フキ、ウルイ、コゴミ・・・スーパーで買える山菜使いこなし術
2023.04.10
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text by Kyoko Kita / photographs by Masahiro Goda
エグミや苦味も味のうち。山菜の持ち味や歯触りを損なわず、おいしくする方法をマスターしたいもの。スーパーで買える入門編にぴったりな山菜から、持ち味を生かす食べ方を東京・六本木「日本料理 ときわ」西塚茂光さんに教わります。
教えてくれたシェフ
東京・六本木「日本料理 ときわ」西塚茂光さん
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「日本料理 ときわ」店主。山形県出身。18歳で上京し、赤坂「楽味」などで修業の後、銀座「堂島」で料理長を務める。2000年に銀座「馳走 啐啄(そったく)」を開店。2020年6月、現店に移転オープン。茶人としても活躍し、茶事のこころを原点にしたもてなしを伝える。
クセを持ち味に変えるアク抜きの技
「山形にいる兄弟は、雪解けの頃になると山へフキノトウを取りに行き、採れたてを天ぷらにするんです。一足先にカモシカに食べられちゃうこともあるんですけどね」と西塚茂光さん。山菜は動物たちにも春の訪れを告げる山のご馳走。昔から「春には苦味を盛れ」と言われるのは、山菜に含まれる苦味成分が、冬の間に溜め込んだ老廃物をデトックスする効果があると考えられてきたからだ。
とはいえ、料理するとなると、身構えてしまう。理由はアクの処理。実は今流通している山菜の多くは栽培されたもの。「天然もののような強い個性はないけれど、その分、扱いは楽ですよ」と西塚さん。「アクは水に溶けます。重曹などを使わなくても、ゆでたり水にさらすだけで、他の野菜と同じ感覚で料理に使えます」。水にさらす時間やゆで方は、料理の方向性やアクの強さによって変わる。たとえばアクが控えめなウドは、生でも食べられるが、変色が早いため切ったらすぐ水にさらす。目安はおよそ10分。浸けっぱなしは禁物だ。「苦味は山菜の持ち味でもあるので、抜き過ぎないように」。ゆでる場合も、ゆで上がったらうちわで粗熱を取り、風味をキープする。
一方、だしのクリアな旨味や和え衣の繊細な味を生かすためにしっかりとアクを抜きたいフキやコゴミは、ゆでてからさらに10分程度水にさらす。アクの強いフキの葉に至っては、一晩水に浸けてから佃煮に。フキノトウやウドの芽のようにやわらかい山菜は、油で揚げて、アクを丸ごとおいしさに変えてしまうという手もある。「フキノトウの葉の一片を軽く焙って吸い口にしたり、ウドを薄く切りカールさせてお造りのあしらいにしてもいいですね」。山菜はいつもの料理に添えるだけでも、食卓に春の風を運んでくれる。
“ いつもの野菜” 感覚で山菜を使いこなす
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香りや味わいに独特な個性を持つ山菜だが、下ごしらえのコツは他の野菜にも共通する点が多い。ゆでた後の処理、味の含ませ方、軽やかに天ぷらを揚げる秘訣。山菜使いを覚えれば、野菜料理もグレードアップするはず。
「フキ」の下ごしらえ・・・アク抜きしなくていい
皮むきの要領をつかめば、下処理に時間はさほどかからない。美しい青色にこだわらないなら板ずりも不要。皮剥きの手間を少しでも減らすには、長く切ってゆでられる大きい鍋を用意すること。スルッとむけると快感。
[1]板ずりでむきやすくする
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鍋の大きさに合わせてフキを切る。まな板において塩をふり、両手で板ずりする。
POINT:きれいな緑になる
[2]芯まで火を通す
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沸騰した湯で30秒程度茹でる。
POINT:芯まで火を通し、変色を防ぐ
[3]手でスルッとむける
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冷水に取って冷まし、皮と筋を取り除く。
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ふきのお浸し・・・浸し地を替えて2度浸けることで味がしっかり染みる。フキの香りと共に澄んだだしのおいしさを味わえる料理。
「フキノトウ」の揚げ方・・・洗わず、まんべんなく衣をつける
衣がべたつかないよう、水で洗わず汚れは布巾などで拭う程度に(他の山菜も同じ)。葉の一枚一枚に、ふるった小麦粉を刷毛などで薄く丁寧につける。やや水分が多めのサラっとした衣で揚げると軽い仕上がりに。
[1]切れ目を深く入れる
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水で洗わず、布巾などで拭って汚れを落とす。根元に十字の切れ目を深めに入れる。しっかり葉を開き、花芽を出す。
[2]粉を薄くつける
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刷毛などを使って全体に薄く粉をつける。
[3]花を下にして揚げる
170℃の油で花を下にして揚げる。途中で裏返して火を通す。
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フキノトウの天ぷら・・・衣はサクッと軽いが、中はジューシー。春の香りが押し寄せ、心地よい苦味に身体中の細胞が目覚める感覚を覚える。
「コゴミ」の味の含ませ方・・・浸し地を替えて味を含める
30秒程ゆでて冷水に取ったら、食べてみてゆで加減を見極める。アクが残っていたらさらにゆでる。ユニークな見た目に反して味や香りの個性は控えめ。そこで浸し地を替えて浸け、水分を出しつつ味を含ませる。
[1]掃除する
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ゴミや変色した部分を取り除く。根元の硬い部分を切り、水洗いする。
[2] 切り分ける
根元に近い部分と葉の部分は火の通り方が違うので切り分ける。
[3] ゆでて冷ます
たっぷりの湯を沸かし、塩少量を加えてさっとゆで、冷水にとって冷ます。
POINT:冷水にとったら食べてみてアクが残っていたらさらにゆでる。
[4] 味を含ませる
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水気を切り、浸し地に浸ける。20~30分後に浸し地を変えて味を含ませる。
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こごみの白和え・・・滑らかでクリーミーな和え衣に、コゴミの食感が際立つ。コゴミに下味がついているので、衣は薄味でも成り立つ。
「ウルイ」のゆで方・・・水にさらさず風味をキープ
茎も葉もやわらかいので、火入れはあくまでさっと軽く。アクが少なく風味も繊細、独特のぬめりやシャキシャキした食感が持ち味。そのためゆでた後は水にさらさず、ザルに上げてうちわで仰ぎ、風味や食感をキープする。
[1]切る
ウルイは根元を落とし、白い茎部分に刃を入れる。茎と葉を切り分け、適当な大きさに切る。
[2]さっとゆでる
たっぷりの湯でさっとゆでる。
[3]あおいで冷ます
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ザルに上げ、うちわであおぎ冷ます。
POINT:水にさらさず、あおいで冷ますことでウルイの風味、食感を保つ。
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うるいの酢味噌和え・・・ゆでることで出たぬめりが酢味噌と合わさり、薄い層を成した茎や葉にねっとりと絡む。繊維質の食感が小気味よい。
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◎日本料理 ときわ
京都港区西麻布1-9-7 シュウエツレジデンスII 1階
☎03-3405-1237
17:00~23:00(完全予約制)
日曜休
各線六本木駅より徒歩6分
https://www.tokiwa-nishiazabu.jp/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2019年4月号掲載)
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