日本酒蔵に教わる酒粕レシピ「酒粕漬け」「大吟醸粕鍋」
レスキューレシピ【酒粕編】
2024.01.25
photographs by Sai Santo
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間570万トン*と言われています。この季節に出回る酒粕も、余らせてしまいがちな食材の一つ。未開封なら常温でも保存がききますが、開封したら冷蔵庫や冷凍庫で保管し、風味が変わらないうちに使い切りたいものです。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わります。
*農林水産省「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」
目次
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■東京・学芸大学「件(くだん)」主人・川邉輝明さん×
神奈川「天青」杜氏・五十嵐哲朗さん、兵庫「龍力」蔵元・本田龍祐さん - ■酒粕はよき“仲介役”
- ■『天青』式「酒粕漬け」材料と作り方
- ■『龍力』式「大吟醸粕鍋」材料と作り方
- ■東京・学芸大学「件」の店舗情報
東京・学芸大学「件(くだん)」主人・川邉輝明さん×
神奈川「天青」杜氏・五十嵐哲朗さん、兵庫「龍力」蔵元・本田龍祐さん
酒粕はよき“仲介役”
酵母や麹を、複雑巧みに操り導く日本酒蔵の醗酵男子。日々、発酵と向き合う彼らから、暮らしとともにある酒粕&麹のレシピを集め、「件」川邉輝明さんに再現をお願いした。
撮影当日、厨房には、ほわんといい香り。「酒粕を調理してると、仕込み中の蔵のような香りがしますね」。川邉さんは、全国の若手蔵元、蔵人が信頼を寄せる東京の料理人。「粕や麹の料理から、お国柄や蔵の歴史が垣間見えるのが興味深いですね」。
酒粕は「主役を引き立てる名脇役」と考え、「みりんのような感覚」で使う。味噌漬け床や蕗味噌に加えれば料理の角が取れ、味や香りに膨らみが出るほか、お酒との相性もぐんとよくなる。「カレーに加えてもおいしいですよ」。
『天青』式「酒粕漬け」材料と作り方
「野菜や豆腐は新粕で爽やかに、肉や魚は練り粕で奥行きを出す感覚で使い分けるのがコツです。卵は生を使っても失敗ないです。砂肝は他素材と炒め合わせてもおいしそう」(川邉)。「芳醇な香りで酒が止まりません!」(「天青」杜氏・五十嵐哲朗さん)
「豆腐漬け」の材料と作り方(手前)
[材料](2人分)
絹豆腐・・・1丁
酒粕・・・500g
日本酒・・・100ml
醤油・・・大さじ1.5
[作り方]
[1]豆腐の水をしっかり切る。
[2]酒粕、日本酒、醤油をよく混ぜ、漬け床を作る。
[3]豆腐をガーゼに包み、2に3日以上漬ける。
「卵黄漬け」の材料と作り方(中)
[材料](2人分)
卵・・・2~4個
醤油・・・適量
練り粕・・・100g
[作り方]
[1] 温泉卵を作り、白身を剥く。
[2]1を醤油に1日間漬ける。
[3]2をガーゼに包み、練り粕に窪みを付けてのせ、練り粕で覆い、2日程置く。
「砂肝漬け」の材料と作り方(奥)
[材料](2人分)
醤油・・・小さじ1.5
酒粕・・・100g
練り粕・・・50g
砂肝・・・5個
[作り方]
[1]醤油、練り粕、酒粕をよく混ぜ、床を作る。
[2]砂肝を掃除してぶつ切りにし、1に数日漬ける。
[3]グリルやフライパンで焼く。
【酒粕使いのコツ】
新粕と練り粕を使い分ける
右が今年絞った粕、左が1年熟成させた練り粕。練り粕は新粕に比べ柔らかでコクが深く、漬け床に便利。
「天青」醸造元
◎熊澤酒造 www.kumazawa.jp
『龍力』式「大吟醸粕鍋」材料と作り方
「鮭やタラを使う粕汁は魚臭さが気になる、小骨やアラが面倒という人はぜひ!深いコクと華やかな香り。いい吟醸粕が手に入った時に。新ジャガは粕に合うので一押し。酒粕の粒は、漉すひと手間で口当たりアップ」(川邉)。「蔵では猪肉を使用。簡単で極上の美味」(「龍力」蔵元・本田龍祐さん)
[材料](2~4人分)
吟釀粕・・・100g
水・・・1ℓ
昆布・・・1枚(鍋底サイズ)
味噌・・・大さじ3~4
豚肉(しゃぶしゃぶ用)・・・300g
野菜(白菜、長ネギ、エノキ、新ジャガ等)・・・適量
[作り方]
[1]鍋に吟釀粕、水、昆布を入れ、1時間浸しておく。
[2]1を弱火にかけ、ゆっくりと粕を溶かす。溶け切ったらザルで濾し、鍋に移す。
[3]鍋を火にかけ、沸騰する前に豚肉を入れ、再沸騰したら野菜を入れる。
※野菜は根菜類でも美味。その場合は先に野菜を入れ、火を通しておくこと。
「龍力」醸造元
◎本田商店 www.taturiki.com
東京・学芸大学「件」の店舗情報
◎件
東京都目黒区鷹番3-7-4 関口ビル1階
☎03-3794-6007
17:00~24:00LO
(日曜~ 23:00LO)
月曜休
東急東横線学芸大学駅より徒歩1分
Instagram:@kudan_gakugeidaigaku
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2012年6月号掲載)
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