アルファ ロメオ「Art of Taste」プロジェクト第1弾「ラトリエ モトゾー」藤田統三シェフ #02
アルファ ロメオ109回目のバースデーケーキ、食材探しの旅 ~小田原「春夏秋冬」の卵 編~
2019.07.29
text by Kei Sasaki / photographs by Hiroaki Ishii
アルファ ロメオのアーティスティックな美学を食のマエストロたちが”味”で表現する「Art of Taste」プロジェクト。創業109周年を記念して「ラトリエ モトゾー」藤田統三シェフが、オリジナルバースデーケーキを手掛けることに。STELVIOで食材探しの旅に出掛けるところからスタートした味づくりを追います。
109回目のバースデーケーキ食材その①
小田原「春夏秋冬」の卵
6月初旬、雲の隙間から射す陽射しに夏の気配を感じる早朝、STELVIOに乗り込み神奈川県小田原市に向かった藤田統三シェフ。最初に訪れたのは「自然養鶏場 春夏秋冬」。就農7年目のまだ新しい養鶏農家で、放し飼い、平飼いで鶏を育て、安心・安全な自然卵をつくっています。
明神ヶ岳の裾野に広がる里山は、東京都心からわずか1時間半足らずの場所とは思えないほど長閑な雰囲気。代表の檀上貴史さんが出迎えてくれました。
「私が掲げている鶏の飼育の基本方針は、大きくふたつ。ひとつはワクチンや抗生物質など一切の薬剤を使用しないこと。もうひとつは輸入飼料やメーカーの配合飼料を与えず、野生の鶏が食べるであろう状態のもの、つまり自家製の発酵飼料で鶏を育てています」
まず案内されたのは、鶏舎から離れた作業場。発酵中の飼料を手に取りながら説明が続きます。「この発酵飼料は、半径約60km圏内で調達できる農業残渣と食品副産物からできています。農業残渣というのは規格外の米や野菜、出荷の際に切り捨てられる野菜の葉などのこと。食品副産物は米ぬかやそば殻。これらは袋をねずみにかじられたものなど、保管上のトラブルでできるものまで含まれます」
檀上さんいわく、こうした農業残渣や食品副産物は、”想像以上に”大量にあるとのこと。
「例えば、売れ残ったパンも食品副産物。パンはそのままではカビが生えてしまうので、焼き直してラスク状に乾燥させてから出してもらっています」
「パンの甘さ、糖分は問題ないのですか?」
藤田シェフが尋ねると、「発酵させるので問題ありません」と檀上さん。牛乳の自販機がある温泉宿の多い小田原界隈では、牛乳の売れ残りも出ますし、特産品のかまぼこも賞味期限の基準が厳しい食材として知られます。これらも食品副産物だといいます。
「パンの例からわかる通り、出すほうにとっても単に廃棄するより手間がかかります。それでも協力しようと手を挙げて下さる方々と連携している。すると、”使い道があるから残っていい”ではなく、誰もが処分に対して意識的になり、売れ残り自体が減って行くようになるんです」
作業場から徒歩10分ほどの場にある鶏舎を訪れると、平飼いの鶏たちが自由に動き回り、寛ぐ様子が見られます。
「鶏舎特有のにおいが一切ないですね」と、藤田シェフ。鶏舎の地面も、もみ殻や藁に農業残渣、鶏糞を混ぜてつくったというさらりとした発酵床になっています。
一般に、採卵用の鶏は生後110日頃から産卵をスタートし、それから約1年で廃鶏としてペットフードの材料などになります。一方で「春夏秋冬」は、ゆっくりと育てて産卵開始を遅らせ、かつ産卵期間を長くするよう育てています。人間都合の生産性ではなく、鶏の一生を”ヒューマングレード”で考える。檀上さんの養鶏の根幹を成す考え方です。
目指すのは環境循環型、そして地域循環型の農業。養鶏は、その手段であるといいます。
「こうした農業は大量の食品副産物を排出する都市近郊でこそ行われるべき。養鶏と農業を通じて地域の課題を解決し、社会に貢献できるからです。色や味の濃い、わかりやすい卵をつくることは簡単。でも、極論すれば味そのものは使って下さる料理人や加工業の方々が作って下さればいいと考えています。そこにこだわって商品に付加価値を付けるのではなく、健全な環境、地域社会という基盤から生まれる、安心でまっとうな、卵という命をお届けしたいんです」
藤田シェフによる食材探しの旅の様子をぜひ動画でご覧ください!
■アルファ ロメオ初のSUV「ステルヴィオ」