ピリ辛豚肉をつゆだくで。ポルトガルの煮込み肉サンド「ビファーナ」
スローレシピ04
2022.11.04
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photographs by Sai Santo
連載:スローレシピ
材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。寒くなってきた今月は、体も心も温まる、スローな煮込みレシピを紹介。ポルトガルのジューシーな豚肉サンドからスタートです。
教えてくれた人
ポルトガル料理研究家 馬田草織さん
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料理ライター/編集者/ポルトガル料理研究家。自宅でポルトガル料理とポルトガルワインを楽しむ料理教室「ポルトガル食堂」を主宰。著書に『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)、『ようこそポルトガル食堂へ』(幻冬舎)がある。
炭酸水と余熱で、豚肉をふっくらと
ジューシーでしょう? このサンドイッチは、両手で持って豪快にかぶりついて、流れ出るソースの汁気を感じながら、味わってほしいんです。
ビファーナは、パプリカパウダーやビールなどで作る特性ソースを絡めた豚肉をパンに挟むサンドイッチ。店では注文後、茹でたり焼いたりした肉をソースにくぐらせてパンに挟んで提供します。私のレシピはポルトの「コンガ」という店がお手本。
このビファーナのポイントは肉のやわらかさ! ふわふわとジューシーで、パンとの一体感が決め手です。そのために、まず豚肉は炭酸水に一晩浸けます。火を通す時は乱暴に熱々の中に加えたりせず、余熱で。一度ソースの火は切り、炭酸水で温度を下げてから、ほぐしながら加えます。
ソースはピリ辛。ポルトガルの人はあまり辛いものを食べないけれど、「コンガ」はアフリカ系の血を引く家族の店。だから唐辛子の辛味がピリッと効いていて、それが人気です。
驚きは、肉を挟んだらパンをソースに浸すという、牛丼のような“つゆだく”テクニック。普通サンドイッチってパンを濡らさないように断面に油脂を塗るけど、これは真逆。小ぶりのパンに、口が閉まらないくらい肉を詰めて豪快にドボン!と浸ける。
現地ではビールと一緒に注文してカウンターでかぶりついて、さっと帰る。これがサマになるとカッコいい。そこも牛丼と似てるかな。
<スローな煮込み「ビファーナ」の極意>
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コマ切れの豚肉
しゃぶしゃぶ用の豚肉では、薄くて仕上がりがボロボロになって食感が頼りない。バラ肉では脂が多すぎる。肩、ロース、バラなど脂がほどよく入ったコマ切れ肉がベスト。
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小さめ&軽めのハード系パン
現地ではカルカッサという、卵などを使わない、シンプルでやわらかめのパンを使う。仕上げにパンをソースに浸すので、ほどよく気泡が入り、水分をたっぷり吸うパンがよい。小さめの丸パンを選び、はみ出るほどに肉を詰める。
「ビファーナ」材料と作り方
[材料](5個分)
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豚コマ切れ肉・・・300g
炭酸水・・・1カップ
タマネギ(粗みじん切り)・・・1/2個
唐辛子・・・1本
ローリエ・・・1枚
ニンニク(粗みじん切り)・・・2片
【A】
白ワイン・・・1/2カップ
白ワインビネガー・・・大さじ2
パプリカパウダー・・・大さじ1
粉唐辛子・・・小さじ1
オリーブ油・・・大さじ2
塩、コショウ・・・各適量
丸パン・・・5個
[作り方]
[1] 炭酸水に一晩浸ける
![[1] 炭酸水に一晩浸ける](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_06.jpg)
ビニール袋に、豚肉、炭酸水1/2カップ、塩を入れて軽く揉む。口を縛って冷蔵庫で一晩おく。
POINT:炭酸水で肉をふっくらやわらかくする
[2] タマネギを蒸し炒めする
![[2] タマネギを蒸し炒めする](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_07.jpg)
鍋にオリーブ油、タマネギ、種を取ってちぎった唐辛子と折ったローリエを加え、蓋をして中弱火で蒸し炒めにする。
POINT:蓋をしてタマネギから出る水分で蒸す。
[3]ニンニクを加える
![[3]ニンニクを加える](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_08.jpg)
5、6分後。タマネギが透き通ってきたら、ニンニクを加え、全体を混ぜて香りが立つまで蓋をして蒸し炒めにする。
[4] ワインとスパイスを加える
![[4] ワインとスパイスを加える](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_09.jpg)
ニンニクの香りが立ったらAを加えて、蓋をして弱火で10分ほど煮る。
[5] 炭酸水を加える
![[5] 炭酸水を加える](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_10.jpg)
全体にとろみがついてきたら火を止め、炭酸水1/2カップを加えてブレンダーで撹拌する。
POINT:炭酸水で温度を少し下げて、次に加える肉が熱で硬く締まらないようにする。
[6]肉をほぐしながら加える
![[6]肉をほぐしながら加える](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_11.jpg)
1の肉をほぐしながら加え、余熱で火を入れるようにソースと絡めていく。
POINT:余熱で肉に火を入れる
[7]冷まして味をなじませる
![[7]冷まして味をなじませる](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_12.jpg)
肉がまんべんなくソースと絡まったら、蓋をして弱火で2、3分、肉に完全に火を通す。塩、コショウをふり、そのまま1時間~一晩常温で冷まし、味を落ち着かせる。
POINT:一晩置くとさらに味がなじむ。
[8] パンに肉を挟む
![[8] パンに肉を挟む](https://r-tsushin.com/wp-content/uploads/2022/11/slow_recipe_04_bada_saori_13.jpg)
パンに7をたっぷり挟み、肉を挟んだパンの1/3をソースに浸し、器に盛る。
POINT:パンからはみ出るくらいたっぷり肉を挟む
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たっぷりのソースを絡めた、やわらかでジューシーな肉をパンにはみ出すほど挟み、ソースにじゃぽんと浸す、“つゆだく”サンドは、肉とパンの一体感が味の決め手。ビールやワイン片手に豪快にかぶりつけば、即効で元気をくれる、現地のパワーフードです。
◎馬田草織さんの料理教室「ポルトガル食堂」
https://www.instagram.com/badasaori/
(雑誌『料理通信』2020年5月号掲載)
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