パリっ子の台所から
1970.01.01
レポート
『料理通信』2015年7月号連動企画─────────────────────────────────────────
パリっ子の台所から
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text by Junko Takasaki, Sakurako Uozumi / photographs by Shiro Muramatsu
旅行で訪れたフランスのマルシェやスーパーで、現地の人が買い物するのを見ても、「どんな料理にするの?」と思うばかり。フランス人の普段の食生活を知る機会は少ないものです。パリっ子の台所を訪ね、その暮らしぶりを見せてもらいました。フランス料理を今より身近に感じられるようになるかもしれません。
パリっ子1:アランさんのキッチンから────────────────────────────
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レパートリーのレシピは頭の中に入っているので、本やメモは見ないで作るアランさん。
アラン・フカードさん
60代。パリ郊外の一軒家に妻、三女と3人暮らし。定年退職し、悠々自適の毎日。10歳の頃から料理上手の母に料理を教わる。得意料理は仔羊のナヴァラン。
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マルシェはパリっ子の食料庫
旬の新鮮な素材が揃うマルシェ(市場)は、グルメなパリっ子が食材調達に通う場所。週に2~3回開かれる屋外定期市と常設の屋内市場があり、パリ20区それぞれで3~5カ所ほど営業する。
アランさんのマルシェは凱旋門近くに週2日立つ屋外市と、自宅の向かいにある屋内市場。屋外市のほうがお手頃価格だが、屋内市場は常設なのがありがたい、という。行きつけのお店はお客の好みを把握しておすすめをしてくれたりと、スーパーマーケットにはない信頼関係もポイントだ。
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ワインセラーは必需品
パリの住宅に備わっているカーヴ(地下貯蔵室)は、季節による温度差・湿度差が少なく、ワインの長期熟成におあつらえ向き。いいワインを多数抱えている呑兵衛のパリジャンなら、引っ越しの際、カーヴの有無が物件選びの重要条件になる。
「僕の食卓にワインは不可欠」と語るアランさんもしかり。パリ郊外の一軒家に引っ越した際、カーヴには念入りに改装を施した。普段飲みのワインはボルドーやプロヴァンスのお気に入り銘柄をまとめ買いをし、ここにストックしているそうだ。
パリっ子2:マチルドさんのキッチンから──────────────────────────
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サロンの一角にあるオープンキッチンは、「アメリカ式」と呼ばれる。カウンターにスツールを置き、軽い食事はここで。
マチルド・ドヴィルドさん
30代。パリ10区のアパルトマンに夫と2人暮らし。6月に第1子を出産予定。PR会社勤務の傍ら、食ブロガーとして活躍中。
https://mathildescuisine.wordpress.com/
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フランス人は道具好き
「素敵なキッチンツールを発見したら、すぐ手に入れたくなるの」とマチルドさん。お気に入りは壁にディスプレイした「見せる収納」。フライ返しやゼスターグレーターは種類とサイズを豊富に揃えている。本格的な調理器具はキッチンの専門店だけでなく、インテリア・デザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ」、週末の蚤の市、朝市の一角にある調理器具屋さんを入念にチェック。
パリジェンヌはキッチンツールもおしゃれにコーディネート
機能的でありながらデザイン性の高いモノやカラーリングにこだわる。ゼスターは柑橘類とパルメザンチーズ用、ピーラーはトマト専用と一般的な野菜用など、用途別に使い分ける。いろんな道具を駆使して調理の効率を高めるのがパリ風だ。マチルドさんは、時に商品カタログをながめながら、夢を膨らませるのが大好きだという。
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オピネルのペティナイフ
マイクロプレインのゼスターグレーター
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チリスのトマトピーラー
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マジミックス
パリっ子3:ルディ&リオネルさんのキッチンから───────────────────
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平日でも家族や友人を招いてディナーをする。楽しい時間を分かち合えれば、料理はシンプルでも大丈夫。
ルディ・ロゴヴィエツさん&リオネル・タイエブさん
アラフォーの二人。パリ6区のアパルトマン在住。ルディさん(写真右から2番目)は公証人、リオネルさん(写真右端)は不動産業。レストランに行くのは週1回程度で、リオネルさんが料理を作る。平日の夜でも人を招くことが多い。
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パリっ子に最近人気のオープンキッチン
フランスの台所にはテーブルがある。座って料理の下ごしらえをしたり、その横で子どもたちが宿題をしたり 、朝食や夕食を簡単に済ませたり。その他に独立したダイニングルームを備え、会食はそこで行うのが伝統的なスタイルだ。
最近、特に若い世代のパリっ子に人気なのが、ダイニングと台所を一室にまとめたオープンキッチン。手狭なアパルトマンのスペースを有効に使えると人気になったが、昔ながらの<台所のテーブル>を巡る気楽で温かい空気が愛されていることも、その背景にあるようだ。
『料理通信』2015年7月号・連動企画 ──────────────────────────────