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FEATURE / MOVEMENT

『料理通信』2015年6月号連動企画 

Noma at Mandarin Oriental, Tokyoの料理

1970.01.01


photograph of René Redzepi by Masahiro Goda

世界のレストランランキングThe World’s 50 Best Restaurantsのトップを誇るNomaが期間限定で開いたNoma at Mandarin Oriental, Tokyo。
2015年1月9日~2月14日の1カ月余にわたって提供された料理について解説する講習会が、会期終了翌日の2月15日、服部栄養専門学校で行われました。
シェフのレネ・レゼピ自らレクチャーした16品の中から、『料理通信』2015年6月号(P.78)でも掲載した7品についてご紹介します。
(協力:服部栄養専門学校)



グリーンストロベリーと酒粕




cuisine photographs by Hide Urabe


Pickled green strawberries, cucumber rose, sake lees sauce
(グリーンストロベリーと酒粕)
塩麹に漬けた未熟のイチゴとキュウリをバラの形に。酒粕のソース、バジルの花の酢漬けを添えて。



■材料
cucumber
  キュウリ
unripe strawberries
  熟していないイチゴ
curing liquide(barley koji, salt, water)
  漬物液(大麦の麹、塩、水)
pickled basil(basil flowers, apple vinegar)
  バジルのピクルス(バジルの花、リンゴ酢)
sake lees sauce(sake lees, sake, kabosu juice, white miso, barley koji, sudachi)
  酒粕のソース(酒粕、酒、カボス果汁、白味噌、大麦の麹、スダチ)
yuzu
  ユズ
salt
 


■作り方
キュウリとイチゴを漬物液に漬ける。
酒粕のソースの上に、イチゴとキュウリをバラの花の形に盛り付ける。
バジルのピクルス、ユズ、塩を散らす。

■解説
「スカンジナビアにおいてピクルスは重要です」とレネ。
漬けるという調理法は、厳寒の冬、雪に閉ざされる北欧の備蓄文化のひとつ。
「向こうではピクルスから食事をスタートしますが、日本では漬物で終わりますね」。
北欧ではアペタイザー、日本では口直し、といったところでしょうか。
「バラの形にするのは、夏を待ちわびる気持ちの表れです」。
レネのお気に入り、福岡・久保田農園産のイチゴを使用。


長野の森香るボタンエビ



Botan ebi with flavors of Nagano forest
(長野の森香るボタンエビ)
生のエビに、長野で収穫したアリを酸味として添えて。



■材料
・botan ebi
 ボタンエビ
・ants
 アリ
・salt
 塩
*食材の入荷の関係で撮影時はシマエビを使用。

■作り方
新鮮なエビの殻をむく。
アリをのせて、塩をふる。

■解説
「アリがアグリーなら、エビだってアグリー」とレネは言います。
食べ慣れた食材には食欲をそそられ、食べ慣れない素材には抵抗を覚えるのが、人間の性であり、文化でしょう。
同じ動植物でも、地域や民族によって、食材であるケースと食材ではないケースがある……。
エビとアリの対比は、食文化の多様性と「おいしいとは何か?」を問いかけてきます。
「最初はレモンをかけてみたが、レモンでは酸が強く、エビの肉質を変えてしまう。そこで、アリを酸味として使うことにした」
アリは食虫文化を持つ長野で捕獲。


柑橘とぴぱーつ



Citrus and long pepper
(柑橘とぴぱーつ)
「柑橘を刺身のように」と意図した一品。高知県産の4種の柑橘を使って。ピパーツは別名、島胡椒。



■材料
・hassaku
 ハッサク
・buntan
 ブンタン
・bompeii
 バンペイユ
・mikan
 ミカン
・roasted rishiri kombu oil(rishiri kombu, white sesame oil)
 ローストした利尻昆布オイル(利尻昆布、白ゴマ油)
・pickled long pepper(long pepper, apple vinegar)
 ピパーツのピクルス(ピパーツ、リンゴ酢)
・salted sanchoe leaf
 塩漬けした山椒の葉
・sanchoe pepper
 山椒
・pine salt(salt, Norwegian spruce pine needles)
 松フレーバーの塩(塩、ノルウェー産スプルース松の葉)

■作り方
4種の柑橘の実を果汁が出ないように切り出す。
利尻昆布オイル(昆布を浸したゴマ油)、ピパーツ、山椒の実と葉、塩をかける。

■解説
「Nomaとして初めての柑橘料理」
果汁を出さずにスライスする方法を研究したそうです。
「参考になったのが日本料理店・壬生のサワラ。メルティングテンダーな食感は切るテクニックを実感させた」
松フレイバーの塩はデンマークならではの食材。
「デンマーク人にとっての松は、イタリア人にとってのバジルのようなもの」




削られた鮟鱇の肝



Smoked and shaved monkfish liver
(削られた鮟鱇の肝)
塩水で保存してからスモークしたアンキモを、薄切りパンの上に削る。



■材料
brined and smoked monkfish liver(salt, coriander seed, juniper berries, bay leaf, dried rice straw)
  スモークした鮟鱇の肝(塩、コリアンダーシード、ジュニパーベリー、ローレル、乾燥した稲わら)
sour dough bread
  サワードウのパン
butter
  バター
lacto fermented barley koji spray
  乳酸菌で発酵させた大麦酵母(スプレー)
rausu kombu salt
  羅臼昆布の塩
salt
 


■作り方
アンキモを塩水に浸してから、20℃以下で1時間ほどかけてスモークする。
バターを塗ったパンの上に、スライサーで削る。
酵母、昆布塩などをふりかける。

■解説
「アンキモは好きな食材のひとつ」
スカンジナビア流のスモークを施しています。
羅臼昆布を一晩浸けた水を大きな釜で蒸発させた後に残るエキスが、羅臼昆布の塩。
「旨味のフレーバーが広がります」


しじみとサルナシのタルト



Shijimi and wild kiwi
(しじみとサルナシのタルト)
青森県十三湖のシジミを殻から外して、サルナシのペーストを塗った昆布と小麦粉の生地に並べる。



■材料
・shishimi clam
 しじみ
・wild kiwi paste(wild kiwi, parsley, kefir lime)
 サルナシのペースト(サルナシ、パセリ、コブミカン)
・tarte pie(rausu kombu, rausu kombu oil, flour, butter, salt)
 タルトパイ(羅臼昆布、羅臼昆布オイル、小麦粉、バター、塩)
・wasabi
 わさび
・salt
 塩

■作り方
シジミを殻からひとつ一つ外す。
昆布を焼いてから粉末にして、小麦粉、バターなどと合わせてタルト生地を作る。
サルナシのペーストをタルト生地に塗り、シジミを1切れあたり35~45個のせる。
シジミのジュをスプレーで吹き付けます。

■解説
十三湖のシジミは生で食べられると聞いて、この料理を考案。
サルナシは長野県産。コクワとも呼ばれる果物。
昆布の旨味がつなぎ役であり、味に広がりを持たせています。


できたて豆腐と天然のくるみ



Tofu, just steamed with wild walnuts
(できたて豆腐と天然のくるみ)
蒸したての豆腐に、削った生のクルミを散らして。



■材料
・tofu(soy milk, nigari)
 豆腐(豆乳、にがり)
・walnuts
 くるみ
・white miso sauce(white miso, parsley oil, yuzu)
 白味噌ソース(白味噌、パセリオイル、ユズ)
・salt
 塩

■作り方
オーガニックの大豆を水に浸してから、24時間かけて石臼で挽く。
67℃で1時間10分蒸す。
器に塩をふり、その上に豆腐を入れる。
白味噌ソースを塗り、クルミをのせる。

■解説
「豆腐は日本人にとって大切な食材。特に気を使った」とレネ。
「豆乳には馴染みがないため、研究を重ねました。豆腐屋さんには70~80℃で蒸すと聞いたけれど、55℃~90℃の様々な温度で試してみた。我々の場合、67℃で1時間10分にたどり着きました」
日本で豆腐と言えばやわらかい食べ物の象徴。
「そこにクルミのシャキシャキを加え、コントラストを与えています」




Rice
(米)
酒粕のアイスクリームに、米汁で作るクラッカーを合わせている。

■材料
ice cream(whole milk, cream, milkpowder, glucose, fondant paste, sugar, salt, quar, sake lees, sake)
  アイスクリーム(全乳、クリーム、粉ミルク、ブドウ糖、フォンダンのペースト、砂糖、白、グアーガム、酒粕、酒)
milk crumbs(milk powder, flour, sugar, butter, cornstarch, salt)
  ミルクのクラム(粉ミルク、小麦粉、砂糖、バター、コーンスターチ、塩)
yuzu sorrel juice(sorrel, yuzu, sugar, water)
  ユズとスイバの果汁(スイバ、ユズ、砂糖、水)
rice crisp(rice, water, iota, xanthana, sugar, non-fat milk powder, salt)
  米のクリスピープレート(もち米、水、イオータ・カラギーナン、キサンタンガム、砂糖、無脂肪の粉ミルク、塩)


■作り方
酒粕で作ったアイスクリームに、ミルクのクラム、ユズとスイバのジュースをかける。
米のクリスピープレートを刺す。

■解説
「米をどう使うかは随分考えた」
日本料理屋を何軒か訪れる中で、ごはんが最後に出てくるケースと最初に出てくるケースがあることに気付いたそうです。
「僕たちは最後に出すことにした」
スイバはデンマークではポピュラーな食材。
「日本でもよく見かけるけど、日本人はあまり食べませんね」







『料理通信』2015年6月号(P.80~81)でもご紹介していますが、レネ・レゼピの創造のプロセスを克明に記した日記、スナップ写真、レシピから成る著書『進化するレストランNOMA』が2015年春に発売されました。 迷い、不安、いらだち、怒り、興奮、安堵、喜び、そして達成感――店の内外で経験する様々な感情が赤裸々に綴られた日記は特に圧巻、胸に迫ってきます。


『進化するレストランNOMA』
(レネ・レゼピの日記、レシピ、スナップ写真の全3冊セット)
ファイドン社
8000円+税
http://phaidon.co.jp/book/new/446/




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