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FEATURE / MOVEMENT

もっとブラウンブレッドを食卓に!

厚切りウェルカム! の爽やかコンプレ 神奈川・鎌倉「BREAD IT BE」

Jul 04, 2022

photographs by Sai Santo

全粒粉パンに力を入れる職人が増えています。
ふすまや胚芽を伴った全粒粉は、ビタミン、ミネラルを豊富に含み、健康に良いだけでなく、噛むほどに滋味深い魅力があります。
オーガニック栽培に力を入れる農家が増えたこと、さらに食材をすべて食べ切る、フードロスの観点からも注目度が高いパンづくりです。

教えてくれたシェフ
神奈川・鎌倉「ブレッド イット ビー」森田良太シェフ

「沢村」、「ザ シティベーカリー」統括シェフ。専門学校卒業後、横浜「萬珍楼」勤務。パン好きが高じて「ローズホテル横浜」のベーカリーへ。「ユーハイム」を経て2010年「フォンス」入社。2020年2月現店シェフに。


ふかふか、 軽やか 爽やかに香る

ふかふか、もっちり。やわらかな口当たりと爽やかな麦の香り。薄切りのスライスを勧められがちな全粒粉パンだが、「BREAD IT BE」のコンプレは厚切りウェルカム。手でちぎっても、かぶりついてもOKの、優しい食感と味が魅力だ。

2020年2月にオープンした鎌倉の同店は、「沢村」「ザ シティベーカリー」などを手掛ける株式会社フォンスの新店。ベーカリー部門の立ち上げから10年、全店舗のチームを率いてきた森田良太シェフが店づくりのすべてを担った。店名の由来はビートルズの名曲。「BREAD IT BE=(麦の思うままに)パンになれ!」との意味を込めた。

全粒粉は神奈川県秦野産ゆめかおりを自家製粉する。製粉会社で7分づきに研磨された玄麦を、店内に据えたドイツ・ハスラー社の最新の石臼製粉機で粒度の細かいサラサラの全粒粉に変える。コンプレの場合、全粒粉は全量、湯種に使い、熱湯と合わせて1晩かけて水和させ、生地にしっとりとした質感とデンプンの甘さを引き出す。

本ごねでは長めのミキシングでしっかりつなぎ、レーズン種と老麺を合わせて18℃で18時間発酵、熟成の旨味とふわりとしたボリュームを作る。酵素活性が強い自家製粉の粉は水を吸いにくい。硬水を使うのは味とダレやすい生地を締めるためだ。食べやすい薄いクラストにすべく、焼成は長めに蒸気を入れて、高温短時間で焼き上げる。

それにしてもダジャレ感満載の商品名やひねりのあるラインナップが楽しい。試作用の古代小麦の粉袋を見せながら、嬉しそうに説明する森田シェフ。ここはシェフが新しい領域にチャレンジするラボ、全粒粉が楽しくポップに、食卓へ溶け込んでいくための発信地となる。


【「BREAD IT BE」の全粒粉パンの4つの約束】

秦野産小麦を7分づきで

全粒粉は地元神奈川県秦野産小麦、ゆめかおりを7分づきにピーリングし、ドイツ製の石臼製粉機で挽く。粒度に応じて1番粉、2番粉、3番粉、ふすまと分類されていく。

麦の個性、あるがままに

店名には麦本来の味が存分にパンに生きるように、という意味を込めた。自家製粉の全粒粉パンを皮きりに「沢村」ベーカリー部門を統括する森田シェフが、今後取り組みたいことを研究するラボとして機能していく。

ふすまはトッピングに活用

自家製粉で出るふすまは、外皮だけでなく胚芽も混ざり、甘味があるので積極的に活用する。油にくぐらせたロデブ生地にふすまをたっぷりまぶし、揚げパンのような香ばしさの「オリーブ デ ロデブ」。

全粒粉の配合は20〜50%

全粒粉は20~50%の配合で使い、旨味と香りを生かしながら、洗練された軽やかな食感に仕上げる。50%配合のコンプレ、20%配合のカンパーニュのほか、30%配合の全粒粉食パンも展開。すべて湯種を使う。


<製法のポイント>


皮も中身も、口当たりを軽く
重くなりがちな全粒粉の生地は、ミキシングでしっかりつないで軽やかな食べ心地に仕上げる。焼き面も強く焼き固めずに、蒸気を入れて短時間の焼成にとどめて、食べやすい薄い皮に。

「秦野産小麦自家製粉コンプレ」の作り方

[材 料(約6個分)]()はベーカーズパーセント
全粒粉 ※1・・・1000g(50)
湯(90℃)・・・1000g(50)

<本ごね>
強力粉 ※1・・・1000g(50)
塩・・・42g(2.1)
砂糖(有機)・・・80g(4)
水(5℃)※2・・・1000g(50)
レーズン種 ※3・・・100g(5)
モルト液・・・8g(0.48)
老麺 ※4・・・100g(50)
有機ショートニング ※5・・・60(3)

※1秦野産ゆめかおり(ミルパワージャパン)
※2 硬水(コントレックス)と軟水を1:4の割合で合わせる。
※3 容器にA(サルタナレーズン1000gと砂糖500g、モルト液6g、ぬるま湯2000ml)を混ぜ合わせて密閉し、1日1回かき混ぜながら約28℃で1週間発酵させる。1週間後、漉して元種とする。元種10gに同量の材料Aを加えて1日1回かき混ぜて、30℃で2日発酵させる。菌が安定したら冷蔵(5℃)で保存する。
※4 スパイラルミキサーに強力粉1000g(100)、インスタントイースト4g(0.4)、塩20g(2)、モルト6g(0.6)、水690g(69)を入れて、低速で4分回す。こね上げ温度23℃。常温で90分発酵させ、パンチを加えて冷蔵(5℃)で一晩置く。
※5 常温に戻しておく。


【工程表】
湯種を作る 低速2分→常温・2時間→5℃で一晩
 ▼
ミキシング 低速10分→低速2分→中速9分
 ▼
一次発酵(18℃・75%・16時間)
 ▼
分割 500g
 ▼
成形
 ▼
最終発酵(27℃・75%・1時間30分)
 ▼
焼成 スチーム2回→上火250℃・下火240℃・19~20分


[製粉]

7分づきにピーリングした麦を製粉機に入れる。細挽きに設定し、低速でゆっくり回す。前日に挽いて、翌日に使う。
POINT 玄麦はやや多めに磨きあげて、麦の軽やかな旨味と香りを引き出す。

[1]湯種を作る

スパイラルミキサーに全粒粉と湯(90℃)を入れて、低速で2分回す。ラップをして室温で2時間おき、冷蔵(5℃)で一晩おく。適度な大きさに切る。

[2]ミキシング

スパイラルミキサーに、塩、砂糖、水を入れてホイッパーで混ぜ合わせ、粉、レーズン種、モルト液を順に加えて低速で1分回す。

[3]ミキシング

湯種、老麺をちぎりながら加え、さらに低速で9分回す。

[4]

ショートニングを加えて、生地を巻きつけるように包み込む。

[5]こね上がり 

低速で2分回し、中速で9分回す。こね上げ温度18~19℃。
POINT 長めに回して生地に力をつけて、ふわりとした食べ心地を目指す。

[6]

こね上がり。伸展性があり、伸ばすと薄い膜ができる。

[7]一次発酵

生地を容器に移し、18℃・湿度75%のホイロで16時間発酵させる。

[8]分割

打ち粉(自家製粉の3番粉)を振った台に生地を取り出し、スケッパーで500gずつ分割する。

[9]成形

手の平の付け根で生地を上から潰し、生地の周囲を中心部に折り込みながら丸く成形する。閉じ目を指で中心部へ押し込む。

[10] 


生地の閉じ目を上にして、底に全粒粉を押しつける。打ち粉を振ったバヌトンに入れる。

[11]最終発酵

27℃・湿度75%のホイロで1時間30分発酵させる。

[12]

打ち粉を振ったキャンバス地にバヌトンを逆さまにして生地を取り出し、クープをマス目状に4本入れる。

[13]焼成

上火250℃・下火240℃で15分焼く。生地の前後を入れ替えて4~5分焼く。窯入れの前後に蒸気を入れ、2回目は長めに入れる。
POINT 蒸気を多めに入れて、しっかり膨らませる。



◎ブレッド イット ビー
神奈川県鎌倉市小町2-16-35
☎0467-33-4680
9:00~18:00(売り切れ次第終了)
日曜、第2木曜休
JR鎌倉駅より徒歩5分
istagram:@ breaditbe.kamakura

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため要請に合わせて営業時間が変わることがあります。

(雑誌『料理通信』2020年6月号掲載)

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