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RECIPE

パクチーの“根”が味の決め手!タイ料理「やりいかのレモンガーリックソース煮」

レスキューレシピ【捨てないレシピ編】

2022.10.27

photographs by Masahiro Goda

連載:レスキューレシピ

日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。生鮮食品においても、豊作で余ったり、規格外、傷、スレがあって売り物にならず、行き場のない食品が日々廃棄されているのです。家庭内で料理中に出る端材や余らせがちなパーツも、新たな魅力を見出し、活用法を考えることで捨てる量を減らせます。食材を無駄にせず、おいしく食べるための活用術をプロの技に学びます。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」

目次






教えてくれた人:タイ料理研究家 長澤恵さん

タイ料理研究家。千葉県生まれ。会社員時代の旅行をきっかけにタイ料理に魅せられ、国内のタイレストランで基礎を学んだ後タイに渡り、料理学校、食堂、レストランで料理とタイ語を習得。2002年よりタイ料理研究家として活動を始め、10年よりタイ料理教室「TitCaiThaifood(ティッチャイタイフード)」を主宰。メニュー開発、商品開発、食文化セミナーなどタイについて情報発信する。著書に『新装版 長澤恵のタイ料理教室—本場の味がわかる、作れる、プロセスつき』(マガジンランド)などがある。「パクチーの根っこが余ったら、捨てずに、よく洗ってラップに包み、丸ごと冷凍しておくと、重宝しますよ」


本当の主役は“根”です。

パクチーの根っこ、使いこなせていますか? 実は、タイ料理の味づくりの決め手になるのは、パクチーの葉ではなく、根っこです。ドレッシングに、肉ダネに、スープに。タイ式の根っこの使い方をタイ料理研究家、長澤恵さんに聞きました。

パクチーの中で一番香りが強く、風味が出やすいのが茎の付け根の太く膨らんだ部分。ここをしっかり叩いたり刻んだりして、香りを最大限に活用しよう。

タイ料理やベトナム料理に使われるパクチー。日本でもポピュラーな存在になってきたが、ほとんどの日本人にとって、パクチーといえば「葉」を使うもの、というイメージが強いのではないだろうか。

しかし、タイ料理研究家の長澤恵さんは「タイではパクチーの葉はあまり重要視されておらず、飾り程度にしか使われない場合も多々あります。むしろ味づくりに欠かせないのは根。タイ料理の味の基本ともいえる食材です」と話す。 

重要なのは茎の付け根の太くなった部分。ここが最も香りが強く、タイらしい味わいを形作ってくれる。

刻んでヤム(サラダ)のドレッシングに入れたり、クロック(タイの石臼)で潰して肉や魚の臭み消しや風味付けに。また、根は加熱しても香りが飛びにくいので、叩き潰してスープに入れるなど、西洋料理におけるローリエのような役割も。加える前のひと仕事で威力が発揮されるので、使い方をマスターしよう。

パクチーの根:基本の下ごしらえ

[1]茎の付け根から4~5㎝のところで切る。

[2]茎の間を開いてチェック。土などが溜まっている。

[3]流水にあてながら茎の間の汚れを落とす。

[4]根の太い部分を包丁でこそげてきれいにする。ラップに包み、冷凍保存できる。


「やりいかのレモンガーリックソース煮 」材料と作り方

「やりいかのレモンガーリックソース煮 (プラームックヌンマナーオ)」

[材料](3人分)
ヤリイカ・・・2~3ハイ(450g)
ニンニク・・・7g
唐辛子・・・2~3本
パクチー(根と茎部分)・・・2束
鶏ガラスープ・・・100ml
ナムプラー・・・30ml
グラニュー糖・・・10g
レモン汁・・・30ml
ライム(スライス)・・・3枚
パクチーの葉・・・適量

POINT:パクチーは、葉の下ぎりぎりまで茎を長く取り、たっぷり使う。

[1] ヤリイカは太めの輪切りにする。ニンニクは潰してからみじん切りにする。唐辛子は包丁の腹で叩いてから粗く刻む。

[2]パクチーの茎は小口切り、根は太ければ十字に切り込みを入れてから小口切りにする。

[3] 鍋に鶏ガラスープ、ナンプラー、グラニュー糖を入れて強火にかけ、沸騰したらヤリイカを加える。

[4] 強火のままさっと混ぜ、イカ全体が白っぽくなったらすぐに火を止める。
POINT:イカに火を通しすぎない。

[5]にパクチー、ニンニク、唐辛子、レモン汁を加え、皿に汁ごと盛り、ライム、パクチーの葉を添える。

パクチーの根、ニンニク、唐辛子のパンチが効いた一品。イカの旨味が出るので、ジャスミンライスの上に汁ごとかけて食べるのも◎。「歯触りを感じられるようパクチーの根を粗めに刻みましょう」


活用例①:春雨のスパイシーサラダ(ヤムウンセン)

タイの定番春雨サラダ。ドレッシングに入れた、刻んだパクチーの根の香りが鼻に抜ける、爽やかな味わい。「ヤム(タイ式サラダ)のドレッシングにパクチーの根を使うときはできるだけ細かく刻みましょう。丁寧に刻めばそれだけぐっと香りよく、美しく仕上がります」

活用例②:豚肉と野菜のスープ(トムチュームーサップ)

パクチーの根をクロックでペースト状に潰し、肉だねに練り込む。塊肉を包丁で叩いた粗いミンチの肉団子は、あえていびつな形にして食感の変化を楽しむ。タイでよく食べられている卵豆腐を沈めて。

活用例③:北部地方の豚肉の揚げ物(ムートード)

パクチーの根を軽く潰し、コリアンダーシード(パクチーの種)や調味料と共に豚肉にもみ込み、下味をつける。カリッと揚げた豚肉は、スパイシーで複雑な香りがあと引くおいしさ。思わずビールが欲しくなる。

活用例④:海老のスパイシースープ(トムヤムクンナムサイ)

鶏ガラベースであっさりと、パクチーの根、レモングラス、バイマックルーの香りを生かしたトムヤムスープ。「スープにパクチーの根を加えるときは、包丁で叩いて香りを出しやすくし、必ず沸いたところに加えてください。それだけで香りの立ち方が違います!」



◎タイ料理教室 ティッチャイタイフード
https://www.titcaithaifood.com/

(雑誌『料理通信』2018年5月号掲載)

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