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RECIPE

攻めのオイル使いでトスカーナの味に「豚のソフリット煮込み」

スローレシピ11

2023.12.07

text by Michiko Watanabe / photographs by Sai Santo

連載:スローレシピ

材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。寒い日に体も心も温まる、スローな煮込みレシピを紹介します。

目次






教えてくれた人:「OVUNQUE」古澤千恵さん

「OVUNQUE」古澤千恵さん

2000 年に渡伊、トスカーナの田舎で10年暮らす。今も住まいを向こうに残し、ご主人の古澤一記さんと鎌倉・長谷で「OLTREVINO(オルトレヴィーノ)」を営みながら、日本とトスカーナを行き来する。イタリア・アンティークのWEBショップ 「OVUNQUE(オヴンクエ)」を運営。23年、「Casa OVUNQUE」をオープン。著書に『イタリア人が教えてくれた美しい暮らし方』(筑摩書房)など。

材料が泳ぐくらいオリーブオイルを入れる

一口食べたときに、パッと目が見開く感じ。トスカーナに行ったことがなくても、トスカーナってこんな味よね、と思えちゃう。「オルトレヴィーノ」で食事をすると、そんなことがよくある。それって何がどう違うのか。

古澤千恵さんに聞くと、「オリーブオイルの量の違いかもしれませんね」とのお答え。なにしろ「イタリア人というか、トスカーナ人のオリーブオイルの使いっぷりは半端ない」んだそうだ。オリーブオイルは素材の味を引き出す大事な要素。調味料でもあるのだ。

たとえば、ソフリットを作る時には、「材料が泳ぐくらい」入れる。この“攻め”のオイル使いが、トスカーナの味づくりへの第一歩らしい。

「あのぉ、ここで聞くのもなんですが、そのソフリットって何ですか?」という方。ソフリットの語源は「軽く揚げる」という意味の動詞だそうだ。イタリア料理に欠かせない3種の野菜、タマネギ、ニンジン、セロリを、“たっぷり”のオリーブオイルで揚げ炒めして、おいしさを引き出したもの。野菜とオリーブオイルの旨味が詰まった万能調味料である。逆に、「何を今さら、ソフリットは常識でしょ。いつも作ってるよ」という方も、改めてオリーブオイルの量を比べてみていただきたい。きっと目からウロコの気付きがあるはずだ。

このソフリットは素材の旨味を引き上げる万能調味料として様々な料理に使われる。豚と一緒に煮込めば、肉の旨味とソフリットの甘味が溶け合い、深い味わいが生まれる。


「ソフリット」材料と作り方

「ソフリット」材料と作り方

[材料](作りやすい量)
タマネギ・・・2個(280g)
ニンジン・・・1本(75g)
セロリ・・・1/2本(65g)
ニンニク・・・1片
E.V.オリーブ油・・・90g
塩(フィーノ・細粒タイプ)・・・1g

【イタリアの味づくりに欠かせない食材】
E.V.オリーブオイル

【イタリアの味づくりに欠かせない食材】 E.V.オリーブオイル

トスカーナ産カステル・ルッジェロのE.V.オリーブオイル「キャンティ・クラッシコDOP ルジェンテ」。「オルトレヴィーノ」が自社輸入し、オンラインショップで販売中(¥4,644・税込/500㎖)。

[作り方]
[1]材料を切る
タマネギ、ニンジン、セロリは粗みじん切りにする。ニンニクは皮をとって潰す。

[2]ニンニクの香りを出す
フライパンにE.V.オリーブ油とニンニクを入れ、 焦がさないようゆっくり香りを出す。

[3]野菜を加える

野菜を加える

ニンニクがほっくりしたら、タマネギ、ニンジン、セロリを加えて炒める。

[4]塩をして炒める

塩をして炒める

全体に油が絡まったら塩をして中弱火で、数分おきに混ぜながら炒める。
POINT:日本のタマネギは繊維が硬く、水分が少ない時があるので、その場合は塩をした後、蓋をしてしばらく蒸し焼き状態にすると焦げにくい。

[5]火を止める

火を止める

タマネギが薄茶色になったら火を止める。
POINT:炒めた後もオイルはたっぷり残っている。

~保存のすすめ~
「ソフリットパック」

「ソフリットパック」

ソフリットは多めに作って冷凍保存しておくと便利。古澤さんは、大さじ2~3杯ずつのソフリット(オイルも一緒に)をラップして冷凍している。これが常備できると本場の味がグンと身近になる。

「豚のソフリット煮込み」材料と作り方

[材料]
豚肩ロース肉・・・500g
ソフリット・・・大さじ3
白ワイン・・・50ml
ローズマリー、タイム、セージ、ローリエ・・・各1枝(枚)
E.V.オリーブ油、塩(フィーノ・細粒タイプ)、コショウ、小麦粉・・・各適量

[作り方]

[1]肉に下味をつける
豚肩ロース肉は大きめの一口大に切り、塩、コショウをして、小麦粉をはたいておく。

[2]肉に焼き色をつける
フライパンにオリーブ油を熱して、豚肩ロース肉の全面に焼き色をつける。

[3]白ワインとソフリットを加える
白ワインを加えアルコールを飛ばしたら、ソフリットを入れた平鍋にすべて移す。

[4]煮込む
ハーブをそのまま加え、全体を軽く混ぜ合わせる。蓋をして、肉が柔らかくなるまで20~ 30分煮込む。

豚肩ロースをソフリットとハーブと共に煮込むだけで、簡単にトスカーナの味が作れる。

神奈川・鎌倉「OVUNQUE(オヴンクエ)」の店舗情報


◎OVUNQUE(オヴンクエ)
神奈川県鎌倉市長谷2-5-40 「OLTREVINO」内
☎0467-33-4872
12:00~18:00
水曜、木曜休
江の島電鉄長谷駅より徒歩5分
https://ovunque.jp/

◎Casa OVUNQUE(カーサ・オヴンクエ)
神奈川県鎌倉市長谷1-11-13
11:30〜16:30
定休日:水曜日、木曜日、不定休
江の島電鉄長谷駅より徒歩5分
※予約制。予約はメールにてcasa@ovunque.jp

※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。

(雑誌『料理通信』2016年10月号掲載)

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