塗って焼く、漬けて料理する、ぬか床ごと煮る! 驚きの「ぬか漬け進化形」
レスキューレシピ【発酵編】
2026.04.09
text by Noriko Horikoshi / photographs by Tsunenori Yamashita
連載:レスキューレシピ
日本の食品ロス量は年間464万トン*と言われています。生産者が丹精込めて作った食材を無駄にしないための活用レシピをシェフに教わる連載「レスキューレシピ」。今月は、発酵の力を借りておいしく食べ切る知恵を紹介します。2回目は、野菜を漬けるだけじゃない、新しいぬか漬けの楽しみ方に迫ります。
*農林水産省「食品ロス量(2023年度推計値)」(前年度比-8万トン)」
目次
教えてくれた人:薬膳・発酵料理家 山田奈美さん
神奈川・葉山「古家1681」にて「たべごと研究所」を主宰。和食薬膳教室、離乳食教室、発酵教室などを開催している。著書に『ぬか漬けの基本。はじめる、続ける』『昔ながらの知恵で暮らしを楽しむ家しごと』『砂糖なしおやつ』『からだが整う一汁一菜』『昔の知恵からはじめる 回復のためのレシピ』など多数。メディア出演やセミナー講師も務める。YouTube動画「山田奈美の発酵暮らし」も好評。
旨味、酸味、塩気が揃った頼れる調味料
漬けるのも食べるのも毎日。もはや生活の一部といえる山田奈美さんのぬか漬け歴は、かれこれ25年に及ぶ。現在愛用のぬか床も、既に23年の年季入り。
「熟成が進むほどに菌が増えて、どんどんおいしくなる。ここまで古くなると環境も安定して、めったなことで傷みません」
レパートリーは増えに増え、キュウリやナスなどの定番枠に、もはや到底収まりきらず。山田家のぬかを床を掘っていくと、ジャガイモやトマト、キノコ類、さらなる変わりダネでは卵やリンゴまで、出てくる出てくる、お宝が。ぬか漬けって、こんなに自由でよかったのか!と、膝を叩く手が止まらない。
漬けた素材を加熱調理に発展させれば、さらに味わいの幅と厚みが増す。わかりやすいのが、肉や魚だ。表面に薄くぬかをまぶし、袋に入れて放置。ただそれだけの鶏や豚の肉が、一晩でかくもコク深く複雑に化けるとは。
「旨味、酸味、塩気。ぬかには三つの要素が全部そろっているから、味つけなしで味がピタッと決まる。頼れる調味料です」
ぬか漬け進化形1:塗って焼く
肉、魚介、水分が多い豆腐などはぬか床を傷める恐れがあるため、取り出したぬかをまぶす、“別漬け”にするとよい。軟らかいアボカドや茹で卵にもお勧めの漬け方。
「鶏肉のソテー」材料と作り方
ぬか漬けの肉や魚は、ソテーやボイルなどのシンプル調理が一番。目にもおいしそうな照りと、こっくりと深い旨味。塩なしでもピタッと味が決まるのがうれしい。
[材料](1皿分)
鶏モモ肉・・・1枚
ぬか床・・・適量
タマネギ・・・適量
[作り方]
[1]ぬか床を塗る
鶏モモ肉の全体にぬか床をまんべんなく塗り、密閉袋に入れて1晩漬ける。【POINT】塩は加えず、味付けはぬか床に含まれる塩分のみ。すぐに食べない場合は冷蔵庫へ。この状態で2~3日はもつ。
[2]ぬかを洗い落とす
ぬかを洗い落として水気を拭き取る。
[3]焼く
フライパンにサラダ油を入れて中弱火にかけ、鶏肉を加え、香ばしい焼き色がつくまでじっくり焼く。
[4]タマネギを炒める
途中でタマネギのスライスを加えてしんなりするまで炒める。皿に盛る。
ぬか漬け進化形2:ぬか漬けを料理する
そのまま切って食べるだけでなく、つぶして、煮込んで、和えて、と料理にもアレンジできるのが、ぬか漬けの面白さ。漬かり具合によって微妙に変わる旨味や酸味の強弱、味の変化を確かめるのも楽しい。
「カリフラワーと豆腐のポタージュ」材料と作り方
一見、和風懐石のすりながし風だが、ふわりと匂い立つ発酵の香り、酸っぱさを含んだ旨味に、ぬか漬けの存在感がくっきり。浅漬けで塩気が少なく感じられる場合は、白味噌を足してもOK。
[材料](2人分)
カリフラワーのぬか漬け*・・・30g
豆腐のぬか漬け**・・・100g
だし・・・200ml
*カリフラワーは適当な大きさに分け、蒸して冷まし、1日漬ける。
**豆腐はキッチンペーパーに包み、重石をして水気を切り1日別漬けする。
[作り方]
[1]ぬかを洗い落とす
カリフラワーと豆腐はぬかを洗って落とす。
[2]ミキサーで滑らかにする
鍋に入れ、だしを加える。バーミックスで撹拌し、滑らかにする。
[3]温める
中弱火にかけて温める。器に盛り付け三つ葉(分量外)を飾る。
ぬか漬け進化形3:ぬか床を料理する
ぬか床は、それ自体が旨味の塊だ。発酵のチカラにより、塊肉も短時間でもふっくら軟らかく煮上がる。煮汁に溶け込んだぬかの風味が、クセになるおいしさ。
「豚のぬか山椒煮」材料と作り方
調味料を加えたぬか床に一晩漬けた豚を、ぬかごと鉄鍋に入れてコトコト煮込むこと20分。通常のレシピよりはるかに早く、ほっくりと柔らかい煮上がりに感激!
[材料](作りやすい分量)
豚塊肉・・・300g
ぬか床・・・50g
味噌・・・50g
酒・・・50ml
みりん・・・35ml
水・・・3カップ
ショウガ(せん切り)・・・1片
実山椒*・・・10粒程度
*実山椒は茹でてあるもの。なければ佃煮や粉山椒でもよい。(粉山椒の場合は小さじ1/2程度)
[作り方]
[1]漬ける
豚塊肉をビニール袋に入れ、ぬか床、味噌、酒、みりんを加えて一晩漬け込む。
[2]火にかける
鍋に1を漬け床ごと入れ、水、ショウガ、実山椒を加えて中弱火にかける
[3]煮込む
沸いたら弱火にして竹串がすっと通るまで、20~30分炊く。食べやすい大きさに切り分ける。
(雑誌『料理通信』2019年5月号掲載/本文はウェブサイト用に一部調整しています)
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