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FEATURE / WORLD GASTRONOMY






世界が注目する1993年生まれの若手シェフ

「エルンスト」ディラン・ワトソン=ブラウン氏インタビュー

Feature / World GastronomyJun. 14, 2018

text by Melinda Joe, photographs by Maidje Meergans
translation by Yuko Wada

17歳で東京の三ツ星日本料理店でキャリアをスタート

ベルリンにある「エルンスト(Ernst)」のシェフであり、共同設立者でもあるディラン・ワトソン=ブラウンは、同年代のシェフのほとんどにとって夢のようなキャリアを成し遂げた24歳。その12席のミニマルなレストランは、ドイツ首都郊外の閑静なエリアに昨夏オープンし、人気のファイン・ダイニングとなっている。
2018年4月には、OAD (Opinionated about Dining)から「2018年ヨーロッパ最高の新レストラン」に指名された。OADとは、個人投票の結果を投票者の知識・経験レベルに基づいて集計するアルゴリズムを利用した人気の国際的レストラン評価システムだ。

(photograph by OAD awards ceremony)

ワトソン=ブラウンは17歳のときに故郷のカナダを離れ、東京の三ツ星日本料理店「龍吟」で修業を開始。さらに、香港の「天空龍吟」に移って修業を続け、その後はニューヨークの「イレブン・マディソン・パーク」、コペンハーゲンの「ノーマ」でも経験を積んだ。
「エルンスト」では、非常に個性的なスタイルを持つ素材重視の料理に、日本料理の技法とセンスを取り入れている。スタッフは頻繁に野生の食材を採集しに出かけ、レストランは食材の供給業者たちと築いた密接な関係を誇りにしている。
つくりたての牛乳のチーズにレモンバーベナで香りづけした料理や、こんがり焼いたうなぎの骨から作ったソースをかけながらグリルしたうなぎを、繊細かつ抑制の効いたスタイルで盛りつけた皿は、ワトソン=ブラウンのトレードマークとなっている。



Q. なぜシェフになったのですか?

両親は、わたしが「学校が好きなタイプ」ではないことを知っていたんです。家族でバンクーバーのあちこちにあるレストランに行きましたが、16歳のときに、好きなレストランで働いたらどうかと父から薦められました。試しにキッチンで働いてみたら、仕事とは感じられないほど楽しかった。

Q. 世界的なレストランで修業されていますが、最も重要な学びは何でしたか?

大型レストランの運営方法も見てきましたが、その多くはレシピのブックレットを渡されるような調理実験室タイプで、機械的なところが多かった。でも、龍吟のキッチンは違いました。山本シェフが新しい料理を発表するときは、スタッフ全員が集まり、食材や技術を説明するシェフの声に耳を傾けるんです。

ノーマが教えてくれたのは、既存の価値基準に挑戦することでした。つまり、「贅沢とはなにか?」に答えるため、レネ・レゼピはポジティブな形で人びとの考え方を変えたのです。シンプルな食材や基本的な料理を、いかに今までとは異なる扱い方をするか、ということにおいて影響を受けました。

Q. OADのランキング・リストに新たに登場したレストランを紹介するロンドンのディナー・イベントで、あなたは、蒸したケールと出汁でのばしたブールブラン・ソースの料理を披露しましたね。自身の料理スタイルについて説明していただけますか?

日本料理とフランス料理の技法を使いますが、フュージョン料理ではありません。日本的なセンスと味のフレーバープロファイルからインスピレーションを得ていますが、日本料理を作っているわけではありません。茶碗蒸しは、その例外です。この料理には軽い味わいの京都風まぐろだしを使い、旬の趣向をふんだんに凝らしています。たとえば、秋にはセップ茸、春にはアミガサ茸を使い、夏には、シチリアレモンでポン酢ソースを作ったりしています。

Q. 日本での経験からとても大きな影響を受けていますね。そのことついて、詳しく聞かせてください。

日本でシェフになるには、まず品質を見きわめる目を持たなければなりません。社会全体が驚くほど完璧主義の傾向にあるからです。食材の品質は別次元で、それが栽培から収穫、輸送に至る生鮮食材の取扱い方にも行き渡っていました。私は当初、その一連の流れの重要性を軽く見ていました。野菜、脂ののった魚、肉など、ヨーロッパの若いシェフの多くは食材の品質を見極めることができません。品質を見て、触れて、味わった経験がないからです。

Q. ベルリンを選んだのはなぜですか?

ベルリンは興味深い街です。アートと音楽の大きなシーンがあり、生活費が安い。働きたいレストランはなかったのですが、香港で私房菜(プライベート・キッチン)というコンセプトに出会っていたことから、自分のアパートでディナーを出すようになりました。





Q. エルンストを個性的にしているものとは何ですか?

なるべく自然に、その日の朝に手に入ったものによってメニューのほとんどを毎日変えています。12席に抑えたのも、そのためです。経済性の点では、12席で5~6名のスタッフがいて、どうやって収益を上げられるのかという疑問が生じると思います。レストランのあるベルリンのエリアは賃貸料が月にたったの400ユーロ。固定費をできる限り低く抑えました。また、特別な体験を提供できるよう心を尽くしたところ、たいていの食事客が食後も残ってお酒を飲んでいくようになりました。そのレストランでしか味わえないドリンクを選びサーブすることで、価値ある時間と空間を演出できるのです。

Q. レストランの資金はどうやって調達しましたか?

開業に25万ユーロかかりましたが、地元のコミュニティから多くの支援を得ました。ベルリンにはエルンストのような場所が必要だと、だれもが感じているからです。建築家から、弁護士やテキスタイル・デザイナーまで、協力者のほとんどがレストランの食事客で、料金を安くしてくれました。







Q. 一番大変なことはなんですか?

質の高い食材を調達することがいまだに大変です。優れた供給業者探しに時間をかけているのです。ドイツでは、価格と質のバランスのとれた供給業者をみつけることは簡単ではありません。透明性はなく、購入者に対する情報提供もありません。わたしたちは仲買人を通さないことにしています。そうすることで、生産者との本当のコラボレーションが可能になるからです。そして、食材の85%は地元産です。わたしは、人との出会いがすべてだと思っています。毎日、電話でリクエストができるような人びとです。

Q. 業界における昨今のシェフの動向はどうですか?

ソーシャルメディアに強力な競合が非常に多くいるため、若いシェフにとっては厳しい状況で、シェフ自身や、その活動についても誤解が生じやすくなっています。わたしはどちらかというと独自のものを作りたいと考えています。トレンディな食材を使いたいとは思いません。エルンストでは、ひとりの人間の枠を超えたもの作りを目指しています。ここで働く誰もが、未来に向けた機会を増やせるような。

Q. 若いシェフですばらしいと思うのはだれですか?

ドイツ人シェフのルーカス・ムラーズ、ロンドンのレストラン「イコイ(Ikoyi)」のジェレミー・チャン、パリ「A.T.」の田中淳のファンです。台北「祥雲龍吟」の稗田良平の仕事にも感銘を受けています。彼はこの冬、わたしたちとポップアップ・レストランを開くため、ベルリンにやってきますよ。









◎ ERNST
Gerichtstraße 54,13347
Berlin Germany
https://www.ernstberlin.de/











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