北欧の食・最新事情(全4回)Vol.4
コペンハーゲンのニューウェーブ・レストラン
1970.01.01
| 英語(English) |
photograph by Tim Spreadbury
街の食事が楽しくリーズナブルに!
「ゼラニウム」、「カドー」、そして、言わずと知れた「ノーマ」。この数年でミシュラン星付きの有名レストランで知られる世界トップクラスの食都として名を馳せるようになったコペンハーゲンだが、最近は、リーズナブルな価格の良質な料理にフォーカスしたカジュアルな飲食店が台頭。地元の食事情をがらりと変える新しいトレンドになっている。コペンハーゲンで今、大人気のカジュアル・レストラン「ブロール」の共同オーナーの一人、ビクター・ワグマン氏は「誰もがまず、ミシュランの星付きでなければ意味がないと考えるだろう。でも、今は、中価格帯のレストランによい店がたくさんある」と語る。
photograph by Signe Brick
ノルディック・ビストロ
“ノルディック・ビストロ(北欧スタイルのビストロ)”が街中に登場している。パリのビストロノミー・ムーブメント同様、コペンハーゲンでカジュアル・レストランの新潮流を起こしているのは、「ノーマ」など一流レストランで経験を積んだ若手のシェフたちだ。2013年4月にオープンした「ブロール」は、「ノーマ」でスーシェフを務めていた2人、ビクター・ワグマン氏とサム・ナッター氏の独創性を活かしたレストラン。くつろいだ雰囲気のなか、クリエイティブで考え抜かれた料理を提供している。同店の大成功により、シェフたちはすぐ近くに「リル・ブロール」という名のベーカリー&カフェをオープンする予定。ここから焼きたてのパンがレストランに提供されることになる。料理に対し、よりシンプルなアプローチをとるのが、「カドー」から誕生した「ポニー」。サバの燻製のポテト添え、ディル、キュウリのピクルスなど、シェフは昔ながらのデンマーク食材を使った料理にフォーカスしている。ミシュラン星付きレストランの「フォーミールB」からのスピンオフで新規開店した「Uフォーミール」は、北欧のビストロ料理にエキゾチックな味わいを採り入れている。
カジュアルだが洗練された食体験
カジュアル化の傾向はノルディック・ビストロに限らない。市街地の南側のレフスヘーレウンにある「アマス」では、洗練されていながらも、まったく気取らない食体験ができる。同店は現在、コペンハーゲンで最もエキサイティングなレストランのひとつ。料理にもインテリアにも、ノルディックなセンスとインターナショナルな感覚が楽しく混ざりあっている。オープンな間取りとグラフィティで覆われた壁は、まるでサンフランシスコやブルックリンのカフェのよう。カリフォルニア州サンディエゴ出身のオーナー、マット・オーランド氏は「ノーマ」の料理長を務めたあと、長旅に出かけた。その豊かな経験を生かして誕生させたのがこの「アマス」だ。クリスピーな鶏皮をトッピングし、レタスの葉を添えたラングスティーヌや、歯ごたえのある焼き卵白をちりばめたロースト・コーンのブロスなど、オーランド氏の革新的な料理には、シンプルな食材を魅力的なコース料理へと変身させる彼の才能が光っている。
photograph by Tim Spreadbury
ワイン好きのための街
工夫のあるカジュアルな料理を出すワインバーも盛況だ。「マンフレッズ&ヴァン」は、エッグクリームをふりかけ、天然酵母ライ麦パンのクルトンをちりばめた名物の“ビーフ・タルタルステーキ”が、見事なセレクションのワインセラーと同じくらい有名。ビオディナミワインと言えばここという「デン・ヴァンドレット」は、厳選されたチーズとシャルキュトリーに、グリルソーセージやビーフシチューなど、ボリュームのあるメニューもそろえている。軽めの食事を楽しみたければ、今風のヒップな「アトリエ・セプテンバー」へ。自然派ワインとそれによく合うサンドイッチや、ベジタリアンも楽しめる軽食を提供している。
photograph by Tim Spreadbury