KURKKU FIELDS×料理通信
3/26(日)開催「いのちのてざわりワークショップ」リポート
2023.04.06
photographs by Shinya Morimoto
便利で受け身な都市生活から1時間半、自然と能動的に過ごす1日
東京駅から高速バスで1時間半。千葉県木更津にある「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」の30haの敷地には、農場と森が広がり、宿泊施設やレストラン、ソーラーパネルやアート作品の横で、動物や昆虫、植物、微生物が暮らしています。
都会で暮らしていると忘れがちな“人間以外のいのちの存在”。
「自然の中での学びが必要なのは子供だけじゃない。むしろ大人こそ自然に触れて遊ぶべき」と、クルックフィールズと料理通信がタッグを組んでお届けする新しい食のプログラムがスタートしました。
便利で受け身になりがちな都市生活に挿入したい、自然の中で能動的に過ごす1日をダイジェストでリポートします。
目次
- ■10:00 【山野草を摘む】皆で、野生の森へ
- ■11:30 【調理】屋外キッチンで味噌の下準備
- ■12:20 【ランチタイム】テーマは「発酵と山野草」
- ■13:30 【味噌づくりワークショップ】地元の材料で仕込む
- ■14:50 【堆肥ツアー】ミミズコンポストと堆肥舎を見学
- ■15:50 【家庭で堆肥作り】コンポストバッグの使い方
10:00 【山野草を摘む】皆で、野生の森へ
朝から1日雨の予報。でも、雨なら雨の日の営みがここにはあります。雨具持参で集まった26名の参加者の皆さんとオリエンテーションの後、早速フィールドツアーへ。広大な敷地の真ん中に広がる野生の森へ、山野草を摘みに分け入ります。
2019年に開園したクルックフィールズの野生の森は、まだ若い森。そこに自生するタラノキは「パイオニア植物」と呼ばれ、鬱蒼と生い茂った森の奥ではなく、まだ草木の少ない周辺にいち早く自生してくるそう。1本の木から芽をすべて摘んでしまわないよう気を付けて収穫します。
斜面にしがみつくように生えたクロモジ。お茶菓子用の高級楊枝で知られますが、香りのある枝葉はハーブティーとしても。葉っぱをこすって匂いを嗅ぐと、甘く爽やかな香り。
落ち葉や枯れ木は1カ所にまとめておくと微生物や虫によって分解され、カブトムシやクワガタムシなど、野生生物の格好のすみかに。
フキノトウを摘んだ後の斜面にフキの葉が群生しているのを発見。
施設から出る排水は浄水槽を通った後、植物や微生物のはたらきを活用した“バイオジオフィルター”という場内を巡る仕組みで浄化されます。池にはカエルの鳴き声が響き、オタマジャクシがたくさん。
水辺にはドクダミやセリ、クレソンがわさわさと。
はこべもゲット。摘んだ山野草はランチの食材になります。
「ギシギシ」という名前のタデ科の野草。シュウ酸が多くあまり食用されないけれど、ぬるっと柔らかな若芽はおいしそう・・・。
ぬかるみに気を付けながら食べられる山野草を探す1時間ほどの散策を終え、ランチ会場へ。
11:30 【調理】屋外キッチンで味噌の下準備
ランチの前に午後の味噌づくりに使う大豆を茹でます。屋外キッチンはクルックフィールズのサバイバル隊長(勝手に命名)のゴウ(佐藤剛)さん自作。石を積み、廃材で炉と煙突を作って釜をのせ、2日ほどかけて完成。
大豆は木更津、君津周辺で守られてきた伝統ある品種「小糸在来(こいとざいらい)」。大豆も敷地内の畑で育てたもの。
クルックフィールズに昨年オープンしたレストラン「perus(ペルース)」の山名新貴(よしき)シェフは、ピザ窯で大原産のタコを調理中。参加者が摘んだ山野草と一緒にセビーチェにします。
サービスの小高光さんが朝摘んだ野草をシロップに漬け、自家製の米麹甘酒とレモン汁で割ったノンアルコールカクテル。雨の中、歩いた体にほっと染み渡る1杯。
野菜の端材でとったベジブロスと昆布水、農場でとれた野菜と大豆を煮込んだプラントベースのミネストローネ。
12:20 【ランチタイム】テーマは「発酵と山野草」
今日のランチのテーマは「発酵と山野草」。レシピも配られました。
タコと山野草のセビーチェはフキの葉にのせて。自家培養酵母で発酵させたパン(自家栽培の小麦入り)は薪窯で炙り、フキ味噌とゴルゴンゾーラチーズ、ピーナッツペーストを合わせたものを塗っていただきます。ミネストローネは生姜麹を加えた奥行のある味わい。
ランチの後は料理通信のファシリテートで山名シェフとゴウさんのミニトークセッション。自生する山野草を「食べられるか」「どのタイミングで摘むとおいしいか」「どう調理したらおいしいか」を探るアプローチはまさに料理の原点。
13:30 【味噌づくりワークショップ】地元の材料で仕込む
本日のワークショップのテーマは「発酵と微生物」。味噌づくりを通して目に見えない微生物との距離を縮めます。
木更津の農家から仕入れた農薬不使用米を、市内で100年以上続く「鈴木糀店」で米糀に加工。糀と塩をすり混ぜます。
茹で上がった大豆20キロをすり潰す作業が一番の重労働。参加者ファミリーが力を合わせて完走してくれました。
糀とすり潰した大豆をまんべんなく混ぜてから味噌玉にします。味噌づくりは素手が基本。仕込む手が多いほど複雑な味を醸していく?
最後に味噌玉を樽に投げ入れ、空気を抜いて微生物の活動を待ちます。この日仕込んだ味噌は後日、希望者にお裾分け予定。
14:50 【堆肥ツアー】ミミズコンポストと堆肥舎を見学
「発酵と微生物」の働きを知るプログラム第2弾は堆肥ツアー。クルックフィールズ内の様々な資源を生かした堆肥づくりを見学します。
ダイニングから出た生ゴミはミミズコンポストへ直行。ミミズは皮膚呼吸するのに水分が必要なため、水気を含む生ゴミの堆肥づくりにぴったり。
野菜クズを利用して出来上がった堆肥は、容器の下から取り出せる仕組み。ミミズの堆肥は貴重で、農業でも重宝されます。
こちらは農場で刈り取った雑草を堆肥化中。水はけがよい柵の中で虫や微生物によって発酵・分解され、下のほうから植物由来の堆肥が出来上がります。
堆肥に生えたセリを引き抜き、「根っこが白いのは元気な証拠」と農場長の伊藤雅史さん。
日本では珍しい水牛も飼育しています(本州ではここだけ)。脂肪分の多い水牛の乳から作るモッツァレッラは大人気。乳だけでなく糞も大切な資源です。
堆肥舎へ向かう途中。手前の淡い黄色はブロッコリーの菜の花。奥の濃い黄色はカブの菜の花。
堆肥舎へ到着。ここで牛糞と鶏糞を堆肥化しています。発酵中の鶏糞を混ぜ返すと、湯気がもうもうと!温度計は60℃を指していました。
水分量を調整しながら発酵を進めて4カ月後の牛糞。表面にはキノコがぽつぽつと。微生物によるいのちの循環を実感。
15:50 【家庭で堆肥作り】コンポストバッグの使い方
堆肥ツアーの最後は、自宅で手軽にできるコンポストバックを使った堆肥づくりのデモンストレーション。
「今日感じたことを自宅でも取り入れてほしい」というフィールドガイドの吉田和哉さんに、「動物性の生ゴミは入れていい?」「上手く堆肥化できなくて腐ることは?」「堆肥を熟成させる場合、バックは2つ必要?」など具体的な質問が次々と。
途中で休憩も挟みつつ、約6時間を自然の中で過ごした第1回のプログラムは無事終了。次回は2023年4月16日「土づくりと生物多様性」をテーマにお届けします。
いのちのてざわりワークショップ「土づくりと生物多様性」
日時:2023年4月16日(日)10:00~16:30
場所:KURKKU FIELDS(千葉・木更津)
料金:1名 8,500円(税込)
◎KURKKU FIELDS