地元で栽培、地元で搾油
歴史的農村風景を今に伝える「菜種油」
未来に届けたい日本の食材 #02 菜種油
2021.03.15
変わりゆく時代の中で、変わることなく次世代へ伝えたい日本の食材があります。手間を惜しまず、実直に向き合う生産者の手から生まれた個性豊かな食材を、学校法人 服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長、服部幸應さんが案内します。
連載:未来に届けたい日本の食材
青森県上北郡横浜町の町花は、菜の花。一時は作付面積日本一を誇るも、減少傾向に危機感を感じ、一面に菜の花畑が広がる、横浜町の歴史的農村風景を残そうと、2002年「菜の花トラスト」を立ち上げます。
発起人で現理事長の宮 茂・桂子夫妻の、手刈り、手搾りにこだわった稀少な菜種油作りの現場を訪ねました。
発起人で現理事長の宮 茂・桂子夫妻の、手刈り、手搾りにこだわった稀少な菜種油作りの現場を訪ねました。
横浜町の菜種栽培は、戦後、ジャガイモの後作用として始まったもの。このあたりじゃ、昔、菜種休みっていうのがあったそうです。家族総出で菜種を刈ってたんですね。栽培は盛んだったけど、すべて他県に売られ、地元で搾油することはなかったんです。何とか、自分たちで搾油できないかと手探りするうち、トラスト発足の翌年、補助金で搾油機を買うことができた。ただ、予算が足りなくて、精油機は買えなかった。ともかく、すべてが手探り、試行錯誤の連続だったんです。
4年後、青森県で第一号となる食用油脂製造許可証取得。非焙煎で一番搾りの「御なたね油」が完成したので、道の駅で販売を始めたら、東京のデパートでも扱ってくれることに。実は私たち、秋から冬にかけて、毎年行商してるんです。手売りです。待ってても売れませんからね。攻めの一手です。2009年には、食品中央コンクールで農林水産大臣賞を受賞。そのおかげもあってか、シェフたちにも知られるようになりました。
4年後、青森県で第一号となる食用油脂製造許可証取得。非焙煎で一番搾りの「御なたね油」が完成したので、道の駅で販売を始めたら、東京のデパートでも扱ってくれることに。実は私たち、秋から冬にかけて、毎年行商してるんです。手売りです。待ってても売れませんからね。攻めの一手です。2009年には、食品中央コンクールで農林水産大臣賞を受賞。そのおかげもあってか、シェフたちにも知られるようになりました。
美しい菜の花畑を残すために、耕作放棄地を活用して自分たちも作付けを始めました。収穫は真夏。ベテラン農家の方も含めたトラストのメンバーで、背よりも高いくらいの菜の花を刈り取ります。この地域でも、手刈りしているのは私たちだけ。
手間は掛かりますが機械よりはロスが少ない。それを菜種打ちで叩いて、鞘の中の種を落とします。それを唐箕にかけて不純物を飛ばしたら、天気の良い日にブルーシートに種を広げ、4時間天日干しに。水分が4~5%以下になったところで保管して、1年を通じて搾っていきます。
手間は掛かりますが機械よりはロスが少ない。それを菜種打ちで叩いて、鞘の中の種を落とします。それを唐箕にかけて不純物を飛ばしたら、天気の良い日にブルーシートに種を広げ、4時間天日干しに。水分が4~5%以下になったところで保管して、1年を通じて搾っていきます。
毎年、5トンぐらい搾油するのですが、そこから搾れる一番搾り油は約4割の2トンほど。菜種カスは、ササニシキ農家に譲っています。
搾油はシンプルに菜種を搾油機に入れて搾るだけ。夏はすっと流れるのですが、冬はなかなか落ちない。ゆっくりゆっくりです。「御なたね油」は横浜町産だけの菜種の一番搾りを安曇野和紙で6回濾過したもの。ちょっと、召し上がってみてください。まろやかでナッツのような香りがするでしょ。無濾過の「天日干しなたね油」は、天ぷらやお菓子作りにおすすめ。どちらも、加熱するプロセスがないので、冷蔵庫でも固まらないんです。
5月、横浜町一帯はまるで黄色い絨毯のように菜の花が咲き乱れ、全国から観光客が訪れます。来年はぜひ、菜の花フェスティバルの時にいらしてください。
搾油はシンプルに菜種を搾油機に入れて搾るだけ。夏はすっと流れるのですが、冬はなかなか落ちない。ゆっくりゆっくりです。「御なたね油」は横浜町産だけの菜種の一番搾りを安曇野和紙で6回濾過したもの。ちょっと、召し上がってみてください。まろやかでナッツのような香りがするでしょ。無濾過の「天日干しなたね油」は、天ぷらやお菓子作りにおすすめ。どちらも、加熱するプロセスがないので、冷蔵庫でも固まらないんです。
5月、横浜町一帯はまるで黄色い絨毯のように菜の花が咲き乱れ、全国から観光客が訪れます。来年はぜひ、菜の花フェスティバルの時にいらしてください。
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