついたオイルも別の料理に有効活用できる。
「ウエボ・フリト(目玉焼き)」材料と作り方
[材料]
卵・・・1個
ニンニク(皮付き)※・・・2片
オリーブ油・・・適量
※ニンニクにはナイフで短く切り込みを入れておく。
[1]オイルとニンニクを火にかける
小さめのフライパンにオリーブ油とニンニクを入れ、弱火にかける。
[2]卵を割り落とす
トングなどで軽くつまんで、ニンニクが柔らかくなったのを確認したら取り出し、フライパンを傾け、卵を割り落とす。
POINT:油の温度はそれほど高くないので、最初、卵は油の中に静かに沈む状態。
[3]フライパンを動かさない
卵が自然に剥がれてくるまでフライパンを動かさず、そのまま待つ。
[4]剥がれるか確認する
白身の周りが反り返ってきたら、パレットナイフを底に差し入れ、卵の剥がれやすさを確認する。
[5]表面にオイルをかける
卵が剥がれたら、パレットナイフで油を卵の表面にかけながら好みの加減まで火を通す。
皮付きのままでゆっくりニンニクを加熱すると、みじん切りやスライスにしたニンニクとは違った奥ゆかしい香りが引き出される。ニンニクは皮の中で蒸し焼き状態になり、最後はホクホクとしたイモのような食感に。残ったオイルのほうも他の料理に展開する。
<食べ方>
チストラの目玉焼きのせ
羊の腸に詰めた細長いソーセージ「チストラ」は途中でねじらず、使う時にハサミで必要な長さにカットする。表面をパリッと焼いたチストラに、黄身がまだトロトロの目玉焼きをのせれば、絶好のソースに。
[材料](すべて適量)
チストラ(好みのソーセージ)
目玉焼き
塩
パセリ
E.V.オリーブ油
[1]チストラを焼く
オリーブ油でチストラを香ばしく焼く。
[2]目玉焼きをのせる
目玉焼きをのせ、塩を振り、パセリを散らす。
「ランブロア」店舗情報
◎ランブロア
東京都世田谷区用賀3-11-15-102
☎03-6432-7017
18:00~22:00LO
月、火曜休
東急線用賀駅東口より徒歩4分
Facebook@Lanbroa
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2017年9月号掲載)
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