90歳。「あんこの仕込みは、まだまだ私がやらなくちゃ」
生涯現役|静岡・藤枝「まるか村松商店」村松加寿子
2026.04.23
text by Fumiko Kano / photographs by Yoshiko Ikoma
連載:生涯現役シリーズ
世間では定年と言われる年齢をゆうに過ぎても元気に仕事を続けている食のプロたちを、全国に追うシリーズ「生涯現役」。超高齢社会を豊かに生きるためのヒントを探ります。
村松加寿子(むらまつ・かづこ)
御歳90歳 1935年(昭和10年)10月30日生まれ
静岡県藤枝市藤枝生まれ。23歳で村松家に嫁いだ後、家業であるお茶の斡旋業を手伝いながら4人の娘を育てる。夫を亡くした後は、娘や孫たちとともに「まるか村松商店」として「お茶屋さんが営む和カフェ」を切り盛りする。朝早くから炊き上げる特製あんこは、先代の義母仕込み。
(写真)朝6時半頃に起床し出勤。10時の開店まであんこやおでんの仕込みを行う加寿子さん。夏場はかき氷、秋から冬は大判焼きや団子用にと、年中活躍するあんこは、あんこだけを買いに訪れる常連客も多い。病を患ってから週に1回の運動を欠かさない元気な“看板おばあちゃん”。
義母から孫へ受け継ぐ、あんこの道
毎朝何時くらいに起きてるかって? 6時か6時半くらいかしら。ここに嫁いだのは23歳の時で、それ以来、ずっとこのお店で働いてきたね。あんこの炊き方を教えてくれたのは、先代のお義母さん。元々、このお店は明治の末期から続くお茶屋(お茶の斡旋業)だったんだけど、お義母さんの代でせっかくお茶のプロなのだから、お茶に合う甘味も一緒に楽しんでいただこうと、この業態を始めたの。昔はこの通りの1本先にお店があったのよ。
お義母さんは、しっかり者でなかなか厳しい人でね。でも、義父母も夫も早くに亡くなってしまったので、38歳で未亡人。それからは私が店を切り盛りすることになりました。
いまの屋号は私の代で2つ目。「まるか」の「か」は「かづこ」の「か」(「まる」は屋号の伝統的な家印である丸印の意)。女手一つだったけど、近所の人たちに助けられながら、今があります。この店は次女が継いでくれたの。次女以外の娘たちやその旦那さん、孫や孫の嫁も手伝ってくれて、お茶の小売りも合わせてみんなで経営しています。嬉しいね。
あんこは、足りなくなりそうになったら仕込むよ。大体1〜2日にいっぺん(1回)くらいは作ってるかな。大釜に数十キロ。とにかく小豆がやわらかくなるまで辛抱強く煮るのがポイント。そうしないと味が染み込まないから。あんこの粘度は、メニューごとに変えてます。大判焼きなら少し硬め、かき氷だったら緩め。季節や小豆の状態によっても変えます。この塩梅が難しいから、あんこの仕込みはまだ私がやらなくちゃと思ってる。
大判焼きの種類はたくさんあるよ。あんこはもちろん、うぐいすあんも自家製。あとは若い子が好きなチョコレートとかキャラメル、ヨーグルト味みたいなスフレとか。みんなで考えてメニューを増やしています。今人気なのは「あんバター」。このバターもね、パティシエの孫が作った岩塩入りのバターなんだよ。これはぜひ、でき立てを食べて欲しいね。
おでんも、冬場は毎日仕込んでるよ。静岡は昔から、和菓子屋や駄菓子屋にはおでんが普通に売られているんです。だしは、お店によって違うんでしょうけど、うちの店は鶏ガラとか宗田節とか、あと静岡おでんに欠かせない牛すじも。牛すじは、串とは別に、だし用にも入れる。もう、結構な量を入れちゃうね。昔はほら、そこのテーブルの蓋の下におでん鍋が付いていて、お客様の前でぐつぐつ温めて提供していたの。今はもう使ってないけどね。
大病を患ったこともあったね。いまは、病気に負けないよう歩いたり、週に一度体操にも通っています。座りながらできる簡単な体操だけどね。お店の経営のこととかも見たりしているけど、お金のことは、家族はみんなまだまだ修行中(笑)。何より、あんこの仕込みはまだまだ私じゃなくちゃ。だから、元気でいなくちゃね。
毎日続けているもの
「あんこ」
◎まるか村松商店
静岡県藤枝市藤枝2-6-26
☎054-643-1280
10:00~17:00LO 水曜休(営業の日も有)
JR線藤枝駅より車で10分
Instagram:@marukamuramatsu
■ご意見・情報はメールで(info@r-tsushin.com)
(料理通信)
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