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JOURNAL / 世界の食トレンド

ノルウェーにボッレ(丸パン)ブーム到来。“愛が詰まった特別なボッレ”を探せ!

Norway [Oslo]

2025.05.19

ノルウェーにボッレ(丸パン)ブーム到来。“愛が詰まった特別なボッレ”を探せ!

text & photographs by Asaki Abumi
北欧のパンと言えばおなじみシナモンロール。10月4日は国際シナモンロールの日(kanelbullens dag)
だ。

ノルウェーでは今、“ボッレ・ブーム”が起きている。英語でバン(bun)とも呼ばれるパン=ボッレ(bolle)は、シナモンロールのような小さくて丸い甘いパンを指す。ノルウェーでは伝統的な食生活の一部として、長い間人々に愛されてきたパンでもある。その愛が今、さらに加速しているのだ。

首都オスロではその影響が顕著だ。
「近所のベーカリーで、焼き立てのおいしいボッレを食べることを楽しみにしている人が増えている」と、全国紙『アフテンポステン』は報じている。地元の専門店のパンは、「新鮮で愛が詰まっている」と。

「愛が詰まっている」とは、どういうことだろう。それは、スーパーで買うような大量生産や輸入した冷凍パンではなく、職人たちが厳選した食材とレシピで心を込めて作ったもの。焼き上がりと共に店内に広がる、うっとりするような香り。

そんな「愛が詰まった」ボッレ・ブームに、SNSで自らパンを捏ねて焼く光景を投稿するインフルエンサーも登場。TikTokで日々、動画投稿しているインフルエンサーが限定ポップアップカフェを開くとなると「ぜひ食べに行きたい!」とフォロワーが殺到する現象が起きている。

オスロのカフェ&レストラン「ザ・リトル・ピクル(The Little Pickle)」で、日々サワードウブレッドを焼いている宮脇司さんとのぞみさんは、このボッレ・ブームをどのように分析しているのだろうか。

ベイカーとして働く宮脇のぞみさん、司さん夫妻
2023年にノルウェーに移住し、ベイカーとして働く宮脇のぞみさん、司さん夫妻(文末に記事リンクあり)。世界各地のベーカリーで研鑽を積んだ司さんによれば、国際シナモンロールの日の発祥地でもあるスウェーデンでもボッレ文化は強く、10月4日当日になると、「信じられない量が売れている」とカルチャーショックを覚えたそうだ。

ノルウェーでの流行は、デンマークとスウェーデンの影響が大きいと司さんは考えている。コロナ禍に自宅で過ごす時間が増え、世界的にベーキングブームが到来。インディペンデント・ベーカリー(アーティザン・ベーカリー、マイクロ・ベーカリーとも)が活況を呈し、特にコペンハーゲンでは著しく増えたと司さんは振り返る。コペンハーゲンはここ5年ほどで、“食の街”発信地として世界的にも注目され、次第に北欧各地で「〇〇〇(有名店)のカルダモンロールを食べたよ」という投稿がSNSで増え、ノルウェーのボッレ・ブームに繋がっていると司さんは話す。

「ボッレはちょっとした、おやつ感覚」と、のぞみさんはその魅力を語る。
「ブラックコーヒーと一緒に食べたいのがカルダモンロールやシナモンロール。ふわふわしていて、いつでも気軽に食べることができる。ボッレといっても、店ごとにスタイルやレシピは異なり、バターがすごく入ったリッチなところもある。私たちは軽めを目指しています」

北欧の人々が日常で見つける幸せに、ボッレの存在があることは間違いない。

ザ・リトル・ピクルのカルダモンロール
ザ・リトル・ピクルのカルダモンロール。ボッレには様々な形や味があるが、必ずしも新しいコンセプトが人気となるわけではない。シナモンやカルダモンを使用した定番のボッレが相変わらず愛されている。
ザ・リトル・ピクル店内
ザ・リトル・ピクルは2024年にミシュランにも掲載され、晴れた週末には行列ができるほど。
ザ・リトル・ピクル店内

The Little Pickle
Jens Bjelkes gate 9a, 0562 Oslo
☎+47 412 22 839
ベーカリー 水曜~金曜9:00~15:00(土曜、日曜10:00~)
レストラン 水曜~土曜17:00~22:00、日曜日 15:00~18:00
月曜、火曜休
シナモンロール、カルダモンロール各50ノルウェークローネ
https://www.thelittlepickle.no/

*1ノルウェークローネ=13.8円(2025年5月時点)

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