ノンアルドリンクの最新形 11 種類の製法を駆使した“リキッド・ガストロノミー”
France [Paris]
2024.02.15
text by Sakurako Uozumi / photographs by Thaï Toutain
(写真)二ツ星「ダヴィッド・トゥタン」では、お茶やジュース、クールブイヨンなどをベースに、抽出や濾過、二酸化炭素を注入するなど 11 種の製法を駆使したオリジナル・ノンアルドリンクを提案している。
近年、アルコールの消費量は低下しており、特に若者のアルコール離れは顕著だ。フランスのワインの消費量は年間1人あたり、1960 年は 128ℓだったのが、2018 年は 36ℓに減少*。その傾向は加速する一方だ。
これまでアンヌ・ソフィー・ピックの「ラ・メゾン・ピック(La Maison Pic)」やマウロ・コラグレコの「ミラズール(Mirazur)」といった三ツ星シェフの間で、ノンアルドリンクとのペアリングが行われてきたが、2023 年半ばから、パリのエッジの効いたガストロノミー店にもその波がやってきた。
二ツ星を擁する「ダヴィッド・トゥタン(David Toutain)」も、2023 年1月からペアリングメニューを始めた。「ドリンクを料理の延長と考えた、“リキッド・ガストロノミー”に取り組んでいます。アルコールフリーは酸味、苦味、渋み、甘味のバランスが鍵。化学的な実験に基づき、発泡、抽出、濾過、焙煎、煎出など 11 種類の製法を用いてオリジナルドリンクを生み出しました。ワインのように完成されたものではなく、レシピづくりから始めるので、発見とテイスティングの喜びがあります」とダヴィッド。
例えばハマチにキャベツとミントを合わせた皿には、冷たいホワイトティー(白茶)を合わせ、爽やかなフレッシュ感を与える。野ウサギの煮込みとカカオをまぶしたジャガイモのピュレには、サラワク産コショウを効かせたチョコレートミルクをペアリングし、ピリッとした苦味が料理をよりふくよかで香り高い一品に昇華させる。
ドリンクは牛乳やお茶、コンブチャ、コールドプレスジュースなどをベースにし、たとえば花蜜は減圧蒸留器で香りを抽出して液体に加えたり、クールブイヨン(野菜の煮汁やだし)にはヴィネガーなどの酸味をアクセントに用いてドリンクに仕立てる。
酸味の効かせ具合で料理とこの上なく調和したり、逆にパンチを与えるペアリングも。ワインとは異なる新鮮な驚きがあって、アルコールを飲めない人だけでなく、美食家にも喜ばれている。固定観念にとらわれない自由な発想は好奇心を刺激し、近年のアルコール摂取を控える流れにもマッチしていると言えそうだ。
*L’INSEE:L’Institut National de la Statistique et des Études Économiques(フランス国立統計経済研究所)調べ
◎Restaurant David Toutain
29 rue Surcouf 75007 Paris
☎+33.01.45.50.11.10
ランチ 158 ユーロ、188 ユーロ、248 ユーロ、298 ユーロ
ディナー 248 ユーロ、298 ユーロ
ノンアルペアリング 80 ユーロ、110 ユーロ、150 ユーロ、180 ユーロ
ワインペアリング 80 ユーロ、110 ユーロ、150 ユーロ、180 ユーロ
https://www.davidtoutain.com/
*1ユーロ=159 円(2024 年2月時点)
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