ご当地ブランドの取り組み
海外の料理人が注目!青森の黒にんにく
1970.01.01
| 英語(English) |
text by Mieko Sueyoshi / photographs by Daisuke Nakajima
青森県産の黒にんにくが世界のガストロノミー界で注目を集めています。
青森県ブランドとして積極的に世界進出し、市場拡大を続ける、青森県と「青森県黒にんにく協会」によるコンソーシアム事業の取り組みを聞きます。
「青森の黒にんにく」とは
2008 年に結成された「協同組合青森県黒にんにく協会」に加盟する青森県内のメーカーが製造する黒にんにくのブランド。同協会は、黒にんにくブームの火付け役、弘前医療福祉大学教授の佐々木甚一さんを招いた勉強会を行うなど、品質向上を目指して活動。2014 年には地名と商品・サービスを組み合わせた制度、「地域団体商標」として特許庁に申請し、登録されている。現在、品質基準をクリアした製品に協会推奨マークを付けている。
成分規格化で機能性と味を保証する
黒にんにくは生にんにくを高温高湿の環境下で一定期間置いて熟成させたもの。真っ黒な果実は甘味とコクがあり、ねっとりとした食感が特徴だ。国内生産量の7割を占める青森県産にんにくは「福地ホワイト」に代表される大玉で一粒が大きく、高い品質で知られる。県内で県産にんにくを使った黒にんにくの製造が始まったのは2004年頃。弘前医療福祉大学教授の佐々木甚一さんの研究で高い機能性が明らかになり、健康食品として知られるようになったが、実は今、海外のシェフから料理に取り入れる“食材”として注目を集めているのだ。
「青森県の地域ブランドとして、海外の展示会に積極的に出展してPRしています」と話すのは、協同組合青森県黒にんにく協会の代表理事、柏崎進一さん。同協会は、黒にんにくのおいしさを伝え、普及を進めるために県内のメーカーが集まって設立。加盟9社による黒にんにくの年間売上高は約15億円。うち約2億円は輸出取引によるものだ。最も主要な輸出先、米国では全米で展開するスーパーマーケットのPB商品「Aomori Black Garlic」として販売されている。「隠し味に使ったり、ペースト状にしてステーキに塗ったり、ピザにのせたり、巻きずしに入れたり。海外では食材として料理に加えて楽しまれています」。海外で食材としてのニーズの高まりに柏崎さんは手応えを感じている。
2014年には「青森の黒にんにく」として「地域団体商標」に登録されるなど青森県の地域ブランドを広める活動を続けているが、十数年間でここまで成長できたのは、青森県と連携して品質向上に取り組んでいるからだ。「最初はメーカーによって苦味が強かったり、臭いがしたりと品質にばらつきがありました」と、青森県産業技術センターの研究開発部部長、能登谷典之さんは振り返る。当初、黒にんにくの成分分析データは公表されておらず、健康食品とうたう根拠も曖昧な部分があったという。そこで、黒にんにくのデータを集積して、分析した研究結果を基に、その機能性成分を明らかにした。現在、水分量、pH値、GABA、遊離アミノ酸など7項目の下限値を設定し、クリアした商品を認証する規格化事業を進めている。「研究する中で甘味、酸味など製法で味が変化する仕組みもわかってきました」。おいしさと健康成分を追求した黒にんにくの開発を目指して研究を続けている。
今年2月の「全国黒にんにくサミット2016 in 青森」に続き、9月に開催する「世界黒にんにくサミット」では海外の研究者、料理人を交えてその可能性を追求する。黒にんにくは青森から世界に羽ばたき、多くの料理人を刺激するに違いない。
「青森の黒にんにく」注目ポイント!
① 年間売上高15億円!
青森県のブランドです!
② 県と共同研究
成分規格化で品質アップ!
③ 世界のシェフが熱視線!
食材として可能性大!
青森から世界へ 世界のガストロノミー界も注目
既存の調味料では作り出せない黒にんにくの甘味と酸味に注目したのはスペイン「エル・ブジ」(現在閉店)のフェラン・アドリアシェフだ。2011年に出版された本ではシェフの料理を形作る素材のひとつとして黒にんにくが紹介されている。ガストロノミーを中心に、世界中でシェフたちが黒にんにくを料理に取り入れている。料理人の創造力を刺激する、新しい食材としての認知度は、日本より海外の方が高いようだ。
■「青森の黒にんにく」に関するお問合せ先
◎青森県総合販売戦略課
☎ 017-734-9573
◎協同組合青森県黒にんにく協会
☎ 0178-56-5317
www.96229jp.com