11月8日(金)よりフェア開始。
茨城の秋の食材に生命を吹き込む、シェフ10人の発想。
2024.11.08
【PROMOTION】
text by Miyo Yoshinaga, Kyoko Kita / photographs by Sai Santo
今年9月、都内10人の実力派シェフたちが、栗、サツマイモ、常陸乃国しらす、常陸秋そば、銘柄豚肉・常陸の輝き、茨城県の豊かな秋の食材を視察し、料理のアイデアを膨らませました。菓子、フレンチ、イタリアン、中国料理、イノベーティブの料理人が、生産者や食材のどこにフォーカスし、どんなメニューを生み出したのか。11月8日(金)より提供が始まるメニューに迫ります。
視察の様子・食材の詳細は、初秋の茨城食材巡り。10人のシェフが生産者から学んだこと。
【10人のシェフの発想】
■「アクオリーナ」(祐天寺)茂垣綾介
■ ザ・キタノホテル東京「オランジュリー 光庵」(平河町)加茂健
■「キガルニワショク弾」(代々木上原)金子太一
■「アシッド・ブリアンツァ」(麻布十番)児玉智也
■「ジェフリー」(神楽坂)陣内翼
■ グランド ハイアット 東京「けやき坂」(六本木)本多良信
■「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ 」(石神井)岩澤正和
■「パティスリー イーズ」(日本橋)大山恵介
■「なかの中華!Sai」(中野)宮田俊介
■「アタ」(代官山)掛川哲司
素材 “らしさ”の純度を極める:「アクオリーナ」
「アクオリーナ」のジェラートを食べると、素材以上に素材を感じる。“らしさ”の純度を極限まで高めたようなピュアな味と香りが口いっぱいに広がるのだ。「ジェラートは素材ありき。素材の中にあるものしか表現できません」と茂垣綾介さん。国内の食材のみならず、海外のナッツなども自ら直接買い付けるほど、素材には強いこだわりを持っている。
今回は、「米川農園」の焼き芋をジェラートに仕立てた。米川農園では、品種による違いを楽しんでほしいという思いから6種類のサツマイモを焼き芋にして販売している。「米川さんの思いが伝わるジェラートにしたいですね。焼き芋としての完成度が高く、このままでも十分においしい。それをあえてジェラートにするわけですから、その意味を感じるようなものに仕上げたいです」
選んだ品種は「シルクスイート」と「ふくむらさき」という色も風味も対照的な2つ。「シルクスイートは名前の通り、繊細な甘味や風味をぎゅっと凝縮したようなおいしさでした。一方のふくむらさきは、土の香りというか、農産物らしいワイルドさを感じましたね」
焼き芋の皮を剥いてミキサーにかけ、ペースト状になったところに水と糖類を加える。焼き芋自体の糖度が高いため、加える糖分は控えめに。サツマイモと香りが近いきび砂糖はあえて使わず、グラニュー糖や水あめなど精製度の高いクリアな糖でサツマイモ本来の風味を際立たせた。
マシンを回すこと約5分でジェラートが完成。「シルクスイートのソルベット」を一口含むと、舌触りは滑らかで、焼き芋ならではの芳ばしい香りが鼻に抜ける。べっこう飴やキャラメルのようなコク深い甘味がありながらキレが良く、喉を通りすぎた後はサツマイモならではの素朴な風味が口の中に残った。
◎アクオリーナ
東京都目黒区五本木1-11−10
☎03-5708-5787
13:00~21:45LO(土曜、日曜、祝日は~20:00※LOなし)
月曜、火曜休、不定休
https://acquolina.jp/
◎茨城フェア
2024年11月23日(土)~12月7日(土)の期間中「ふくむらさきのソルベット」「シルクスイートのソルベット」(シングルの場合、ともに¥680・税込)を販売。
そばの実を乳製品と合わせて、温かく香らせる:「オランジュリー 光庵」
壁一面の窓の向こうに緑が映える。明るく寛いだ雰囲気と体に負担をかけないやさしいフレンチでゲストをもてなすメインダイニング「LʼOrangerie 光庵」。総料理長の加茂健さんは、常陸秋そばを生産する「イワセアグリセンター」で、長年探し求めていたという上質なそばの実に出会った。
「そばの実は、修業していた軽井沢のレストランで使っていました。当時はリゾットなどにしていましたね。他にない独特なテクスチャーや繊細な香りが好きで、いつかまた使いたいと思っていたんです。このそばの実は美しい緑色で香りも良く、とても気に入りました」
今回は、クネルに添える形でそばの実の多様な魅力を散りばめ、温かい前菜に仕立てた。スズキとホタテを使ったクネルはふわっとやわらかく、上品な旨味の中に清々しいエストラゴンがほのかに香る。
ソースの代わりにかけたのは、ブイヨンで煮たそばの実とジャガイモ、生クリームのエスプーマ。そば湯から着想を得たというそれは、ミルクのやさしい風味と一緒にふわりとそばの香りが口の中に広がる。仕上げに、煮たそばの実とこんがり炒ったそばの実をあしらい、食感のアクセントに。前者は舌触りはぬるっと、噛めばむちっとして、後者はカリカリした食感と香ばしい風味が楽しめる。
「そばの実は、乳製品と合わせても香りがしっかりと立ちます。炒ってキャラメルソースと合わせてミルフィーユに仕立てたり、そばの実のアイスも作ってみましたが、おいしかったですよ。料理からデザートまで幅広く使えるので、さらに使い道を研究していきたいですね」
◎LʼOrangerie 光庵
東京都千代田区平河町2-16-15 ザ・キタノホテル東京 2階
☎03-6261-1351(店舗直通)/ 03-3288-0015(ホテル代表)
7:00~10:00※宿泊ゲストのみ
12:00~15:00(13:30LO)、18:00~22:00(21:00LO)
日曜、月曜、火曜ディナー休
https://www.kitanohotel.co.jp/tokyo/
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、コース(ランチ¥6,000 / ディナー¥15,000 )、 アラカルト¥2,200・すべて税込・サービス料別)の一品として。
熟成栗の酸味を、ぬか床と合わせる:「キガルニワショク弾」
居酒屋よりきちんとした和食を、日本料理店よりもカジュアルに。そんなちょうどよい和食がコンセプトの「キガルニワショク弾」。隣接する系列イタリアン「オトナノイザカヤ中戸川」と仕入れを共同で行うため、料理長の金子太一さんはヤギやイノシシなど、肉類の扱いが得意だ。
「『高須ファーム』の常陸の輝きは脂身が甘く、赤身はきめ細やかで和食で使いやすい豚肉だと感じました」。豚肉に合わせたのは「愛樹マロン」の焼き栗「愛宕山(あたごやま)」。「専用の機械で焼かれた栗はほっくりとした食感とキャラメルのニュアンスがあって、自分でオーブンで焼くよりも格段によいです」。豚肉は治部煮に、焼き栗は葛で寄せて具にする。
常陸の輝きの肩ロースは、味噌にぬか床を加えた漬け地で漬け込んでから片栗粉をはたき、追い鰹で仕上げただしでさっと火を通す。器に栗の葛豆腐を盛り、火を入れた豚肉とだしをはり、仕上げに完熟赤山椒をぱらり。
「漬け地にぬか床を加えたのは、熟成栗の蜜のような甘さの中に酸味を感じたから。合わせることでより深みのある味わいが生まれるのではと考えました」と金子さん。
芳醇なだしをたっぷり吸った豚肉はしっとりやわらかで歯切れよく、ほっくり甘い栗豆腐が気持ちまでやさしくほぐす。ふわりと鼻腔をかすめるぬかの香りがどこか郷愁を誘う。
◎キガルニワショク 弾(オトナノイザカヤ 中戸川)
東京都渋谷区上原1-33−12 ちとせビル 2F
☎03-6804-8935
17:00〜22:00 LO
月曜休
Instagram:@otonaka914
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、「常陸の輝きと愛樹マロンの栗豆腐の治部煮」をアラカルト(¥2,800・税込)の一品として。
サツマイモに、動物性の旨味と発酵ソースを添える:「アシッド・ブリアンツァ」
東京・麻布十番「アシッド・ブリアンツァ」の児玉智也シェフは、北海道出身の34歳。道内のフランス料理店を経て、渡仏。仏・ノルマンディーの二ツ星「Sa.Qua,Na(サカナ)」やデンマークの二ツ星店「Kadeau(カドー)」などで修業後、ブリアンツァグループの現店シェフに就任した。店内の壁面には梅の酢漬けや松の実のシロップ、自家製コンブチャなどの瓶が並べられ、フランス料理と北欧料理を合わせた料理を提供する。
発酵を得意とし、食材の採集に山へ向かうことはあるが、産地を訪ねる機会は少なかったという児玉シェフ。「これまでどちらかというと調理技術を深堀りすることに興味が向きがちでしたが、視察を経験して、素材ありきの料理にも面白みを感じました」
もっとも気になったのは、「米川農園」のサツマイモだ。「熟成させた上で、生産者自ら温度管理をして焼き芋にまで仕上げている。食べた時、料理としてのあまりの完成度の高さに驚きました」。数ある芋の中から、メニューに選んだのはシルクスイート。糖度の具合がちょうどよく、ホクホクよりしっとりした食感が決め手だ。
「サツマイモに、動物性のコクと旨味を足していきます」。煮込んでから揚げた豚足を敷き、その上にセルクルで型取りした厚切りのシルクスイートの焼き芋をのせる。芋の表面には梅干しのペーストを薄く塗り、トリュフで覆う。器に盛り、タマネギやトマトなどの野菜から抽出した液体を発酵させたジュースとバター、生クリーム、コンテチーズなどを合わせたソースを注ぐ。
滑らかで濃厚なサツマイモの味に豚足の旨味とトリュフの香り、それらをつなげる発酵ソースのさわやかな自然な甘味と酸味。パンチがありながら、繊細な香りと余韻が漂う。
サツマイモをテーマに、小さなスナックも添えた。炭と水と粉だけの生地に生ハム、イチジクの葉を合わせた焼き芋のムースを詰めて、セリをトッピング。1口サイズだが、焼いた芋の懐かしい甘味と噛むほどに口の中に広がる芳醇な香りに陶然となる。
◎ACiD brianza
東京都港区麻布十番2-17−8 パークIビル 1F
☎03-5440-8885
12:00~13:00LO(土日祝のみ)18:00~19:00LO
火曜、水曜休
Instagram: @acid_brianza
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、コース(¥18,000・税込・サービス料別)の一品として。
香ばしいガレットでやわらかく香る素材を包む:「ジェフリー」
視察先で「そば粉をずっと探していたんです」と顔がほころんばせた、東京・神楽坂のフランス料理をベースにするイノベーティブレストラン「ジェフリー」陣内翼シェフ。神楽坂にはフランス人が多く、かねてよりガレットを出したいと質のよいそば粉を探していた。
「最も香りが強い菓子用の常陸秋そばのそば粉を使いました。香りはマイルドですが、品があります。料理の味わいが上品に仕上がる」。料理の味わいは上品であるべし、というのが陣内シェフの信条。強すぎる素材は使わず、旨味の強すぎるクラシックなソースにも頼らない。「素材を感じられることは、食べ手であるお客様のリラックス感にもつながる」と考えている。
「クレープのよさはもっちり感だけど、ガレットはカリカリ感の方がそばの香りも旨味も伝わりやすい。そのために生地は炭酸水で気泡を入れた生地で薄く焼きます」
具は鰻。薄餅で巻いて食べる北京ダックから発想した。「北京ダックはカリッとさせるけど、鰻ならカリっとしつつ身のふんわり感も出せる。ふんわり広がるような食感はそばの香りもまるく膨らませてくれます」。鰻は骨と赤ワインのソースで蒲焼のように焼き、一番やわらかい時期の秋の根セロリのサラダを合わせ、間にはゴマぺーストを忍ばせた。
香ばしくジューシーな鰻と、根セロリとゴマ、大葉、ハーブの淡く香る素材が重なり、最後はふわっと残るそばの香りが全体を包む。組み合わせの妙に唸る。
「僕の料理はシンプルな分、ごまかしがきかない。食感や温度帯、納得できない部分が少しでもあるとお客様に気付かれるから、試作は必ず10回以上はします」。客層の年齢は比較的高めだ。常連が多く、よいも悪いも感想は率直に伝えてくれる。食通に鍛えられて、シェフの料理も進化している。
◎Jfree
東京都新宿区神楽坂2-11−7 AY2ビル2階
☎03-6457-5547
11:30~14:00LO、18:00~21:00LO
Instagram: @jfree_kagurazaka
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、「鰻と常陸秋そばのガレット仕立て 北京ダック風」をコース(¥19,800・税込・サービス料別)の一品として。
鉄板スタイルで再構築。新感覚のフライドライス:「けやき坂」
食を通じた地域活性化に取り組む、東京・六本木の「グランド ハイアット 東京」。鉄板焼レストラン「けやき坂」本多良信料理長は、市場のように並べられた地域の食材を背に、洗練された鉄板技を駆使しながら、ライブ感のある独創的なメニューを展開する。今回は、視察で訪れたすべての食材を使って3つのメニューを考案した。
常陸秋そばは、舌平目の切り身に小麦粉の代わりにそば粉をはたき、皮目にそばの実を叩いてムニエルに。衣のクリスピーな食感とやわらかな身のコントラストが軽快。グリュイエールチーズを加えた濃厚なブールブランソースとポルチーニが濃厚な旨味を添える。
「脂身が甘く、口溶けがいい」という常陸の輝きは、極厚の肩ロース肉で揚げないトンカツに。細挽きパン粉を付けて、弱火でじっくり中心までミディアムレアに焼き上げた。
付け合わせは「米川農園」のべにはるかと紅玉のピュレ。べにはるかは、弱火で約6時間蒸して糖度を上げ、リンゴの酸味と合わせて豚肉に添える。トンカツのボリュームのある味わいをとろとろの甘酸っぱいソースがキリッと締める。
「安重水産」の常陸乃国しらすは、鉄板焼きの名物、フライドライスに。合わせたのは栗のチュイルだ。「栗ごはんのホクホク感が個人的に好きではないので、栗の甘い風味だけを活かすためにごはんとは別のパーツにしました」。鉄板で砂糖と水を生地を流し、「愛樹マロン」のむき栗をすりおろして焼き上げる。しらすの酸味と塩気に、サクサクした栗のほの甘さ。絶妙な甘じょっぱさが後を引く。
◎けやき坂
東京都港区六本木 6-10-3 グランド ハイアット 東京4階
☎03-4333-8782(直通)
11:30~14:30(土曜、日曜、祝日は~15:00)、17:30~21:00
無休
https://www.tokyo.grand.hyatt.co.jp/restaurants/keyakizaka-restaurant/
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~12月8日(日)の期間中、「舌平目 常陸秋そば クリスピー ムニエル ポルチーニトマトソース」(¥2,500)、「鉄板とんかつ 常陸の輝き 豚ロース べにはるかと紅玉のピューレ」(¥3,500)、「鹿島灘 釜揚げシラスのフライドライス マロンチュール」(¥1,400)をアラカルトで提供。
日本のそば粉の未来を拡げる:「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ 」
「こんな東京の端っこの小さな店にね、頼ってくれて有難いよ。ホント」としみじみつぶやく、練馬区石神井「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ 」岩澤正和 シェフ。
自社農園の運営に地元農家との連携、コロナ禍では医療従事者応援の弁当販売、農業福祉連携活動、限界集落への出店や、日本在来の種を守る活動、余剰食材の製品化など、食の問題を聞きつけては、何かできることがあればと奔走する。近頃ではその行動力と人柄を慕い、面識のない人から相談を持ち掛けられることも増えたという。
茨城県の産地視察では、そば粉との出会いに可能性を感じた。「ピッツァ業界でもグルテンフリーの需要が高くなっています。そば粉は日本各地にあるし、料理人全体で守るべき食材。各ジャンルでシェフたちがちゃんと向き合えば新しいものが生まれると思う。産地ではアレルギーの問題で少しでも小麦混入の可能性があると流通できないと聞きました。協力できることもあるかもしれない」
まずはそばがきの要領で常陸秋そばの粗びき粉で作った衣でチーズの天ぷら、イタリアの郷土料理、シャットを揚げる。カリッと香ばしく、ワインに合うほのかに滋味のあるおつまみだ。
次はそば粉のパスタ。中・強力粉に常陸秋そばのそば粉を8割加えてオレキエッテにする。ソースは自生する秋のヨモギ、仕上げには練馬の青ミカンのパウダーを散らす。「最強のジャパニーズパスタです」と担当した廣瀬公彦さん。
伝家の宝刀、ピザに選んだのは「安重水産」の釜揚げの常陸乃国しらす。生地はオリジナルで開発したピザ専用粉だ。ソースを伸ばしたら、しらすは2段階でトッピングをする。「そのままが一番おいしいからね。焼く前の生地にたっぷりのせて窯に入れて、しっかり香りを出したら、一度取り出し、焼き上がりの直前にものせて軽く温める。香ばしいしらすと、レアに火が通ったしらすの味とふんわりした食感が両方楽しめる」
デザートには笠間の栗農家「愛樹マロン」の栗、中でも剝きやすさが評判の品種、ぽろたんをモンブランに仕立てた。「うちでは練馬の江戸栗を使ってきたけれど、比べると随分大きくて驚きます。宝物として大事に使いたいね」と岩澤さん。渋皮煮にして丸ごとメレンゲの中へ。「しっとりジューシーで、甘味も強いから、バランスをとるために砂糖の量は減らして、生クリームの脂肪分も調整しました」とパティシエの野澤圭吾さん。料理の最後でもするっと食べられる軽い口当たりだ。
◎ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ
東京都練馬区石神井町2-13−5
☎03-5923-9783
11:30~14:00LO 17:30~22:00LO
水曜、木曜休、不定休あり
https://filippo.jp/
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、「常陸秋そばのシャット」(¥780)「常陸秋そばのオレキエッテ」(¥2,200)「常陸乃国しらすのビアンカビアンケッティ」(¥2,800)「茨城県産和栗のモンブラン」(¥1,500)をアラカルトで提供。
皮と粉。そばの実を丸ごと生かすダコワーズ:「パティスリー イーズ」
ダージリン、ジャスミン茶、ウーロン茶、玉露やほうじ茶に加え、ハーブティではカモミールやヴェルヴェーヌなど、いくつものお茶を使いこなしては美しく香る菓子を展開する、東京・茅場町の「パティスリー イーズ」大山恵介シェフ。
常陸秋そばの香りをどう引き出すかについては、「少し難しかったです。笠間の栗と合わせることも考えましたが、秋そばの香りはかなり繊細で、少しでもほかの素材を加えると負けてしまう。そこで各パーツにそばを使ったダコワーズを作りました」
早刈りの常陸秋そばの実をフードプロセッサーで粉砕し、粉と皮に分ける。皮は香ばしく炒った後、そば茶の要領で牛乳を加えて煮出す。煮出した牛乳と、実から粉砕したそば粉でとろみをつけたカスタードクリームを作り、ここにイタリアンメレンゲのバタークリームを加え、混ぜ合わせる。
ダコワーズの生地は2割ほど常陸秋そばのそば粉を加える。表面には、皮を香ばしく煎ったものを散りばめて焼成。そばの風味に合うようにクリームにはほんの少し塩を利かせて、そばのバタークリームをサンドする。
表面はサクッと、中はふわりと軽やかな生地に、穏やかな甘さのそばのクリーム。咀嚼するほどにやさしい香りが立ち昇る。寒い季節にも温かみを感じる、どこか”和”のニュアンスのあるダコワーズだ。
◎Pâtisserie ease
東京都中央区日本橋兜町9-1
☎03-6231-1681
11:00~18:00(イートインは〜17:00)
水曜休
https://patisserie-ease.com/
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、「常陸秋そばの実のダコワーズ」(¥650・税込)を提供
万能調味料で、しらすを主役にする:「なかの中華!Sai」
魚介を中心に、淡い味付けで素材を生かす広東料理を提供する、東京・中野「なかの中華!Sai」。
宮田俊介シェフは、「安重水産」の常陸乃国しらすをなんとXO醤に仕立てた。「ヒントにしたのは、修業時代に教わった「銀魚醤」(じゃこジャン)のレシピです。本来のレシピでは、ちりめんじゃこをはじめ20種類以上の材料で複合的な味わいにする調味料ですが、今回は現地でいただいたしらすの味を柱にするために、他の素材の分量を大幅に調整しました」
しらすは一度焼いて香ばしさを出すため、ちりめんじゃこではなく、水分を多めに含んだしらす干しを選ぶ。しらすの量はレシピから3倍に増やし、干しエビや蝦醬、甜麺醤、ニンニクなどと一緒に炒め煮にする。干しカレイや海鮮醤など魚介系の旨味は極力減らした。「しらすの味わいを主役に、ほかの材料で下支えするイメージです」
ファーストインパクトはしらすの圧倒的な旨味。その後にそれを引き立て、彩るように調味料の旨味が広がる。まさに主役級のしらすのための醤だ。
汎用性が高いため、さまざまな料理に展開して提供する予定。例えば、海鮮と野菜の炒めもの。鍋にしらす醤を入れて火にかけたら少量の水を注ぎ、火入れしたアオリイカとマイタケやマコモダケ、エリンギ、甘長トウガラシなどを炒める。「しらす醤のように調味料の味をストレートに出したい時には、スープではなく、水を使います」
もう一品は、常陸秋そばのそば粉を使った水餃子。生地にそば粉を6割加えた。「小麦だけだともちっと食感ですが、そば粉を加えることで、厚めの生地でもぱつんとした面白い歯切れの生地になりました」。そば粉にほのかな鉄分を感じたことから、餡は赤身の強い鹿肉を選んだ。黒酢をつけて食べるとそばの香りがふっと立ち上がる。
◎なかの中華! Sai
東京都中野区野方1-6-1 カサフェリス 1F
☎03-6454-0925
11:30~13:30LO(土曜は12:00~13:30LO)※なくなり次第終了
18:00~21:00LO
月曜、日曜休
Instagram:@nakanochinese_sai
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、「常陸乃国しらす醤」を使った料理、「常陸秋そばと鹿の水餃子」(¥1,600・税込)を夜のアラカルトで提供。
スペシャリテを茨城食材でアップグレード:「アタ」
全国の飲食店やイベントのプロデュースに加え、産地視察も数多くこなす東京・代官山のビストロ「アタ」掛川哲司シェフ。シェフの目にも、茨城県は可能性豊かに映ったよう。「食材のレベルはもちろんですが、種類の豊富さにも驚きました。なにより東京に近いのはアドバンテージですね」
今回は常陸の輝きの豚肉と「愛樹マロン」の栗、かすみがうら市で完全放し飼いで飼育された「西崎ファーム」の鴨を使い、茨城尽くしのパテアンクルートを作る。
「常陸の輝きはパテにすると脂が落ち着いてクリアな味が引き立ちます。『愛樹マロン』の栗は焼き栗のチャンクがあったので、下処理が不要なのが助かりました。使う料理の幅が増えそうです」
調理を担当したのは三本康進(やすゆき)さん。「うちのスペシャリテである鴨と栗のパテアンクルートをアレンジした形です。常陸の輝きの穏やかで自然な味を生かすために、ハーブは香りの強いローズマリーは使わずセージとタイムだけに。塩分もいつもより控えました」。栗はたっぷり使用。「いつもより多めに加えています。肉のジュを吸って栗自体もより風味豊かに仕上がりました」
豚と鴨の旨味に、栗の淡い甘さとイチジクの果実味、パイ皮のバターの香りが調和し、一口ごとに贅沢な味わいが広がる。
◎Äta
東京都渋谷区猿楽町2-5 1階
☎03-6809-0965
17:00~翌2:00
日曜休
https://www.facebook.com/ata.daikanyama
◎茨城フェア
2024年11月8日(金)~11月22日(金)の期間中、「パテアンクルート ア・ラ・イバラキ」(¥1,980・税込)をアラカルトで提供。