アルファ ロメオ「Art of Taste」プロジェクト第1弾「ラトリエ モトゾー」藤田統三シェフ #02
アルファ ロメオ109回目のバースデーケーキ、食材探しの旅 ~伊勢原「湘南小麦」の小麦粉 編~
2019.07.29
text by Kei Sasaki / photographs by Hiroaki Ishii
109回目のバースデーケーキ食材その②
伊勢原「湘南小麦」の小麦粉
小田原市内で昼食を済ませた藤田シェフは、さらにSTELVIOを走らせ、伊勢原市で製パン用の国産小麦栽培、製品化に取り組む「石臼製粉プラント ミルパワージャパン」代表の本杉正和さんのもとへ向かいます。
市街地を抜け、田園風景が広がる一帯に入ると、まさに収穫を迎えんとする小麦が、黄金の穂を揺らす光景が広がります。
本杉さんに導かれ、畑の中に入ると、穂の野毛に触れる藤田シェフ。
「めっちゃ鋭い。手が切れそうですね」と話します。
「これはニシノカオリという品種。野毛は鳥害などから小麦自身が身を守るための大切な役割を果たすものなんです」
国産の小麦でパンをつくる。本杉さんが主導する「湘南小麦プロジェクト」がスタートしたのは2007年のこと。欧米産の安価な輸入小麦の普及で、風前の灯火となっていた国産小麦栽培を製パン業界から立て直そうという壮大なプロジェクトです。発起人は、伊勢原「ブノワトン」のオーナーであった故・高橋幸夫シェフ。当時、「ブノワトン」で働いていた本杉さんは、前人未踏の難業に挑み、志半ばにして2009年にこの世を去った師匠・高橋シェフの遺志を受け継ぎ、「ブノワトン」跡にパン屋「ムール・ア・ラ・ムール」をオープン。職人としてパンを焼き続けながら、製粉プラント「ミルパワージャパン」での仕事をしています。
「我々の使命は、まずは農家さんに、安心して小麦を栽培して頂ける環境をつくること。そしてその小麦を、使って頂く方々に満足頂ける小麦粉にすることです」
話しながら、袋から焼きたてのバゲットを取り出し、藤田シェフに手渡します。
「ええ香りがしますねぇ」と、思わず笑みもらす藤田シェフ。
「しみじみ旨いなあ、というパン。麦の味がきちんと出ていますね」と、話しながら、大事そうに一口、また一口とバゲットを味わいます。
その様子を見て、嬉しそうな表情で、本杉さんは説明を続けます。
「麦の粒は、中心ほど白く高タンパクで、逆に周辺の茶や灰色がかった、いわゆるふすまの部分に、香りや味わいが凝縮しています。ミルパワージャパンは、このふすまの部分も一緒に粉にしています。製パン性が下がると、大手では精製の段階で取り除かれることが多いですが、粒度の高い粉は、水と合わさることで初めて味が出る。小麦は低速回転の石臼で時間をかけて挽くことで、余分な熱が出ないよう製粉します。香りの成分は熱が引き出しますが、これを焼成の段階までしっかり粉の中に保っておく。だからこそ、高温で一気に焼き上げるとき、クラム部分に香りを閉じ込めることができるんです」
小麦は全国どこででも栽培できる作物。栽培と製粉のノウハウを伝え、日本各地で風土に合った小麦がつくられ、パンになる。本杉さんは、そんな未来を夢見ています。
「高橋が残してくれたのは、設備や方法論だけじゃない。一番の遺産は情熱。僕らはそれを次世代に引き継いで行きたいんです」
藤田シェフによる食材探しの旅の様子をぜひ動画でご覧ください!
■アルファ ロメオ初のSUV「ステルヴィオ」