ふんわり発酵の風味が広がる「自家製バター」
【DIYレシピ】成田一世
2024.05.13
photographs by Tsunenori Yamashita
連載:DIYレシピ
塩蔵、乾燥、発酵・・・調理メソッド&テクニックを身に着けて、普段買っている食べ物を一から作ってみると、自分で味を作る喜びや安心感を得られます。天日に干したり、発酵させたり、自然の力にゆだねるレシピは、人間本位ではない生き方を学ぶ処方箋。シンプルな材料と道具で作れる自家製アイテムをシェフに教わります。今回は、チーズやスパイスを加えることでアレンジ自在な「自家製バター」をご紹介します。
目次
教えてくれた人:東京・神谷町「ル・サティネ」成田一世シェフ
根気よくホイップを続けるだけ
僕が自家製バターを作る理由は、日本で納得のいく発酵バターの入手が難しいから。乳を弱発酵させてから作る発酵バターは、独特の風味や旨味があり、豊かな味わい。ヨーロッパではこれがスタンダードで、食べ慣れると無発酵のバターは物足りなく感じます。日本では生産者がとても少ないし、輸入バターも、空輸過程でバター内の水分が一度凍って溶けて劣化するなども起こり得ます。
そこで僕は、手作りのバターに、マスカルポーネやフロマージュブランなど発酵した乳製品を少量加え、風味や旨味を補う方法を考えました。乳成分のうち、弱発酵するのは油脂分ではなく水分なので、生クリームから取り出した純粋な乳脂肪分に、加える乳製品の発酵した水分が入ることで、発酵バターに近い状態になります。
またこの水分があることで口当たりもよくなりますし、調理などに展開しても仕上がりが芳醇になります。たとえばバターを溶かし、加熱して焦がす「ブールノワゼット」。バター中の乳清が焦げることで起こるので、発酵の風味がより際立ちますよ。
牛乳や生クリームから乳脂肪分だけを取り出した、いわゆる純粋な「バター」づくり自体は、難しくありません。時間はかかりますが、作業はとてもシンプルです。純乳脂肪品をきちんと選んで(植物性油脂由来や安定化されたものだと分離しません)、根気よくホイップを続けていくだけ。
水分と脂肪分に分離するので、漉せば完成。クリームから表示の%分しか取れません(35%なら1リットルに対し350g)が、チーズやヨーグルトを混ぜ込むことで、仕上がり量もカバーできます。その際に塩はもちろん、ハーブや果汁、香辛料なども混ぜれば、フレーバーバターにもなります。いろいろ試してみると面白いでしょう。
「自家製バター」材料と作り方
[材料]
純生クリーム・・・適量
【道具のポイント】
[作り方]
[1] 撹拌する(低速→高速)
生クリームをボウルに入れ、ミキサーで泡立てる。最初は飛び散らないように低速で、徐々に高速に。ホイップクリームの状態を過ぎ、さらに回し続けると黄色みがかって分離してくる。
[2]撹拌する(低速に)
さらに回し続けると、黄色みが濃くなり、水分が滲み出て、ボウルの周辺に固まってくる。へらなどで落とし、ミキサーの速度を下げ、もうひと息回すと、完全に分離する。
[3]漉す
ブツブツの黄色い固まりと、透明がかった白い液体(バターミルク)に分かれたら、布とキッチンペーパーを重ねた中に流し入れ、漉す。
[4]絞る
手で優しくギュッと絞り、乳脂肪分だけ取り出した状態。ここに、マスカルポーネやフロマージュブランなど乳発酵食品を加えて完成させる。バターナイフなどで押し伸ばすように混ぜるとよい。
自家製バターの展開例
1.混ぜる
2.焦がす
3.モンテする
東京・神谷町「ル・サティネ」の店舗情報
◎ル・サティネ
東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA 2階
☎03-5422-1270
11:00~19:00
不定休
東京メトロ神谷町駅5番出口直結
https://www.lesatine.com/
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2015年7月号掲載)
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