UMAMIとDASHI〜国境を越え、ニューヨークで市民権を獲得(全2回) Vol.1
食文化の発信地、ブルックリンで「うま味の探究」
1970.01.01
| 英語(English) |
和食人気が高まる一方のニューヨーク。Sushiはスーパーやデリの定番商品となり、最近ではKaiseki, Izakaya, Ramenといった言葉もすっかり英語化している。
人気投票方式のレストランガイド「ザガット」の2014年ニューヨーク版を見ると、和食への高い評価が明らか。48,114人のニューヨーカーが合計2084軒のレストランに投票した結果、和食の平均評価は23.87点(満点は30点)。それに次ぐフランス料理は22.08点となっており、同ガイドが紹介する100の料理カテゴリーの中で最高点を得ている。また「ミシュランガイド・ニューヨーク・シティ2014年版」見ても、和食店は3つ星7店中1店、2つ星5店中1店、一つ星55店中10店と、大きな比重を占めている。
そんな中、Umamiという言葉は辞書にも載り、「フード&ワイン」「タイム」といった一般誌にも話題の新用語としてしばしば取り上げられるようになっており、専門用語の枠を外れつつある。そしてシェフ達の間では、自らの料理の差別化を図るためのキーワードのひとつになっている。
こうしてうま味や和のだしへの関心が高まるニューヨークで、今年1月、昆布を細い短冊状に切ったヒット商品「昆布革命」で知られる、天満大阪昆布の喜多條清光氏が、食の文化の発信地として今話題の地区ブルックリンを訪れ「うま味の探究:昆布のだし」というテーマでクラスを開いた。会場は美食家が足繁く通う、調理器具・食材店「ブルックリン・キッチン」。同店オーナーのハリー・ローゼンブラム氏は、日本の食関連の優れた小規模生産者とアメリカの小売店をつなぐコンサルティングも手掛けており、日本の生産者を海外市場につなぐ活動を展開する、オフィスムスビの代表、鈴木裕子氏がサポート役に入り、今回のクラスが実現した。
うま味クラスのホスト、「ブルックリン・キッチン」のオーナー、ローゼンブラム氏 |
ローゼンブラム氏と昆布パスタを作る、天満大阪昆布の喜多條清光氏 |
参加者は、シェフ5名、一般美食家3名の計8名。喜多條氏がうま味成分と昆布の基本を説明した上で、調理デモと試食を通じて昆布の汎用性の高さを紹介した。試食の内容は一番だし、水とだしでそれぞれ炊いた白米の味の比較、オリーブオイル・しょうゆ・ハチミツにそれぞれ漬けた3種の昆布のだしがら、オリーブオイル漬けのだしがら・にんにく・チリペッパーのスパゲティなど。
昆布を手にする参加者たち |
参加者のひとりで、現在フリーランスのシェフであるエヴァン・コーン氏は「だしについては知っていたけれど、だしがらを料理に使うとは考えたことがなかった。たとえばハチミツに浸けただしがらが、こくがあって意外においしい。デザートへの応用がいろいろできそう」とコメント。
また各種のディナーイベントを通じて新たな食体験を提案する「ア・レーザー・ア・シャイニー・ナイフ」のシェフ、マイケル・チリノ氏は、「炭酸を加えると液体のミネラル感が高まり、味わいが豊かになることが多いので、昆布だしでも試してみたい」と、昆布だしを炭酸化することを提案。実際、会場にある機器で炭酸入り昆布だしを作って他の参加者とともに味わいながら、「ジンと合わせてキュウリを添えたカクテルにしてみたい」と語り、NYらしい自由な発想を印象づけた。
昆布だしを炭酸化 |
炭酸化した昆布だしを試飲するマイケル・チリノ氏 |
人気の現代アメリカ料理店「グラマシー・タバーン」の料理長マイケル・アンソニー氏曰く「うま味はこれまでこの国に存在しなかった味覚の要素として、今シェフ達の関心を急速に高めています。昆布、鰹節から茸、ひいてはトマトといった自然食材が生み出す独自の味わいと、(塩や砂糖などと比較した場合の)健康性の高さは、今後新たなアメリカの食生活につながっていくと思います」。
Vol.2では、マイケル・アンソニー氏をはじめ、実際にうま味やだしをメニューに取り入れるNYシェフたちの様子を紹介する。
text and photographs by Akiko Katayama |
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