『料理通信』2015年10月号「シェフたちの畑仕事」Vol.4 自社畑 ~「オステリア・ジョイア」飯田博之さんの場合 | 料理通信
1970.01.01

photographs by Tsunenori Yamashita
田植え会や稲刈り体験などに参加すれば参加するほど、「自然相手の農作業、生半可な気持ちじゃ取り組めない」。プロの農家さんへのリスペクトが湧いてきます。そのリスペクトを大前提にしながらも、「やれる範囲で、畑仕事をやってみたい!」と思うもの。
そこで、「半農・半シェフ」の皆さんの畑作りの実例をリポートします。シェフたちの肌にもご注目ください。(皆、日焼けした精悍な顔立ち!日々の畑仕事の賜物です)
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この道30年。見習い兼手伝いに、多くの人も訪れます
鎌倉でオステリアを営むソムリエの飯田博之さん。畑仕事歴、ほぼ30年のベテランです。自店で使う野菜のほぼ100%を、この畑で育てています。
◎半農歴
1985年 鎌倉へ移住し、大家さんが家の前の家庭菜園を貸してくれたのがきっかけでスタート。
1990年代 現在の場所に10坪の畑の管理からスタート(イタリアンパセリ、バジル、ルーコラ)。徐々に敷地を増やし、現在600坪を耕す。
◎畑の師匠
「これまで積み重ねてきた作業&作付&成長記録が、何よりの教科書」。畑の記録を丁寧に取り続け、この先の畑仕事の手引きに。

取材時6月末現在。手前左からズッキーニ数種、コリンキー、カボチャ、ネットがかかるのがキャベツ、その奥はバジルの種を播いたばかり。奥左からトマトとナス各数種、休耕地を挟んで、インゲン、ウズラ豆、ソラマメ(収穫終了)、ハーブ類。
毎朝8時~10時ごろが畑仕事の時間。除草や水やりはもちろん、収穫、マルチ張り、支柱立て、耕起など、作業は多岐にわたり、毎日大忙し。飲食関係に限らず、彼を慕う多くの人が、畑仕事の見学、見習いを兼ねて、農作業の手伝いに訪れます。
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基本的には無農薬栽培。慣行栽培の周囲の畑を避けた虫が、どうしても寄ってきてしまう。キャベツには網を張り、蝶が卵を生みつけるのを防ぎます。
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網を被せても、その隙間から入ってしまうため、このように。おいしい証拠?です。

畑の土手際に生やしているカモミール。お店で出すハーブティは、基本的にフレッシュしか使いません。

収穫した後は土を休ませます。雑草も生えた土地は、トラクターで雑草ごと耕起。
飯田さん自ら、トラクターやユンボを操って、健康な土づくりに励んでいます。使用する肥料は、豚糞に剪定材のチップを混ぜ込み、ユンボでかき混ぜながら1年半、完全ににおいがなくなるまで発酵させたもの。そのほか、場合によって、完全発酵させた鶏糞も使います。
作付けが終了した後は、しばらく土を休ませます。アブラナ科なら比較的すぐに次の作付けが可能ですが、マメ科やナス科の野菜などの後は、土質が変わるのでしばらく時間をおいている、とのことです。

土を起こした後に、バジルの種を植えます。そのためのマルチシート(穴あきの黒いビニールシート)を張るところ。このシートを張ることで、雑草の繁茂を防ぎ、必要以上の雨水が浸透するのを防ぎます。2人がかりで広げていきます。
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途中途中で脇を土で仮止めしながらシートを広げ、広げ終わったら、側面の土を掘ってビニールの端にかけてとめて、完成。

虫除けのために、このような仕掛けがあちこちに。これはお手製の「蛾取りホイホイ」。三角屋根の中は、ハエ取り紙。その中央に、蛾が好む香りを出すものを置いてあります。
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トマトはマルチを張って苗を植え付け。余分な水分の浸透を防ぎます。このような形で支柱立てをし、中央の茎をしっかり太く、上へと育て伸ばしてゆくために、脇芽をまめに摘むのがポイント。

この日に収穫したトマト。アイコ、桃太郎など多品種。中央のボコボコしたのがイタリア系トマト。
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インゲンを収穫。葉の裏に実を付けるため、かき分けて頃合いの長さのものを収穫。比較的強いので、網やマルチは張らずに育てました。
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ウズラ豆の青いさや。通常はここからさらに完熟させてさやから出し、乾燥させますが、さやごと茹でて食べても美味。
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収穫した野菜は料理に。丸ズッキーニの使用例。パスタはリボン状に、メインの鶏には、グリルして付け合わせに。
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