焦げる寸前まで焼くのがポイント。「スペアリブのビール煮込み」
スローレシピ09
2023.01.19
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:スローレシピ
材料をイチから用意し、時間をかけて、料理すること自体をゆっくりと楽しむ。それが“スローなレシピ”。時短とは真逆の価値観の先に、とびきりの味が待っています。寒い日に体も心も温まる、スローな煮込みレシピを紹介します
目次
教えてくれたシェフ:東京・池尻大橋「ビストロ・グルトン」小更耕司さん
リッチなビールでじっくり煮ましょう
ホームパーティなどのおもてなしに、骨付きの塊肉を出せたら、場も盛り上がりますね。コク深く艶やかな煮汁に、ほろほろのやわらかな肉、するりと外れる骨・・・「スペアリブのビール煮込み」の理想の仕上がりに、技術や材料など難しいことはまったく必要ありません。主材料はビール、豚スペアリブ、タマネギだけ。いくつか要点を押さえれば、実現できます。
まずは煮込む前にしっかり焼きつける。メイラード反応で、肉もタマネギも香味をアップさせます。「焦げる寸前」と思うくらいまで炒めて。この香ばしさが味の土台になります。次に、リッチなビールで煮ること。酒の甘味、苦味、コクが全体の味わいに直結します。また炭酸は肉をやわらかくします。ビールは常温でOK(冷えてるとつい飲んでしまう笑)。隠し味に少々の砂糖を加えて時折差し水をしてやりながら、肉に串がすっと通るまで、蓋をしてじっくり弱火で2時間ほど煮ます。煮汁ごと一晩寝かせ、味をなじませます。
翌日温め直しますが、10~15分はしっかり煮ないと、やわらかさが戻りません。肉を取り出し、煮汁を煮詰めてバターでモンテすれば、艶やかなソースに変身。肉を戻して絡めましょう。甘味のある煮込みなので、ビネガーとエシャロットを効かせた、マッシュポテトを添えると美味。ほぐれた肉とソースが渾然一体となって、口の中に旨味と香りが広がります。ワイン、すすんじゃいますよ!
<スペアリブの煮込みの極意>
1 しっかり焼き付け、香ばしい焼き色に
2 風味豊かなプレミアムビールで煮る
3 一晩寝かせて味をなじませる
「スペアリブのビール煮込み」材料と作り方
[材 料](作りやすい分量)
豚スペアリブ・・・300g
タマネギ(スライス)・・・1個
ビール(プレミアムタイプ)・・・500ml
オリーブ油・・・適量
塩、コショウ・・・各少量
小麦粉・・・適量
砂糖・・・小さじ1
バター・・・大さじ1
<仕上げ用>
ジャガイモ・・・2個
オリーブ油・・・大さじ1
エシャロット(みじん切り)・・・小さじ1
シェリービネガー・・・大さじ1
塩、コショウ・・・各少量
揚げタマネギ・・・少量
※ジャガイモは丸ごと蒸して皮をむき、ボウルに入れて粗くつぶす。オリーブ油、エシャロット、シェリービネガーを入れて混ぜ、塩、コショウで味を調える。
[作り方]
[1]タマネギを炒める
オリーブ油を熱し、タマネギを中火で炒める。しんなりしたら塩を加え、茶色になるまで30分程炒める。
POINT:しっかり炒めた香味が味の土台になる
[2]豚肉に下味を付ける
豚スペアリブに塩、コショウをし、軽くすり込み、下味を付ける。
[3] 豚肉に小麦粉をはたく
表面に小麦粉をはたいておく。こうすることで、香ばしい焦げ目が付き、煮汁にもとろみが出る。
[4]豚肉をしっかり焼く
フライパンにオリーブ油を熱し、中火で3を全面焼き、表面に香ばしい焦げ目を付ける。
POINT:焼きつけた香味が味の土台になる
[5]ビールを注ぎ、ひと煮立ち
鍋に1と4、砂糖とビールを加え、ひと煮立ちさせる。ビールの泡が収まり、浮いてきた粗いアクをすくう。
[6]蓋をして煮込む
蓋をして2時間弱火で煮込む。時折確認し、水分が減りすぎていたら、肉全体が浸る程度の水を加える。
[7]一晩寝かせ、翌日温め直す
竹串が通れば火から下ろし、煮汁ごと冷蔵庫で一晩置く。翌日、中弱火で10分以上熱する。
[8]煮汁をバターでモンテする
肉を取り出し、残った煮汁を半量になるまで煮詰め、バターでモンテする。
[9]肉を戻し、炊き合わせる
煮汁にとろみがついたら肉を戻し入れ、ソースを全体に絡め、火から下ろす。
深い甘味とコクをまとったスペアリブは、ナイフを入れればほろほろ。さっぱり酸味の効いたマッシュポテトを付け合わせに。
◆煮込み時間:80分 ◆トータル料理時間:一晩と80分
「ビストロ グルトン」店舗情報
◎ビストロ グルトン
東京都世田谷区池尻2-33-7
☎03-3410-5517
18:00~21:00LO
日曜、第3月曜休
東急線池尻大橋駅より徒歩5分
https://gekn500.gorp.jp/
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2016年1月号掲載)
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