英国産チーズで提案する、セイボリーな“アフタヌーンティー”
England [London]
2026.11.02
text by Yuka Hasegawa / photographs by Firmdale Hotels
英国式アフタヌーンティーを象徴する3段スタンド。上段には、英国産チーズを使ったマカロンやエクレア、タルトなどが並ぶ。中段の主役は、フィンガーサンドイッチに代わるウェルシュ・レアビット。英国の伝統的なチーズ・オン・トーストを、ウェールズ産の生乳製チェダー「ハフォッド(Hafod)」を使い、ドーナツ仕立てに再構築した。下段は「モンゴメリーズ・チェダー(Montgomery’s Cheddar)」を練り込んだスコーン。さらにリコッタのチーズケーキも添えられ、英国チーズの多彩な魅力が満喫できる。
1840年代の英国、ベッドフォード公爵夫人が社交の場として午後のお茶会を始め、上流階級の女性たちの間に広まったとされる“アフタヌーンティー”。今では本家英国のみならず、世界中で愛される優雅なティータイムの習慣となった。
ロンドンでは、フィンガーサンドイッチなどを含む伝統的なものをはじめ、フランス人のカリスマ・パティシエが手がけるもの、英児童文学の古典『不思議な国のアリス』をテーマにしたユニークなものまで、そのスタイルは百花繚乱。中でも昨今注目を集めているのが、2026年5月、ロンドンを代表するブティックホテル「コベントガーデン・ホテル」の「ブラッセリー・マックス」に登場した、英国産のアルチザン・チーズを主役に据えたセイボリーな“アフタヌーン・チーズ”だ。
コベントガーデン・ホテルといえば、ロンドンに8軒、そしてニューヨークにもホテルを展開する、ブティックホテルの老舗「ファームデール・ホテルズ」グループを象徴する一軒。同グループのエグゼクティブ・ヘッドシェフ、ジョー・フォックス氏は、「ファームデールでは、それぞれのホテルの立地、文化、歴史から発想を得た、独自のアフタヌーンティーを提供しています。『コベントガーデン・ホテル』では何を?と考えた時に、チーズをテーマにしたアイデアが浮かびました」と語る。ホテルのすぐ近くには、1979年にコベントガーデンで創業した英国アルチザン・チーズ専門店の草分け「ニールズヤード・デイリー」があり、加えてフォックス氏自身も英国チーズの愛好者だったという。
イメージしたのは、単なるチーズボードではない。「テーブルに運ばれてきた瞬間、伝統的なアフタヌーンティーに見紛うようなプレゼンテーションにしたかった」とフォックス氏。試行錯誤を重ね、3段スタンドには、ゴートチーズとキャラメリゼオニオンのマカロン、英国を代表する青カビチーズ、スティルトンが詰まったエクレア、チェダー製法と欧州の山のチーズの製法を融合させたハードチーズ「リンカーンシャー・ポーチャー(Lincolnshire Poacher)」を使ったタルトなどが盛られている。アフタヌーンティーのおなじみのフォーマットを保ちながら、チーズを主役とする端正なセイボリーの一口へと仕立てている。
3段スタンドに先立って供されるのが、英国を代表する白カビチーズ「タンワース(Tunworth)」とスティルトンの2種類のアイスクリーム。アミューズ・ブーシュのように供され、サプライズで楽しいこの演出はゲストから好評を得ている。
ペアリングは、「紅茶なら、ミルクティーは甘いアフタヌーンティー向きですが、アフタヌーン・チーズは、よりすっきりしたベリーティーやグリーンティーがおすすめです」とフォックス氏。チーズの豊かなコクと旨みを受け止めながら、後口を軽やかに整えてくれる。また英国産スパークリングワイン「ガスボーン(Gusbourne)」のブラン・ド・ブランも一押しだそう。
英国では、クリスマスが近づくにつれてチーズの存在感がぐっと増す。「これからまさにチーズの季節。ニールズヤード・デイリーと相談しながら、その季節ならではのチーズやミンスパイを取り入れたアレンジも検討していきたい」とフォックス氏。英国を象徴する二つの食文化、アフタヌーンティーとチーズを重ね合わせたこの試み。チーズが最も似合う冬を迎え、いよいよ本領を発揮しそうだ。
◎Brasserie Max at Covent Garden Hotel
Covent Garden Hotel
10 Monmouth Street London, WC2H 9HB
アフタヌーン・チーズ 13:00〜16:45 予約要
56ポンド(イングリッシュ・スパークリング・ワイン付きは72ポンド)
https://www.firmdalehotels.com/whats-on/afternoon-cheese
*1ポンド=209円(2026年10月時点)