イタリアで活躍する日本人シェフに訊く
イタリア料理人として生き抜くための“ 食材選び”vol.1 「Ristorante TOKUYOSHI 」徳吉洋二シェフ 編
2017.08.05
text by Sayaka Miyamoto / photographs by Makoto Nakajima
イタリア料理は、「その土地で育まれた食材を、いかにおいしく食べるか」という知恵から生まれた料理といわれます。
イタリア人を相手に、本場で勝負する日本人シェフたちは、イタリア料理の武器である食材を、どのように選び、料理に落とし込んでいるのか。その考え方に迫ります。
食材探しから、“おもてなし”はスタートする。
「和食の魅力って何だと思います?」
インタビューするはずのシェフにいきなり質問され、唐突さに言葉が出ないでいると、「旬を楽しむことでしょ」、と素早く突っ込まれた。
イタリア本国でイタリア料理を提供し、開店から10カ月でミシュラン一ツ星を獲得した「リストランテ・トクヨシ」の徳吉洋二シェフ。今、料理界で最も注目される料理人の一人だ。
旬が大切なのはイタリア料理も同じだから、常にアンテナを張り巡らせ、食材の情報を仕入れ、旬をリサーチする。これだ、と思った食材を訪ねてイタリア全国を回る。探す旅にかける経費は毎月3000ユーロ。それが多いのか少ないのかはわからないが、とにかく食材を探し歩く。
「でも、いくら生産方法も味もよく、旬真っ盛りの食材でも、普通のマーケットで買えるものを普通に出したのでは、プロとは言えないですよね」と言う。普通では手に入れられない食材をプロが調理してこそ、人はわざわざ食べにきてくれるのだ。
多くの素晴らしい食材に出会う中、今、特に惹かれているのがシチリアのノートで採れる食材たちだ。アーモンドもケイパーもフィノッキエッティ(ワイルド・フェンネル)も香り高く、〝味が抜群〞だからだ。それらを収穫してミラノへ持ち帰り、フレッシュなまま、または塩漬けなどにして、それぞれ最高のおいしさを引き出す。そして生まれた一皿「ピッチョーネ・ア・ノート=鳩のノート風」は、TOKUYOSHI でしか味わえないご馳走だ。
「食材を探して、収穫して、それを料理して出す。究極のおもてなしでしょ」。
チーズにも旬のような瞬間があって、それを見極めるのも、プロならではだ。今、店で使うのは、熟成期間の違う2種類のパルミジャーノ・レッジャーノだが、この香り、舌触りは、足を使い、情報を集めてたどり着いたからこそのもの。
「チーズはイタリア人にとって、なくてはならない存在ですね。料理の主役だけでなく、パスタやスープなどの味を引き締める、調味料的な使い方もできる。その場合も日本のだしのように、主役ではないけれど、絶対に欠かせない影の存在になる」。
和食の哲学をイタリア料理の中に再構築する徳吉シェフが作るのは、タンポポなど季節の山菜のスパゲティ。そこにこのパルミジャーノ・レッジャーノ30カ月ものを削りかける。チーズの最もおいしいタイミングを見極め、旨みを引き出し、調理するのがプロの仕事と考えている。
徳吉洋二シェフ
2015年ミラノで開業。
10カ月でオーナーシェフとしては日本人初のミシュラン一ツ星を獲得。
2016年には二ツ星を獲得した。
◎ Ristorante TOKUYOSHI
Via San Calocero 3-20123 Milano
☎ +39 02 84254626
火曜~土曜 19:00~22:30
日曜 12:30~14:30,19:00~22:30
月曜休
http://www.ristorantetokuyoshi.com
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