HOME 〉

JOURNAL / JAPAN

【ようこそ発酵蔵へ】老舗酒蔵による「湘南でしか造れないビール」

神奈川・茅ヶ崎「熊澤酒造」

2023.03.30

text by Kyoko Kita / photographs by Hide Urabe

連載:ようこそ発酵蔵へ

写真で巡る発酵の世界。丁寧に時間をかけて微生物と向き合い、日本の伝統食を次代へつなぐ蔵、生産者を訪ねます。今回は、明治5年創業、神奈川・湘南に残る日本酒の蔵元「熊澤酒造」が手掛けるビール造りの現場を紹介します。

丹沢山系の湧水を使用。中硬水で重厚なビールと相性が良い。

麦芽、ホップ同様、酵母も日進月歩で開発が進む。


ドイツ製の機械は構造がシンプルでろ過がきれいにできる。

黒ビール(左)やIPA(中)はスタイルの個性を生かしつつ、バランスを重視し料理にも合わせやすい。フルーツビア(右)は地元の柑橘のフレッシュ感を前面に。


最先端を湘南の風土に落とし込む

「ビールは麦食文化圏の酒」と「熊澤酒造」6代目の熊澤茂吉さん。麦、ホップ、酵母、水という基本的な材料から、地域や文化によって驚くほど多様な味わい、香りのビールが生まれた。今、クラフトビールの最先端はアメリカで動いているという。伝統的なスタイルの見直しや全く新しい試みなど、製法は日々更新されている。「湘南ビール」醸造責任者の筒井貴史さんも定期的に渡米しアイデアを持ち帰る。

原料の品種や配合、加えるタイミング、麦汁の糖化温度や時間など、レシピの可能性は無限だ。苦味、香りの調和が秀逸なピルスナーから、毎回異なるシングルホップで仕込み、その個性を味わえるIPAシリーズ、塩を効かせたドイツの「ゴーゼビール」に着想を得た桜の塩漬けを使ったビールまで、常時約10種類を造る。貫くのは、老舗酒蔵の看板に相応しい「バランス良く、飲み飽きないきれいな味」、そして「湘南らしさ」だ。

「ここは多様な価値観、文化を持った人が暮らし、都会的だけど四季を感じられる場所」。地元の柑橘を手作業でむいて仕込むビールは、確かにこの場所でしか造れないフレッシュな味わいだ。微生物主導の発酵の世界にあって、ビールは造り手の表現の自由度が高い。「常に新しいものを造りたい」と筒井さん。職人の探求心を刺激し、それを実現できるのがビール醸造の魅力なのだろう。

96年に醸造開始した「湘南ビール」。直営レストラン等で様々なスタイルのビールを常時約10種類提供。内3~4種は月の限定。瓶は直販他、通販で購入可能。3本セット1705円(税込)~。



◎熊澤酒造
神奈川県茅ケ崎市香川7-10-7
☎0467-52-6118
https://www.kumazawa.jp/

(雑誌『料理通信』2018年10月号掲載)

料理通信メールマガジン(無料)に登録しませんか?

食のプロや愛好家が求める国内外の食の世界の動き、プロの名作レシピ、スペシャルなイベント情報などをお届けします。