日本の食 知る・楽しむ
鯖ずし「いづう」 since 1781
連載 ― 世界に伝えたい日本の老舗 服部幸應
2016.05.01
いづうの鯖ずしは、日本海の鯖のみを使用。背から腹へ、青が銀色へ変わる美しいグラデーションも、老舗が日本海産の鯖にこだわる理由のひとつ。鯖の姿ずし1本4860円(ハーフ2430円)。地方発送も受け付けている(10月~5月末まで1本より可。箱代は別)。
text by Michiko Watanabe / photographs by Toshio Sugiura
連載:世界に伝えたい日本の老舗
京都「いづう」。天明元年(1781年)創業のこの店を抜きに、鯖ずしを語ることはできません。長い歴史の中で磨き抜かれ、洗練され続けた伝統の鯖ずしは、お味も姿も、もはや芸術といっていいものです。その美しい切り口は、身厚のサバで「う」の字、ご飯でウサギを形どっているのだとか。7代目店主、佐々木邦泰さんを京都に訪ね、お話を伺いました。
200年以上磨かれ続ける伝統の味
初代は魚屋で、「いづみや卯兵衛」と申しました。ある時、すし屋を始めることになり、つけた店名が「いづ卯」つまり「いづう」でした。商売を始める時には看板商品が必要ですよね。そこで着目したのが鯖ずしでした。鯖ずしは、お祭りなどハレの日に作る、いわば京都の家庭料理。それを吟味した鯖、米を贅沢に用い、プロの手で商品化したのです。
当時、鯖は若狭の浜で背開きにされ、しっかりと塩をした状態で鯖街道を通り、京都の町まで運ばれていました。塩のきついこの鯖を、いかにおいしくするのか。それが「いづう」の技術でした。
現在は、日本近海の脂ののった生の鯖を三枚におろし、血合いのところを開いて、皮目を下にして十分に塩をし、夏場は3時間、冬場は4時間おきます。塩はしっかり効かせ、鯖の中の水分を出し切ります。
その後、塩を流水で流し、十分に水分を拭き取ってから生酢の中に浸けます。この間、わずか1分。表面が白くなると引き上げます。長く酢に浸けると、鯖の旨味が酢に出てしまいます。これを、氷の冷蔵庫で一晩寝かせて、表面についた酢を中に浸透させていきます。
ご飯は、滋賀県産の江州米を、昆布とかつお節でとった一番だしを3倍に薄めて、ふわっとおだしが香るように炊き上げます。酢合わせをして完全に冷ましてから鯖ずしにするのですが、おひつに入れて、朝炊いたご飯は夜に、夕方炊いたのは次の日に仕上げます。夏の暑い時はクーラーをかけてあげ、冬場は毛布をかれてあげる。そうやってできた酢飯と鯖を合わせ、昆布で包んで竹の皮に包んで一晩おきます。
以前は完全予約制でしたので、「いつお食べやす?」と伺って、ちょうど食べ頃になるようお渡ししていたのですが、今はなかなかそういきません。お好き好きですが、お求めいただいてから一晩おいたほうが、味が落ち着いておいしいように私は思います。
よく、鯖ずしに巻いてある昆布はどうするのか聞かれます。昆布の役目は、鯖とご飯に旨味を浸透させることと、乾燥を防ぐためのもの。すでにご用済みです。昔はもったいない精神で、佃煮にされる方もいらっしゃいましたが。硬くなった場合は、鯖とご飯を別々に焼いて、合わせて召し上がってみてください。これ、祖母によく食べさせてもらったもの。なかなかおいしいものなんですよ。
◎いづう
京都府京都市東山区八坂新地清本町367
(電話マーク)075-561-0751
11:00~22:30LO(日曜、祝日~21:30LO)
火曜休(祝日の場合は営業)
京阪本線京都祇園四条駅より徒歩5分