和食に寄り添うフランスパン。味噌にも、焼き魚にも合う「パンフランス・ソイ」
ヴィーガンパン・レシピ 兵庫・神戸「パンと暮らしの サ・マーシュ」
2024.07.08
text by Yoko Soda / photographs by Tomoaki Kawasumi
ヴィーガンパン専門店の登場とともに、植物性の食材のみで作るパンのレシピが注目されています。動物性の旨味や油脂によるマスキングがなく、発現性を高めたい素材の味がダイレクトに伝わるというメリットを生かし、パン好きも満足するヴィーガンパンを焼く、職人たちの知恵と工夫に迫ります。
兵庫・神戸「パンと暮らしの サ・マーシュ」
西川功晃さん
砂大豆由来、だから
日本人の味覚と身体にフィット!
果物を使った華やかなデニッシュで「コム・シノワ」を全国的に有名にした西川功晃さん。自店を開いてからも、米粉やゴマ油を使ったパンや低糖質パンなど、時代に先駆けたパン作りに邁進する中、2005 年のリニューアル以後は一人でパンを焼く。「作業性や利益を考えず、絶対だと思うパンだけを作る。ベーシックなパンも全て配合を変えた」
焼くのは30種類ほど。基準は「日本人の毎日の食卓で、和洋どんな料理にも合い、飽きずに食べ続けられるパン」。食事パンとして、また焼き魚や味噌を使ったサンドイッチも向くパン。この和洋の融合は、パンに米粉を使い始めた09年頃から強く意識してきた。「パンフランス・ソイ」もその1つ。
国産小麦のハルユタカ100%。大豆由来のバター「ソイレブール」をフランスパン生地に10%練り込むことで、同じ豆製品である豆腐や味噌、醤油の風味と響き合う。日本人の味覚に合わないはずがない。国産小麦に藻塩と、素材も国産に。外はパリパリ、中はふんわり、もっちり。アレンジにも山椒や七味が合う。融点が低い油脂なので冷蔵しても硬くならない。
現在注目しているのが薬膳。クコの実や桂皮、黒豆粉などを用いたパンを試作中。「後世に残る日本のパンを」と、大きな目標を掲げている。
<植物性だけでおいしくなるコツ>
1 相性のよい国産素材を組み合わせる
2 融点の低い大豆バターは、手の温度で柔らかくする
「パンフランス・ソイ」の材料と作り方
[材料](粉1㎏仕込み/約12 個)
水・・・720g(72)
強力粉(江別製粉「ハルユタカ」)・・・1kg(100)
セミドライイースト・・・2g(0.2)
塩(藻塩)・・・16g(1.6)
発酵種(フランスパン生地)・・・100g(10)
モルトシロップ・・・2g(0.2)
ビタミンC・・・0.5g(0.05)*
*水200gに粉末1gを溶かしたもの
大豆クリームバター・・・180g(18)
*不二製油「ソイレブール」
※( )内はベイカーズパーセント。粉の総量を100%とし、その他の材料を粉に対する割合で示しています。
<材料の特徴 油脂>
大豆バターで一歩先へ
原料は、植物油脂、豆乳クリーム、豆乳、大豆粉、食塩。世界初の特許製法で作られた豆乳クリームを使用してバターのように仕上げたもので、原料の60%以上が大豆由来。動物性原料不使用なので、乳製品アレルギーにも対応できる。バターと比較して、トランス脂肪酸が約50%オフ、コレステロールが約97%オフ。大豆のコクや風味も強く出過ぎず、合わせる素材の風味を引き立てる。すっきりした後口も特徴。
[作り方]
[1]ミキシング
ミキサーボウルに水と粉を入れて低速で回し、粉気がなくなったらイーストを投入。低速で3分ほど回して混ぜる。
[2]オートリーズ
生地が乾燥しないようにカバーして15~30分休ませる。
[3]
ビタミンC、水、発酵種とモルトシロップを加える。
[4]
生地ミキサーを低速で1~3分程度回して塩を加える。さらに5分ほど回す。光沢が出て薄く伸ばせるようになったら終了。
[5]
大豆バターを手で潰すようにして入れ、低速で3分回す。
POINT:溶けやすいので手の温度を利用。油脂分は大豆バターだけ重たくならない。
[6]一次発酵
バンジュウに生地を出して伸ばし、蓋をして常温(25℃位)で30分置く。
[7]パンチ
四隅を内側にたたみ、軽く手の平で叩いて広げて平らにしたら30分休ませる。それを2回繰り返す。粉を振らず手に水をつけてパンチする。
[8]低温長時間発酵、復温
バンジュウに蓋をし、冷蔵庫(5℃)で12時間以上発酵させる。冷蔵庫から生地を出し、1時間程度置いて室温(25℃)に戻す。
[9]分割
打ち粉を生地の表面に振って、150gに分割する。
[10]丸め
手の平で台に押し付けるようにして丸める。
[11]ベンチタイム
30℃、湿度70%のホイロで30~40分休ませる。
[12]
粉を表面に振って、バンジュウを裏返して生地を出す。
[13]成形
生地を内に内に入れるようにして丸め、閉じ目を下にして並べる。
POINT:台には打ち粉をせず、内側に粉を付けないように丸める。食感を軽くする成形に。
[14]最終発酵
パンの表面に霧を吹き、30℃・湿度70%のホイロに入れ、30~40分発酵させる。
[15]
表面にしっかり打ち粉を振り、ハサミで中央を8つまみほどカットする。
[16]焼成
窯入れ。上火250℃・下火230℃でスチームを入れて14~15分焼成する。
<パンの食べ方>ビターチョコとミントで大人のおやつに
<生地展開>だしワカメや七味も練り込める!
◎パンと暮らしの サ・マーシュ
兵庫県神戸市中央区山本通3-1-3
☎078-763-1111
10:00~18:00(売り切れ次第終了)
月曜~水曜休
各線三宮駅より徒歩約12分
Instagram:@ ca_marche_2010
※営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。事前に店舗に確認してください。
(雑誌『料理通信』2020年6月号掲載)
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